水道の基盤強化に資する技術の水道システムへの実装に向けた研究

文献情報

文献番号
202227001A
報告書区分
総括
研究課題名
水道の基盤強化に資する技術の水道システムへの実装に向けた研究
課題番号
20LA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
清塚 雅彦(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 学((公財)水道技術研究センター 浄水技術部)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 鎌田 素之(関東学院大学 工学部 )
  • 山村 寛(中央大学 理工学部)
  • 三宅 亮(東京大学 工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,529,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、水道事業に携わる職員が不足する中、水道システム全体において水質の安全性を確保しつつ、適正な維持管理を行う手法の導入による経営効率化を図ることが求められている。本研究では、水質変動や異常時における早期発見を目的とするシステム導入を目指して、監視すべき水質指標を特定し、それらを効率的に監視する技術を開発するとともに、当該技術を組み込んだ水道システムの評価や改良点等をまとめることを目的としている。
研究方法
(1)水質管理の強化に係る既存・将来技術の文献調査と課題抽出、(2)連続測定が可能な水質指標の特定と測定手法の開発、(3)ビッグデータに基づく水質変動の早期予測手法の検討、(4)水道システム全体を視野に入れた経済的な水質センサーおよびデータ活用手法の開発に取り組んだ。
結果と考察
(1) 給水人口10万人未満の水道事業体に対し、職員数、自動監視装置の導入、残留塩素濃度測定という3つの視点からアンケート調査を実施し、回答を得た。
学術文献データベースを用い、①水道水源 リモートセンシング、②水道管 リモートセンシング、③水道水 ドローン というキーワードにて文献検索を実施し64文献を選定し、課題点等の抽出を行った。
(2) 文献調査の結果、三次元蛍光励起分析法は水道だけでなく水分野において研究事例が増加しており、三次元蛍光励起分析法のニーズが高まっていることが確認できた。
8月の高温期に実浄水場において採水した原水および浄水を三次元蛍光励起分析により測定した結果、腐食性物質やタンパク質様物質に起因する2つのコンポーネントに特徴的な挙動を確認することができた。加えて、降雨に伴う濁度上昇により原水中の腐食性物質とタンパク質様物質に起因するピークが確認され、降雨後には原水濁度は低下するものの、これらのピークは高い状態にあるなどの状況が確認できた。
(3) 浄水場出口から給水末端における6時間先の残留塩素を予測するモデルを構築した。このモデルでは、予測誤差0.025mg/L以下で予測できることが明らかとなった。また、モデルの実装に向けて、浄水場の監視制御システムに介入することなく、監視画面の動画から残留塩素濃度を読み取り、Excelに転送するシステムを構築した。
(4) 令和3年度に提案・試作した簡素水質計に更なる改良を加え、耐水性能の向上を図るとともに、配水拠点に設置し、性能検証を行った。その結果、若干のデータ遅延が発生するものの、耐水性に問題なく連続して動作し、概ね安定して測定できることが確認された。
結論
(1) 水道事業従事職員数は給水人口に依存しており、中小規模事業体では1人当たりの業務負荷が大きい状況が確認できた。また、AI等により自動監視装置による連続測定データを活用することでヒトに関する課題を解決しつつ、業務の効率化が図られることが期待されるため、ノウハウを有する民間企業等と連携しデータ活用を図っていくことが重要になると考えられた。残留塩素濃度測定については、住民へ安価に委託している状況にあった。より安価な自動監視装置が開発され導入が進めば、塩素注入量の適正化が図られるなど、より安全かつ経済的な配水運用が可能となり、水道事業の基盤強化へつながると考えられた。
人工衛星やドローン等のプラットフォームを用いたセンシングならびに画像解析技術の活用により、広域或いは到達が困難な箇所における水源水質の把握や漏水検出等が従来よりも短期間、省コストかつ省力的に実現できる可能性があり、水道の基盤強化を支える技術の一つとして活用することが望ましいと考えられた。一方、リモートセンシングに用いられるセンサーやプラットフォームは多種多様であるため、調査目的や対象規模に即した、適切な選択が重要であると考えられた。
(2) 三次元蛍光励起分析法により、既存の濁度等の指標では捉えることのできない溶解性の有機物の挙動を捕捉できる可能性が示され、溶存性有機物の挙動を連続的に監視することにより、より最適な条件下で浄水処理が行える可能性が示唆された。
(3) 残留塩素の予測モデルと監視画面の動画から残留塩素濃度を読み取り、Excelに転送するシステムを組み合わせることで、比較的小規模な浄水場でも、安価かつ高精度に給水末端地点での残留塩素濃度を予測できるシステムが実現可能となった。
(4) 本水質計および通信系を用い、測定時間間隔を60分程度、データ仕様を水質測定値のみとすることで手分析の代替となるコスト競争量のある提案が可能となると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-14
更新日
2024-03-28

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202227001B
報告書区分
総合
研究課題名
水道の基盤強化に資する技術の水道システムへの実装に向けた研究
課題番号
20LA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
清塚 雅彦(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 学((公財)水道技術研究センター 浄水技術部)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 鎌田 素之(関東学院大学 工学部 )
  • 山村 寛(中央大学 理工学部)
  • 三宅 亮(東京大学 工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、水道事業に携わる職員が不足する中、水道システム全体において水質の安全性を確保しつつ、適正な維持管理を行う手法の導入による経営効率化を図ることが求められている。本研究では水道事業体における水質管理、特に自動監視装置による連続監視の実態把握や水質管理に関する国内外の最新動向および課題点を抽出するとともに、水質変動や異常等を早期発見するために監視すべき水質指標の提案を行う。加えて、残留塩素に着目し、末端給水地点における残留塩素濃度を予測するモデルを構築・提案するとともに、簡素な水質センサーの構成および計測方法等の提案と実用的かつ経済的なデータ活用方法やそれに対応した水質センサーの仕様の提示を行うことで、水道水源から給水末端に至る水道システム全体における水質管理手法の提案を行う。
研究方法
(1)水質管理の強化に係る既存・将来技術の文献調査と課題抽出、(2)連続測定が可能な水質指標の特定と測定手法の開発、(3)ビッグデータに基づく水質変動の早期予測手法の検討、(4)水道システム全体を視野に入れた経済的な水質センサーおよびデータ活用手法の開発に取り組んだ。
結果と考察
(1) 自動監視装置を用いた水質管理の実態把握や残留塩素の測定についての現状把握等を目的として、全国の水道事業体へアンケートおよびヒアリング調査を実施するとともに、自動監視装置を製造している企業に対してヒアリング調査を実施した。
国内外の文献調査に基づき、連続測定可能な水質指標項目、新規水質センサーの開発、深層学習による早期の水質予測等測定データ利活用、リモートセンシング技術の適用等について最新動向を把握し、わが国の水道事業のさらなる基盤強化を行ううえでの利点ならびに課題点等を抽出した。
(2)実浄水場の原水および浄水を三次元蛍光励起分析(EEM)にて測定した。その結果、多くの事業体において連続測定が行われている濁度、電気伝導率、pH等では把握できない溶存性有機物の評価が可能になると考えられた。
(3) 残留塩素濃度の時系列変化を機械学習によりモデル化することで、技術職員の経験知を高度に再現し、数時間先の蛇口での残留塩素濃度を予測しながら自律的に塩素注入量を管理しうるシステムを開発した。
(4) センサーデータのポスト処理の品質を確保しつつ、経済的なセンサーを提案するため、簡素な水質計の提案、試作を行い、配水拠点等の屋外施設に設置し、課題摘出、改良を進めた。またそれらの知見を基に、実用的かつ経済的なデータ活用方法およびそれに対応した水質センサー(水質計・通信系)の仕様の提示を行った。
結論
文献調査の結果より、EEMは、溶存性有機物の挙動解析や汚染源推定などへの活用事例があること、PARAFAC解析を適用することで溶存有機物の構成や存在状況・季節変動を捉えることが可能なことが確認でき、EEMが水道の水質管理において留意すべき有機物群を対象とした連続監視にも適用できる可能性が示唆された。研究(2)において実浄水場の原水及び浄水をEEMにて測定したところ、フミン酸やフルボ酸等の腐食性物質やタンパク質様物質の分析が可能であり、濁度等の従来から連続測定している項目では捉えることのできない溶存性有機物の挙動を捕捉できる可能性が示された。これらの物質はトリハロメタンの削減や残留塩素の保存に影響を与える項目であり、EEMを活用することで、より適切な条件下での浄水処理やより高度な水質管理を行えるようになるのではないかと考えられた。
水道事業体が連続測定している水質データを基に深層学習等を用いて水質予測手法を開発し適切に活用することで、水道事業における広汎な業務を支援できると考えられた。研究(3)におけるLSTMを用いた将来の残留塩素濃度を予測するモデルを構築するためには、少なくとも2地点における一定期間の残留塩素濃度連続測定値が必要となることから、このモデルを活用するためには、先ずは連続的な測定データを蓄積する必要があると考えられた。しかしながら、研究(1)において全国の水道事業体に対し連続測定の実態調査を実施したところ、特に中小規模事業体ではコスト的制約から連続即測定をしている事業体は限られていることが確認された。また、研究(4)では簡素な水質計の開発および提案に取り組んでおり、現時点で開発途中ではあるものの、安価に製作できる可能性が示された。この水質計は一定間隔における連続測定が可能であり、データを蓄積していくことで、研究(3)で構築したモデルを作成・活用することができ、適正な残留塩素濃度管理が可能になると考えられた。
このような各要素技術を、水道水源から給水末端に至る水質管理に活用することで、限られた職員数であっても将来を見据えたより安全で持続可能な水道事業運営が可能となるだろう。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202227001C

収支報告書

文献番号
202227001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,187,000円
(2)補助金確定額
7,187,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,906,209円
人件費・謝金 0円
旅費 725,767円
その他 1,910,117円
間接経費 1,658,000円
合計 7,200,093円

備考

備考
自己資金13,070円、その他(利息)23円

公開日・更新日

公開日
2024-02-14
更新日
-