全国規模の肝炎ウイルス感染状況の把握及びウイルス性肝炎eliminationに向けた方策の確立に資する疫学研究

文献情報

文献番号
202221003A
報告書区分
総括
研究課題名
全国規模の肝炎ウイルス感染状況の把握及びウイルス性肝炎eliminationに向けた方策の確立に資する疫学研究
課題番号
22HC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社中央血液研究所)
  • 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 保坂 哲也(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 肝臓内科)
  • 古賀 浩徳(久留米大学 医学部)
  • 山崎 一美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
  • 豊田 秀徳(大垣市民病院 消化器科)
  • 宮坂 昭生(岩手医科大学 医学部  内科学講座 消化器内科肝臓分野)
  • 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
  • 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合クリニック)
  • 秋田 智之(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の肝炎状況に対処するため、全国規模の肝炎ウイルス感染状況の把握及びHBV感染後・HCV排除後の長期経過に関する臨床疫学研究を実施し、政策の企画立案と基準策定の基礎資料や施策に科学的根拠を与えるための成果の獲得をめざし、地域レベルを含むウイルス肝炎排除への方策を提示する
研究方法
基礎、臨床、社会医学各分野の専門家の参加を得て組織的に実施する
結果と考察
・住民多段階無作為抽出によるベトナム南部のビントン州の成人504人の保存血清(2012年)を測定し、HAV-Total抗体陽性率93.8%、HEV-IgG抗体陽性率31.9%(NIID共同研究)。HEV-IgG陽性検体のうちHEV-RNA陽性は検出されず。HAV-RNA検出・シークエンス解析を進行中
・大阪医療センターHCV患者104人のうち、男性間性交渉者(MSM)群は静脈薬物使用有無にかかわらず感染クラスターを形成。Non-MSM & 静脈薬物使用者(PWID)群ではgenotype 2a, 2bが高頻度。HCV感染を決定づける因子「MSMか否か」は「静脈薬物使用有無」よりも優先される可能性
・妊婦1,622人対象とした血清疫学研究(ブルキナファソ)ではHBsAg 6.5%うちHBeAg 22.6%、HBV genotype Eが58.7%を占める
・妊婦1,565人を対象とした血清疫学研究(カンボジア)ではHBsAg 67人, 4.28%うちHBeAg 41.8%。HBV母子感染の1例(生後6ヶ月:2.86%)はHBeAg陽性&高ウイルス量の母を持つ。母体内感染の可能性
・HBcrAg測定方法系に関する論文レビューとHBVの中空粒子構造に関する検討(J Virol 2021, JBC 2005)
・核酸抽出操作を必要としない簡便かつ精度の高いHBV DNA定量検出法を開発
・2017-21年初回献血者集団におけるHBs抗原陽性率0.13%・HCV抗体陽性率0.16%。キャリア数推計に用いる基礎資料
・マルコフモデルによる肝病態推移率を肝病態診断と肝線維化マーカー(FIB-4,APRI)から検討。HCV治療は、肝線維化進行、肝病態進行、肝発癌を抑制する。HBVでは、治療群に肝硬変など病態進行例が多く治療介入時の背景を示す結果
・2020年度国民調査の検査受検経験率が2017年と同程度だった理由として、肝炎ウイルス検査受検経験を忘れた既受検者が未受検者と誤分類されている可能性がある。住民検診肝炎ウイルス検査を受検した993人のうち、412人(41.7%)のみ受検歴を覚えていた。その割合を2020年検査受検経験率の補正に用い、HBV検査受検経験率は71.1%から85.5%、HCV検査受検経験率は59.8%から76.4%と上向いた
・医薬品販売実績(IQVIA)2020-2021年のHCV DAA、HBV 核酸アナログのデータを入手、一人当たりの平均使用錠数から患者数を割り出し、HCV:2019年度18,966人、2020年度13,576人、2021年度11,774人、HBV:2019年度109,312人、2020年度121,404人、2021年度127,882人
・(肝炎対策室依頼研究)NDB2012~2018年度解析により、肝がん・重度肝硬変への治療ある患者は283,345人。うち、6ヶ月以上の間隔で複数回の治療患者は89,252人、治療回数1.8±1.2回、治療月数13.4±13.2月。うち、12ヶ月以上の間隔,複数回治療患者は52,416人、治療回数1.3±0.6回、治療月数11.2±11.1月
・NDBを用いた、B型・C型肝炎ウイルスに起因する肝疾患治療患者の実態解析、およびNBNC肝がんの実態解析のための抽出条件を検討した。9年分NDBをR4年4月利用申請、R5年3月中旬受領後、現在解析中
・2020年度実績自治体調査からみた現状は、診療連携関連スコアの低下幅が大。特に保健所検査や委託医療機関でのフォローアップの継続が困難な都道府県が多い
・都道府県別のC型肝炎対策の取り組みの可視化。疫学5指標評価に使用するデータを見直し、ヒートマップ、レーダーチャートを更新。都道府県別に対策の課題抽出として有用
・大規模コホート:国立病院機構群における急性肝炎の発生状況の検討。1980年から41年間の登録患者数はB型1,571例、C型446例
・大規模コホート:2014-19年献血者コホートのHBs抗体価とHBV新規感染の検討。HBV新規感染はHBcAb陰性かつHBsAb<10.0IU/mLの集団にほぼ限られる
・大規模コホート:感染症サーベイランスによる急性C型肝炎の発生状況(1999-21年間)と感染経路を解析、東京が増加傾向、男女とも30代と50−60代のピーク、性的接触の増加を提示
結論
得られた知見は研究目的に適う

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202221003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
50,000,000円
(2)補助金確定額
50,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,587,595円
人件費・謝金 11,858,660円
旅費 2,656,267円
その他 6,897,478円
間接経費 10,000,000円
合計 50,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
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