文献情報
文献番号
202224049A
報告書区分
総括
研究課題名
食品分析の信頼性確保に資する外部標準法定量NMR(EC-qNMR)の高度化及び標準化に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21KA3008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
西崎 雄三(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品分析の信頼性確保に資する有機化合物の絶対純度算出法として外部標準法定量NMR(EC-qNMR)の高度化及び標準化について検討することとした。EC-qNMRで正確な定量結果を得るためには、試料毎に90°パルス幅(pw90)を校正し、校正結果をqNMR測定に反映する必要がある。昨年度、pw90校正からqNMR測定を完全自動化するスクリプトを開発した。そこで、本研究では開発したスクリプトを用いてEC-qNMR共同試験を実施する。具体的には、分析種及び外部標準(EC)に安息香酸及びジメチルスルホンを用いて、参加機関がEC-qNMRで算出する安息香酸の真度、精度、繰返し性、再現性を確認し、EC-qNMRの高精度化及び標準化を進める。
研究方法
6機関で共同試験を実施した(Lab No. 1~6)。共同試験参加者は別紙:「第一回自動測定スクリプトを用いたEC-qNMR共同試験-マニュアル-」に従ってEC-qNMRを実施した。DMSO-d6に溶解させた2.0506 mg/mLの安息香酸及び0.4959 mg/mLのジメチルスルホンを、それぞれ分析種及びECとして用いて、下記の通り測定した。
NMR装置に投入した試料を25℃で5分間平衡化させた。グラジエントシム、オートシムにより分解能を調整し、チューニング・マッチング(T&M)によりHFコイル及びLFコイルを調整した。次に、pw連続測定によりpw90を校正した。次に算出したpw90をqNMR測定条件に反映した。
qNMR測定で得られたFIDを処理し、EC-qNMR解析用スペクトルとした。スペクトル上のプロトンに対して自動積分を行い、安息香酸の絶対純度を算出した。具体的には、ジメチルスルホンのスペクトルから1プロトン当たりの感度係数:Q値を算出し、このQ値との比較により安息香酸の純度を算出した。
NMR装置に投入した試料を25℃で5分間平衡化させた。グラジエントシム、オートシムにより分解能を調整し、チューニング・マッチング(T&M)によりHFコイル及びLFコイルを調整した。次に、pw連続測定によりpw90を校正した。次に算出したpw90をqNMR測定条件に反映した。
qNMR測定で得られたFIDを処理し、EC-qNMR解析用スペクトルとした。スペクトル上のプロトンに対して自動積分を行い、安息香酸の絶対純度を算出した。具体的には、ジメチルスルホンのスペクトルから1プロトン当たりの感度係数:Q値を算出し、このQ値との比較により安息香酸の純度を算出した。
結果と考察
EC-qNMR共同試験の結果、どの機関も誤差2%以内という実用的な精度で安息香酸の純度を算出していた。このことから、マニュアルに記載したEC-qNMRの測定手順及び測定条件は十分に最適化できているといえる。Lab No.5と6が算出した安息香酸純度のバラつきが他の機関と比べて大きかった。この原因について考察した。EC-qNMRではpw90校正の前にT&Mによるプローブの最適化を行う。すなわち、EC-qNMRの結果は、T&Mによるプローブの調整結果に依存する。T&Mでは照射信号を試料に与え、その反射値が0になるように調整する。本共同試験では、ブランク試料(溶媒:DMSO-d6)を用いて、T&Mを5回実施し、その際の反射値を記録し、報告することとした。Lab No.5と6以外の機関では、反射値は30以下におさまっていた。一方で、Lab No. 5及び6については、全ての日において、反射値の値は20~100程度とバラついていた。このことから、Lab No. 5及び6では、T&Mをするたびにプローブの状態が変わっていると考えられ、その結果、安息香酸の測定結果がバラついたと考えられた。このような場合、測定回数を増やし、その平均値を採用することで、真値に近い値が得られると考えられる。
結論
開発した自動測定スクリプトを用いて、EC-qNMR共同試験を実施した。測定試料は安息香酸(認証値:99.8% mass fraction)とジメチルスルホン(認証値:99.9% mass fraction)であり、それぞれ分析種とECとして用いた。最適化した測定手順、測定条件に従って共同試験を実施したところ、全ての機関から、誤差2%以内に収まる良好な結果が得られた。このことから、EC-qNMRの測定手順、測定条件は十分に最適化できているといえる。一部の機関では結果のバラつきが他の機関と比べて大きく、その原因としてT&Mの調整にバラつきがあると考えられた。このような場合は、測定回数を増やし、その平均値を採用することで、真値に近い値が得られる。
本共同試験で得られた結果を関連する団体に情報提供し、継続して研究・普及啓発の活動を続けていく予定である。また、本共同試験の結果をもとに、EC-qNMRの標準化について検討し、EC-qNMRの社会実装を具体的に進めたいと考えている。
本共同試験で得られた結果を関連する団体に情報提供し、継続して研究・普及啓発の活動を続けていく予定である。また、本共同試験の結果をもとに、EC-qNMRの標準化について検討し、EC-qNMRの社会実装を具体的に進めたいと考えている。
公開日・更新日
公開日
2023-05-30
更新日
-