文献情報
文献番号
202223009A
報告書区分
総括
研究課題名
障害をもつ労働者の労働災害の実態把握と安全衛生対策の確立に資する研究
課題番号
21JA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
北原 照代(滋賀医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 辻村 裕次(滋賀医科大学 医学部)
- 白星 伸一(佛教大学 保健医療技術学部)
- 垰田 和史(びわこリハビリテーション専門職大学 リハビリテーション学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,349,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
就労障害者の労災事故や二次障害を初めとする健康問題について、対面聴き取り調査・質問紙調査を通じて発生状況を把握するとともに、多職種が関わって就労障害者の心身機能と作業環境を評価し、安全衛生におけるリスク低減のための改善提案を行うこと。
研究方法
1年目に引き続いて、障害者就労事業所を対象に、訪問しての職場見学及び対面聴き取り調査(訪問調査)を実施した(2作業所、3民間事業所、1特例子会社の計6か所)。1年目に訪問した2か所の作業所にも再度訪問し、可能な範囲で改善提案を行った。新型コロナウィルス感染症拡大を鑑み、対面実施が可能となったタイミングで、訪問先の許可を得て調査を実施した。
質問フォーム調査は、滋賀県社会就労事業振興センターと滋賀県社会就労センター協議会の協賛を得て、2022年12月、同会員作業所96か所に、Web上の質問フォームへの回答を電子メールで依頼した。回答率は14.6%にとどまったが、手間のかかる記述式質問にも積極的な回答があり、就労障害者に対する安全衛生意識の高い作業所から回答が得られた。
利用者の心身機能の評価(事例介入)については、新型コロナウィルス感染症拡大を受けて限定的となったものの、作業所通所者である脳性麻痺(アテトーゼタイプ)事例及び進行性筋ジストロフィー事例を対象に実施した。障害者からのヒアリング及び理学療法士による身体機能評価等に基づき、改善提案を検討した。
また、滋賀県内の7圏域に1か所ずつ設置されている「障害者働き・暮らし応援センター」のうち、湖南地域(草津市・栗東市・守山市・野洲市)のセンター「りらく」(障害者就業・生活支援センター)を訪問し、障害者の就労支援に関して意見交換を行った。
質問フォーム調査は、滋賀県社会就労事業振興センターと滋賀県社会就労センター協議会の協賛を得て、2022年12月、同会員作業所96か所に、Web上の質問フォームへの回答を電子メールで依頼した。回答率は14.6%にとどまったが、手間のかかる記述式質問にも積極的な回答があり、就労障害者に対する安全衛生意識の高い作業所から回答が得られた。
利用者の心身機能の評価(事例介入)については、新型コロナウィルス感染症拡大を受けて限定的となったものの、作業所通所者である脳性麻痺(アテトーゼタイプ)事例及び進行性筋ジストロフィー事例を対象に実施した。障害者からのヒアリング及び理学療法士による身体機能評価等に基づき、改善提案を検討した。
また、滋賀県内の7圏域に1か所ずつ設置されている「障害者働き・暮らし応援センター」のうち、湖南地域(草津市・栗東市・守山市・野洲市)のセンター「りらく」(障害者就業・生活支援センター)を訪問し、障害者の就労支援に関して意見交換を行った。
結果と考察
1.訪問調査
今年度の訪問は、主として知的・発達・精神の障害者が就労する事業所が多かった。
作業所では、通所者の障害特性をよく把握しており、障害に応じて適切な配慮がなされていた。一方で、企業で一般的に行われている作業負担軽減策に関する情報が、作業所では十分に共有されていないことがうかがわれた。
民間事業所の事業主は、従業員を大切に思う気持ちが強く、そのことが高い安全衛生水準に反映されていた。良い意味で就労障害者を特別視せず、一人一人の従業員に合った心配りができていること、また、近隣の特別支援学校教員との連携がうまく取れていることは、障害者の就労と雇用継続に効果的であった。事業所と医療・労働衛生、特別支援学校との連携、また、就労障害者の生活面を含めて相談・指導できる専門家や介入の仕組みなどが求められる。
特例子会社では、多数の障害者が働いており、安全衛生体制、作業の環境や道具、障害者の家族/グループホームとの意思疎通を図る点で、適切で有効な配慮がされていた。特例子会社のノウハウや配慮事項は、作業所や中小規模民間事業所でも活用可能と考えられる。
調査結果を踏まえて、労働安全衛生の専門家が配置されにくい作業所や中小規模民間事業所で活用可能な「アクションチェックリスト」と「良好事例/改善提案事例集」を作成した。
2.質問フォーム調査
利用者割合が高い知的・発達・精神の障害者が安寧に過ごすために、休憩の時間的・空間的な配慮(他の通所者との接触を減らす・静かな環境を作るなど)、事故の中で最も多かった転倒・衝突に対する様々な配慮・工夫(段差をなくす・休憩時間をずらして混雑を避ける・職員が見守るなど)がされていた。通所者の安全衛生のための職員の研修は、定期、不定期、現場教育など可能な形で実践されていた。一方で、作業空間の広さが適正であったとの回答は半分であり、作業時の災害では、転倒に次いで、通所時の交通事故も大きな問題となっていた。また、他害傾向のある通所者に苦慮している様子がうかがわれた。
3.事例介入
2事例について、障害者からのヒアリング及び身体機能評価等に基づき、改善提案を検討した。脳性麻痺事例においては、主治医との連携による訪問看護の開始により、主訴である足の痛みの軽減を認めた。理学療法士による身体機能評価に基づく装具作成および福祉用具の活用については継続して検討する。進行性筋ジストロフィー事例においても、職場環境を考慮しつつ、補助具の利用も含めて改善策を検討した。
今年度の訪問は、主として知的・発達・精神の障害者が就労する事業所が多かった。
作業所では、通所者の障害特性をよく把握しており、障害に応じて適切な配慮がなされていた。一方で、企業で一般的に行われている作業負担軽減策に関する情報が、作業所では十分に共有されていないことがうかがわれた。
民間事業所の事業主は、従業員を大切に思う気持ちが強く、そのことが高い安全衛生水準に反映されていた。良い意味で就労障害者を特別視せず、一人一人の従業員に合った心配りができていること、また、近隣の特別支援学校教員との連携がうまく取れていることは、障害者の就労と雇用継続に効果的であった。事業所と医療・労働衛生、特別支援学校との連携、また、就労障害者の生活面を含めて相談・指導できる専門家や介入の仕組みなどが求められる。
特例子会社では、多数の障害者が働いており、安全衛生体制、作業の環境や道具、障害者の家族/グループホームとの意思疎通を図る点で、適切で有効な配慮がされていた。特例子会社のノウハウや配慮事項は、作業所や中小規模民間事業所でも活用可能と考えられる。
調査結果を踏まえて、労働安全衛生の専門家が配置されにくい作業所や中小規模民間事業所で活用可能な「アクションチェックリスト」と「良好事例/改善提案事例集」を作成した。
2.質問フォーム調査
利用者割合が高い知的・発達・精神の障害者が安寧に過ごすために、休憩の時間的・空間的な配慮(他の通所者との接触を減らす・静かな環境を作るなど)、事故の中で最も多かった転倒・衝突に対する様々な配慮・工夫(段差をなくす・休憩時間をずらして混雑を避ける・職員が見守るなど)がされていた。通所者の安全衛生のための職員の研修は、定期、不定期、現場教育など可能な形で実践されていた。一方で、作業空間の広さが適正であったとの回答は半分であり、作業時の災害では、転倒に次いで、通所時の交通事故も大きな問題となっていた。また、他害傾向のある通所者に苦慮している様子がうかがわれた。
3.事例介入
2事例について、障害者からのヒアリング及び身体機能評価等に基づき、改善提案を検討した。脳性麻痺事例においては、主治医との連携による訪問看護の開始により、主訴である足の痛みの軽減を認めた。理学療法士による身体機能評価に基づく装具作成および福祉用具の活用については継続して検討する。進行性筋ジストロフィー事例においても、職場環境を考慮しつつ、補助具の利用も含めて改善策を検討した。
結論
本年度は6か所の事業所を訪問し、質問紙調査の結果も併せて、障害者共通の課題と、障害の特性による課題を整理することができた。本調査結果を踏まえて、職場の作業環境管理と就労障害者の健康管理を効果的に実施できる「アクションチェックリスト」を作成し、「良好事例/改善提案事例集」にて、働く場での労災事故防止と二次障害予防のための「合理的配慮」を具体的に示すことができた。
公開日・更新日
公開日
2023-10-19
更新日
-