IoTを活用した建築物衛生管理手法の検証のための研究

文献情報

文献番号
202227021A
報告書区分
総括
研究課題名
IoTを活用した建築物衛生管理手法の検証のための研究
課題番号
22LA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院 生活環境研究部 建築・施設管理研究領域)
研究分担者(所属機関)
  • 増田 貴則(国立保健医療科学院)
  • 鍵 直樹(東京工業大学 環境・社会理工学院)
  • 中野 淳太(東海大学工学部)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部)
  • 海塩 渉(東京工業大学 環境・社会理工学院)
  • 三好 太郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 下ノ薗 慧(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物衛生法の空気環境に関しては、浮遊粉じん、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流速度に対して2ヶ月以内ごとに1回の測定が義務づけられている。給水に関しても項目によって測定義務が定められている。
測定は測定技術者による現場測定が基本となるが、近年はIoTやセンシング技術の発展により、建築物環境衛生管理の人手不足や中小規模建築物の自主管理の可能性なども視野にこのような技術を活用すべきという声も上がっている。
本研究は、自動測定によるデータの精度を検証するとともに、自動測定で得られるデータを活用することによって、現行の測定方法よりも適切な維持管理を行うことができるかを検証する。加えて、自動測定が既存測定(手動測定)と同程度以上の精度であると判断できる条件(センサー精度、測定箇所、測定機器の校正の頻度等)を明確化することで、特定建築物のより適切な維持管理手法を確立することを目標とする。
研究方法
 本年度は2年計画の1年目として、連続計測用小型センサーとして、温湿度・CO2濃度センサー4種類、PM2.5センサー2種類を対象に長期間比較評価を行った。建物7施設(11フロア)に自動計測センサーを設置し、6施設9フロアに対して法定測定法による管理基準項目6項目の立入調査を実施した。また、BEMSデータ、測定技術者による報告調書を収集して、連続計測小型センサー及び法定立入調査結果と精度の比較検討を行った。また、国内IoT関連会社3社を対象にIoT技術の建物設備衛生管理への活用に関するヒアリング調査を実施した。また、建物設備の管理技術者らを対象に管理の現状、要望に関するヒアリングを行った。
結果と考察
下記項目に関する研究を行いまとめた。
①特定建築物の報告統計
②室内環境に関する現場調査
③温熱環境の測定
④空気環境衛生管理に向けたIoTセンサー活用手法の検討
⑤空気環境管理に向けたBEMSデータ活用手法の検討
⑥水の衛生管理の実態調査とIoT技術活用可能性、BEMSデータ活用可能性の検討
⑦IoT技術を活用した管理手法の調査
結論
1)ここ30年間は特定建築物の空気環境6要素の中でCO2、温度、相対湿度の不適率の経年変化はいずれも値が高く、上昇する傾向にあった。2017年度に不適率はピークを示しそれ以降は横ばいの状態であるが、2021年度は新型コロナの影響により、CO2濃度の不適率が14.5%と大幅に減少した反面、温度及び相対湿度は34.6%、59.8%と更に上昇している。
2) 立入測定では、温度、浮遊粉じん、気流、CO濃度については管理基準値を満足していた。相対湿度は一部建物で冬期湿度が40%RHを下回りやや低かったが、顕著に低い物件はなかった。CO2濃度は外気濃度平均470ppm程度に対して、室内平均630~710ppm程度であった。大きな差ではないものの測定機器による校正の問題や、センサー感度の違いも見受けられた。
3)温熱環境では、窓面方向で放射温度が下がりやすく不均一な放射環境となる、階段室や開放された空間に隣接している場所では冷気の流入により足元の空気温度が低くなることがある、建物の外皮熱性能が低く、暖房方式がそのような空間に対応していない場合は、垂直方向の空気温度分布が極端に大きくなることがあった。
4) IoTセンサー間の比較では、温度と湿度に関しては概ね良好な精度が確保できていた。CO2センサーも全体的には100ppm未満の差が多かった。一方で、センサーの個体特性や初期設置(校正)によって測定値に差が開いてしまうことがあった。立入測定とIoTセンサー測定の比較では大きな差異は生じず、概ね良好な結果が得られた。
5) BEMSデータから空間分布分析の結果、既存の法定測定法では把握できない時刻変動が見えるため、基準不適の原因特定や対策立案が容易になること、また不適の時間割合という新たな指標で環境を管理できることは、BEMSによる空気環境管理の大きな長所である。一方、BEMSは通常、温度、相対湿度、CO2濃度の3項目しか対応していないのが課題である。
6) 水に関連するBEMS項目としては流量、水温、ポンプ稼働状況など、エネルギー消費量に影響を及ぼす項目が中心となっていた。特に、上水流量に関しては、受水槽有効容積と組み合わせることによって受水槽の滞留時間管理と水質改善に活用できる可能性が示された。
7) IoTカメラ画像とAIによる画像解析を建物設備の日常点検と異常値検出に利用する技術や、カメラ、振動センサーによるネズミ等の生息と行動調査、画像解析による昆虫の同定と報告書の自動作成など、建築物衛生分野でもIoT技術を駆使した技術が開発され、実際にサービスを提供している企業も増えており、人員削減・コスト削減の観点から自動調査・自動測定の技術の建築物衛生管理への適用が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202227021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,400,000円
(2)補助金確定額
5,354,000円
差引額 [(1)-(2)]
46,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,772,972円
人件費・謝金 166,722円
旅費 269,878円
その他 145,345円
間接経費 0円
合計 5,354,917円

備考

備考
自己資金 917円

公開日・更新日

公開日
2024-01-22
更新日
-