我が国の狂犬病清浄性の検証及び関係機関の連携強化のための研究

文献情報

文献番号
202219017A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の狂犬病清浄性の検証及び関係機関の連携強化のための研究
課題番号
22HA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 伊藤 直人(岐阜大学応用生物科学部)
  • 西園 晃(大分大学医学部感染分子病態制御講座)
  • 西浦 博(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究科 社会医学講座衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では狂犬病予防法のもとで実施されている国内対策における現状を把握することを目的としている。
研究方法
各研究者の報告を参照してください。
結果と考察
1)狂犬病対策に関連する関係機関との意見交換および調整、2)狂犬病に対する獣医師及び関係者の意識改革のための対応策、3)野生動物における狂犬病の調査とその対応策の検討、4)ヒトにおける狂犬病対策の現状と問題点の抽出、5)狂犬病のリスク評価とそれを用いた提言、の5課題に関して、各分担研究者が調査研究を遂行した。各研究者の報告に詳細を述べている。
結論
結論を列挙する。
1) 狂犬病感染動物の外国からの侵入経路として、今後もコンテナ迷入動物の対策が必要であることが確認された。
2) マウス実験レベルでは曝露後ワクチン接種は接種後7日目には有効な抗体価が上昇していることが確認され 、WHO推奨の方法が有効であることが確認された。
3) 飼育犬の有効抗体(0.5IU以上)保有率は70%以上であることが確認された。
4) 野生動物の死亡要因として狂犬病の検査が推奨されている。しかし、実際は狂犬病以外の感染症として犬ジステンパーウイルスやオーエスキー病ウイルスでの死亡例が多い。これらと類症鑑別する検査法を導入することにより、それ以外の感染症による飼育犬、展示動物、生産動物への影響を軽減することになる。これら3種類を簡単に診断できる診断法の開発が醜状である。LN34 pan-lyssavirus real-time RT-PCR法を改良し、より感度の高いリッサウイルス検出系を作成した。狂犬病および汎リッサウイルス検出系として診断への応用が期待される。
5) 現行のRABV-N-mAbを使用した診断では問題なくその他のリッサウイルスを検出できる。ワクチンに関しては狂犬病以外のリッサウイルスに対する防御に関しては不十分であり、新たな対策が必要である。
6) 狂犬病に対する危機意識の賦活と実際的な体制整備の強化と持続性のある研修等を提案するために、引き続き、狂犬病の予防対策等に従事する国・自治体・獣医師および関連する大学関係者等から現行の狂犬病研修事業や獣医大学等での狂犬病等動物由来感染症にかかわる獣医公衆衛生の講義・演習・実習等について課題等を含めた意見を共有しながら「体制整備強化に効果的な意識改革」につながる研修等の素案作成と現場での試行を検討準備している。自治体におけるマニュアルの見直しや机上訓練実施の促進に波及することが期待される。また、これと並行して獣医大学と動物看護大学における卒前・卒後の獣医公衆衛生教育と市中臨床獣医師の意識改革が加わると国と自治体の狂犬病体制整備の人材確保と科学的根拠と専門性の強化および初動の要となる獣医臨床と自治体の連携も強化されることが期待される。
7) 近年の過疎化などの社会問題は、様々な野生動物の分布・密度に影響をもたらし、野生動物と人間の接触機会の増加につながると懸念されている。また、高齢化が進むことで、多くの感染症に対して高感受性を示す人口の割合が年々増加することも予想される。このような状況より、「One Health」の概念に基づいた、野生動物由来感染症対策が益々重要となっている。同概念に基づき、すでに 行政組織改革に踏み切った県もごく一部で存在するものの、国全体としての取り組みは十分とは言えない。今後は、どの都道府県においても、様々な分野の担当者・専門家の組織的・有機的な連携のもと、科学的知見に基づくリスク評価を実施し、具体的な予防対策を立案・実行していくことが望ましい。野生動物を対象とした狂犬病モニタリング体制を整備することで、他の野生動物由来感染症に対する対策の強化にもつながると期待できる。
8) わが国の人における狂犬病対策の課題の抽出とその対応策の検討を主題とし、邦人における狂犬病対策の現状と問題点の抽出とその対策について検討した。これまでは狂犬病流行地など海外渡航者向けの対応に主な注目が向けられていたが、国内実臨床の現場で狂犬病患者を診断する可能性もあり得ることから、対応にあたる医療従事者への意識づけのための方策と発生時対応も必要であり、彼らに対する狂犬病ワクチン接種のためのリスク分析と対策が求められた。
9) 飼い主への狂犬病予防接種や集団接種に関する普及啓発の継続と獣医師のかかりつけ勧奨および接種勧奨の関与が求められる。

公開日・更新日

公開日
2024-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202219017Z