難治性不随意運動症状を伴うトゥレット症候群に対する脳深部刺激の有用性に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200918032A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性不随意運動症状を伴うトゥレット症候群に対する脳深部刺激の有用性に関する多施設共同研究
課題番号
H21-臨床研究・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 泰介(国立精神・神経センター医療研究センター病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 開道 貴信(国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科)
  • 加我 牧子(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 瀬川 昌也(瀬川クリニック)
  • 金生 由紀子(東京大学医学う附属病院 こころの発達診療部)
  • 横地 房子(東京都立神経病院 神経内科)
  • 深谷 親(日本大学医学部 脳神経外科)
  • 川合 謙介(東京大学医学部 脳神経外科)
  • 冨永 悌二(東北大学医学部 脳神経外科)
  • 杉山 憲嗣(浜松医科大学 脳神経外科)
  • 加藤 天美(近畿大学医学部 脳神経外科)
  • 平林 秀裕(奈良県立医科大学 脳神経外科)
  • 藤井 正美(山口大学医学部 脳神経外科)
  • 米本 直裕(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 山田 光彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
トゥレット症候群(TS)は小児期にチック症状で発症し多くは思春期後に寛解するが、稀に永続的に激しく奇異な不随意運動を呈し社会生活や日常生活に著しい障害をきたす。近年、主に欧米より脳深部刺激(Deep Brain Stimulation: DBS)の不随意運動に対する有効性が報告されるようになり、本疾患の重篤性を鑑み、本邦におけるDBS治療の早期適応が待たれている。
研究方法
本研究は、難治性不随意運動症状を伴うトゥレット症候群に対するDBSの早期導入をはかるため、トゥレット症候群の疫学、病態、標準治療、DBS治療等に関する先行研究の調査と統計学的および倫理学的問題の検討を行ったうえで、DBSのトゥレット症候群の不随意運動に対する効果と認知・情動機能への安全性を評価するための二重盲検多施設共同臨床研究のプロトコルを作成した。
結果と考察
本研究により、我が国のトゥレット症候群患者数は6万人、難治性患者は6000人、そのうち本治療法適応となる悲惨な日常生活を強いられている重症患者は1,000人以下と推定され、この希少だが重度な疾患に有効な治療技術が導入される社会的意義は大きいと判断された。
本研究で作成されたプロトコルは、二重盲検多施設共同研究であり、中枢神経領域に先端的外科治療技術を用いた介入的臨床研究のモデルとして優れている。本研究により、トゥレット症候群に対するDBSの不随意運動に対する有効性と、認知面・情動面その他への安全性を検証できることが期待される。
結論
難治性の不随意運動を呈するトゥレット症候群に対する脳深部刺激療法の効果と認知・情動機能への安全性を評価するための、二重盲検多施設臨床研究プロトコルを作成した。本研究により重篤な希少疾患に対する治療技術がわが国に早期に導入され、その結果、多くの難治性トゥレット症候群患者が悲惨な生活から解放され国民の保健・医療・福祉向上が得られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200918032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児期にチック症状(運動チック・音声チック)で発症するトゥレット症候群(TS)は、希に成人期に激しく奇異な不随意運動を呈し社会生活に著しい障害をきたす。最近、脳深部刺激(DBS)のトゥレット症候群の重度の不随意運動に対する有効例が欧米で報告されており、本治療法の我が国への早期導入が求められている。本研究により、我が国におけるTSの医療ニーズの調査、及びDBSの TSの不随意運動に対する効果と認知・情動機能への安全性を評価するための、二重盲検多施設共同臨床研究プロトコルが作成された。
臨床的観点からの成果
トゥレット症候群の有病率は、文献上5-299/10,000と報告に幅があるが中央値は 50/10,000 であり、10―12 歳でチック症状出現のピークを迎え多くは成人前期までは改善するが、10―20%の患者は成人期に至ってもチックの残存あるいは悪化がみられるとされる。従って、青年期以降に中等度以上のチック症を呈する TS 症例の有病率は 5~10/10,000 と推定され、我が国でDBS 手術の対象となる不随意運動症状が原因で社会生活に支障を来たしている重症例は数百~数千人と予想された。
ガイドライン等の開発
DBSは、わが国ではパーキンソン病等の不随意運症に対し既に広く行われている治療法で、脳に永続的損傷を加えることなく無効の場合や症状治癒後に治療を中止することもでき、難治性のトゥレット症候群に罹患した若年者に対する治療として倫理的に許容し易い。また患者及び患者家族会からの早期適用の強い要望もあり、本研究により作成された、TS不随意運動に対するDBSの効果と安全性を評価するための二重盲検多施設共同臨床研究プロトコルを用い、我が国への早期導入を図ることが求められる。
その他行政的観点からの成果
我が国のトゥレット症候群患者数は6万人、難治性患者は6000人、そのうち本治療法が適応となる不随意運 動が原因で悲惨な日常生活を強いられている重症患者は1,000人以下と推定され、この希少だが重度な疾患に対し有効な治療技術が導入される社会的意義は大きい(採算性を理由に企業による臨床治験は期待できないため)。本研究により、不随意運動症状がもとで知能や人格面で障害がないにもかかわらず就学・就労の機会を奪われている若者の社会参加と経済的自立が達成されることが期待される。
その他のインパクト
トゥレット症候群の最新医療とトゥレット症候群患者の現状に関する市民公開シンポジウムを開催した。患者、患者家族、患者会(日本トゥレット協会)、保健所、及び地域の診療施設より参加者が得られ、疾患の理解、最新の治療法についての知識が広まった。この機会を利用し、全国のトゥレット診療施設及びトゥレット研究組織の名簿を作成しシンポジウムの講演内容とともに参加者及び資料希望者宛に郵送することで、トゥレット症候群の理解と医療に関する知識の普及に貢献した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-