職域での歯科口腔保健を推進するための調査研究

文献情報

文献番号
202223010A
報告書区分
総括
研究課題名
職域での歯科口腔保健を推進するための調査研究
課題番号
21JA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
上條 英之(東京歯科大学 歯科社会保障学)
研究分担者(所属機関)
  • 品田 佳世子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 口腔疾患予防学分野)
  • 杉原 直樹(東京歯科大学 衛生学講座)
  • 恒石 美登里(公益社団法人 日本歯科医師会 日本歯科総合研究機構)
  • 大山 篤(東京医科歯科大学 口腔疾患予防学分野)
  • 澁谷 智明(日立製作所京浜地区産業医療統括センタ 新川崎健康支援センタ)
  • 吉野 浩一(東京歯科大学 衛生学講座)
  • 石塚 洋一(東京歯科大学 歯学部)
  • 江口 貴子(東京歯科大学短期大学 歯科衛生学科(東京歯科大学本館14階))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
THP指針の約30年ぶりの改正で、歯科口腔保健の位置づけが明確化されたことから、職域での歯科口腔保健を円滑に推進するため、一部の事業所での先進的な取り組みについて、先進事例としての情報を取りまとめるとともに、職域での歯科口腔保健を円滑に推進ができるよう、リンク集の原案等を作成する目的で本研究を行いました。
研究方法
1 事業所での歯科口腔保健の取り組みについてのヒアリング調査
 日本産業衛生学会産業看護部会の会員および各都道府県歯科医師会に対する調査での回答内容等を参考にし、事業所での歯科口腔保健のサービス提供の取り組みが、盛んな事業所を選定するとともに、都道府県歯科医師会について、2018から2020年度まで、歯科口腔保健指導を含め、対応されている都道府県歯科医師会をヒアリングの候補としました。また、比較的長期に事業所での歯科口腔保健サービスを取り組んでいる事業所を対象として追加して行いました。
 ヒアリング調査は現地調査を原則とし、対応が難しい場合、WEB対応により実施しました。
2 リンク集等の原案作成
2022年3~5月に日本産業衛生学会 産業看護部会の会員を対象に実施した「事業所での歯科口腔保健事例集作成のための調査」の結果を踏まえ、職域で活用できる産業歯科保健に関するリンク集のテーマの原案を作成しました。
テーマごとに、分担研究者および研究協力者に分担してもらい(以下、リンク集分担者)、職域の歯科口腔保健活動に活用できそうなリーフレット、マニュアル、動画、PPTなどの媒体を中心にリンクを収集を行い、各リンク集分担者がある程度リンクを集積できた段階で、オンラインで打ち合わせを行った。打ち合わせでは、1)リンクの収集状況、2)産業歯科保健のリンク集にほかに追加すべきテーマ、3)既存のリンクだけでなく、産業歯科保健関係者が新たに教材作成すべきテーマ、等に関して、報告および検討を行いました。
結果と考察
1 ヒアリング調査で得られた成果
1)浜松ホトニクスでのヒアリングの結果、長期継続して、高い受診率のもと、30年以上にわたり、事業所で定期的に歯科健診を行っている場合、コラボヘルスによる推進体制が前提となるが、一人当たり歯科医療費が全国平均を下回る状況で、いわゆる職域での歯科口腔保健サービスの推進で、歯科医療費が適正化されることが示唆されました。
2)富士通コミュニケーションサービスでのヒアリングの結果、保健サービスとしての事業所での位置づけが確立していない中での歯科セミナーの継続的な開催がなされており、今後の活動の継続が期待されました。
3)ヤクルト中央研究所でのヒアリングの結果、歯科保健指導を行動変容型に変更したことで、セルフケアの意識が高まり口腔の健康のみでなく全身の健康への効果が高まっている可能性も示唆されました。
4)Daigasグループ健康開発センターのヒアリングを行ったところ、このセンターでは専任の歯科衛生士が、歯科口腔保健に従事しており、他の調査との比較の余地はありますが、アウトカム評価で歯の喪失が減少し、う蝕の未処置歯数が1.9本(1996年)から0.6本(2021年)に急減していました。
5)塩野義健康保険組合のヒアリングでは今後の歯科口腔保健事業では、新たな試みとして、WEB上での予防型歯科健診プログラムにより、リスク判定を行う仕組みでの対応がなされ新たなコンセプトによる取り組みと考えられました。
6)ある大手電機機器メーカーのヒアリングから、歯科口腔保健の事業に対して必ず参加する健診会場で実施するという手軽さ、現状の見える化→対策→評価→次年度企画(PDCAを社員に見せること)、関心があるうちに教育、すぐに行動化できるような仕掛け(インセンティブで歯ブラシ等)、社員との日頃からのコミュニケーションなどが、事業場での歯科口腔保健事業の取り組みを成功させるポイントである可能性が示唆されました。
7)福島県歯科医師会と新潟県歯科医師会のヒアリングから、一般歯科健康診査等の申込や実施件数が経年的に増加し、両都道府県歯科医師会とも、広く周知するパンフレットや健診の流れをフローチャートにして、広く事業所等への周知を実施していました。新潟県では、都道府県歯科医師会と連携をした歯科保健協会という組織で対応されていました。
2 リンク集等の原案の作成
職域での歯科口腔保健を円滑に推進ができるよう、歯科以外の医療関係者職種が利用するための指導媒体作成を進めるとともにリンク集の原案について取りまとめを行いました。
結論
事業所でのヒアリングにより、比較的長期間、継続的に事業展開がされている場合は、歯科医療費の抑制がされたり、歯の喪失が抑制され、未処置のむじ歯が減少する等の効果が認められ、歯科口腔保健に関する保健活動を事業所で実施することでのメリットが大きいことが改めて判明しました。

公開日・更新日

公開日
2023-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202223010Z