がんの腹膜播種に対する標準的治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200925039A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの腹膜播種に対する標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
白尾 国昭(大分大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧内 比呂也(大阪医科大学・化学療法センター)
  • 那須 淳一郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)
  • 天貝 賢二(茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター)
  • 浜本 康夫(栃木県立がんセンター)
  • 澤木 明(愛知県がんセンター中央病院)
  • 畠 清彦((財)癌研究会有明病院)
  • 大川 伸一(神奈川県立がんセンター)
  • 宮田 佳典(厚生連佐久総合病院)
  • 奥野 達哉(神戸大学病院)
  • 山口 研成(埼玉県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腹膜播種を伴う進行胃癌を対象にMTX+5-FU時間差療法と5-FU単独持続静注療法の第Ⅲ相無作為化比較試験を行い、標準的治療法を確立することが本研究の目的である。
研究方法
腹膜播種を伴う進行胃癌を対象にMTX+5-FU時間差療法(B群) vs 5-FU単独持続静注療法(A群)のランダム化比較試験を行う。
結果と考察
(研究結果)全登録症例数は237例であった。119例がA群、118例がB群に割り付けられた。両群の年齢、性別、PSなどに大きな差は見られなかった。全237例の生存期間の中央値は10.1ヶ月であった。A群およびB群の全生存期間の中央値はそれぞれ9.4ヶ月、10.6ヶ月であり、両者に有意差は認められなかった(HR 0.94、p=0.31)。登録時経口摂取可能例が経口摂取不能となるまでの期間(経口摂取可能生存期間)の中央値はA群、B群それぞれ8.1ヶ月、9.0ヶ月であり、両者に差はなかった。登録時経口摂取不能例における経口摂取改善割合もA群41%(7/17)、B群57%(8/14)と両者に有意差は認められなかった。B群において、Grade 3以上の白血球減少、好中球減少、発熱性好中球減少症、好中球減少を伴う感染、低ナトリウム血症、腹痛、下痢、嘔気などの有害事象の頻度がやや高い傾向にあった。治療関連死亡は3例であった(A群:2例、B群:1例)。
(考察)胃がんの腹膜播種はこれまで抗がん剤による強い毒性が懸念され、治療開発が行われてこなかった領域である。今回の第III相試験の結果ではMTX+5-FU時間差療法の有用性を示すことが出来なかったが、本試験は腹膜播種を対象に化学療法を行った最初の大規模試験であり、今後のこの領域におけるレファレンスとなるものと考える。平成22年度は本研究の結果および胃癌腹膜播種を対象に現在行っている2つの臨床試験(比較第Ⅱ相試験であるJCOG0407:best available 5-FU vs weekly Taxol、および5-FU/LV+Taxolの第Ⅰ相試験)の結果をもとに、さらなる治療成績の向上を目指した次期第Ⅲ相試験を開始する予定である。
結論
腹膜播種を伴う進行胃がんを対象に行った第Ⅲ相無作為化比較試験において、現時点の標準治療は5-FU単独持続静注療法であるという結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-