睡眠薬・抗不安薬の処方実態調査ならびに共同意思決定による適正使用・出口戦略のための研修プログラムの開発と効果検証研究

文献情報

文献番号
202218024A
報告書区分
総括
研究課題名
睡眠薬・抗不安薬の処方実態調査ならびに共同意思決定による適正使用・出口戦略のための研修プログラムの開発と効果検証研究
課題番号
21GC1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
高江洲 義和(琉球大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 栄司(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 家 研也(聖マリアンナ医科大学 総合診療内科)
  • 渡邊 衡一郎(慶應義塾大学 医学部 精神神経科学教室)
  • 坪井 貴嗣(杏林大学 医学部精神神経科学教室)
  • 青木 裕見(聖路加国際大学 大学大学院看護学研究科 精神看護学)
  • 稲田 健(北里大学 医学部 精神科学)
  • 三島 和夫(国立大学法人秋田大学 大学院医学系研究科医学専攻 病態制御医学系 精神科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究事業においては、これまで具体的な出口戦略の実践のために全国の医療者・当事者双方から睡眠薬・抗不安薬の減薬・継続の是非や、減薬・継続を判断する基準や具体的な方法について調査を行った。それに並行して睡眠薬・抗不安薬の減薬に向けたエキスパートコンセンサスを作成し、精神科医のみならずプライマリ・ケア医でも実施可能な実践的なwebプログラムを開発についても開発を行い、その効果検証を行った。これらの成果を元に、睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略の普及・実装化に資することを本研究の目的とした。
研究方法
 日本医療データセンターより抽出条件を指定し、2005 年 4 月~2021 年 3 月に健康保険組合に加入していた加入者(勤労者及びその家族)の診療報酬情報を抽出した。睡眠薬が初めて処方されてから中止されるまでの期間(連続処方期間)を最大 12 ヶ月まで調査した。2012 年度の診療報酬改定は先行研究で睡眠薬の多剤併用に対する効果は示されなかったことから 2014 年と 2018 年の診療報酬改訂の睡眠薬の長期処方に対する効果を検証することとした。診療報酬改訂の時期に基づき、3つの期間を設定し(期間 1:2012 年 4 月~2013 年3 月、期間 2:2016 年 4 月~2017 年 3 月、期間 3:2018 年 4 月~2019 年 3 月)、診療報酬改定が睡眠薬の短期処方を有意に増加させたかを検討した。
 令和 4 年 12 月 4 日、日本プライマリ・ケア連合学会の学会員を中心としたプライマリ・ケア医を対象に、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬についての半日(4 時間程度)の web 講習会を実施した。資材は、過去に厚生労働省科学研究事業(9GC1201)で作成した「睡眠薬・抗不安薬の出口戦略に向けた SDM」の補助資材(Decision Aid)を参考に、研究分担者が過去に実施した対面での講習会の資材を活用した。なお参加者は参加前後の理解度テスト、及び講習会の感想をアンケートにて回答を得た。
結果と考察
 診療報酬改定の効果研究の結果、睡眠薬の適正使用を目的とした計 4 回にわたる診療報酬改定の睡眠薬長期処方に対する効果を調査したが、診療報酬改定の効果を示すことはできなかった。質問紙を用いた睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略に向けた意識調査では、プライマリ・ケア医 251 名、精神科医543 名、薬剤師 3021 名、当事者 104 名より回答を得た。本調査結果から、プライマリ・ケアにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用に向けて非薬物的介入を含む出口戦略への教育・普及、そして補助資材の提供は有効な手段であることが示唆された。精神科医の調査結果からは、共同意思決定において、患者・医師・薬剤師が連携して遂行していくことが、睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止実現に重要であることが示唆され、共同意思決定のための補助資材の作成も重要な課題であることが示された。薬剤師に対する調査では、薬剤師は睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止に高い関心を持っているものの、医療者間でのコミュニケーションの課題があり、これを改善するための資材を作成することが求められていた。また、当事者の対する調査結果から、多くの当事者が症状改善後早期に減薬を開始することを望んでいるにも関わらず、減薬に関する適切な情報を十分には持ち合わせていないことが示唆された。
 これらの結果を基に、医療者に対して睡眠薬・抗不安薬の適正使用と出口戦略に向けたエキスパートコンセンサスを作成して実践的な指針を示した。また、プライマリ・ケア医を対象として、睡眠薬・抗不安薬の適正使用と出口戦略を実践するための web 講習会を開催した。これまで本邦において共同意思決定を用いたベンゾジアゼピン受容体作動薬の減量 web 講習プログラムは存在しておらず、今回実施した、プライマリ・ケア医対象の web 研修プログラムは、アンケート結果からもそれなりに意義あるものになったと考える。今回のプライマリ・ケア医からの意見やトライアルを行って得られた問題点などを検証し、より汎化できるようにしていくことが望ましい。
結論
 本調査結果から、医療者・当事者ともにベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬・中止を望んでいるにも関わらず、減薬可能な症状や病態や、減薬の適切な時期、そして具体的な減薬法に関する適切な知識がないことや医療者間、医療者と当事者間での十分な話し合いができていないことにより出口戦略の実装化がなされていない現状が明らかとなった。本研究班で作成したエキスパートコンセンサスの結果や web 講習会の効果が、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用・出口戦略の普及と実装化に繋がっていくことに期待したい。

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218024B
報告書区分
総合
研究課題名
睡眠薬・抗不安薬の処方実態調査ならびに共同意思決定による適正使用・出口戦略のための研修プログラムの開発と効果検証研究
課題番号
21GC1016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
高江洲 義和(琉球大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本調査では、具体的な出口戦略の実践のために全国の医療者・当事者双方から睡眠薬・抗不安薬の減薬・継続の是非や、減薬・継続を判断する基準や具体的な方法について調査を行った。並行して日本睡眠学会、日本不安症学会、日本プライマリ・ケア連合学会の専門医を対象に睡眠薬・抗不安薬の減薬に向けたエキスパートコンセンサスを作成した。精神科医のみならずプライマリ・ケア医でも実施可能な実践的な web プログラムを開発についても開発を行い、その効果検証を行った。これらの成果を元に、睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略の普及・実装化に資することを本研究の目的とした。
研究方法
 日本医療データセンターより抽出条件を指定し、2005 年 4 月~2021 年 3 月に健康保険組合に加入していた加入者(勤労者及びその家族)の診療報酬情報を抽出した。睡眠薬が初めて処方されてから中止されるまでの期間(連続処方期間)を最大 12 ヶ月まで調査した。2012 年度の診療報酬改定は先行研究で睡眠薬の多剤併用に対する効果は示されなかったことから 2014 年と 2018 年の診療報酬改訂の睡眠薬の長期処方に対する効果を検証することとした。診療報酬改訂の時期に基づき、3つの期間を設定し(期間 1:2012 年 4 月~2013 年3 月、期間 2:2016 年 4 月~2017 年 3 月、期間 3:2018 年 4 月~2019 年 3 月)、診療報酬改定が睡眠薬の短期処方を有意に増加させたかを検討した。
 さらに令和 4 年 12 月 4 日、日本プライマリ・ケア連合学会の学会員を中心としたプライマリ・ケア医を対象に、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬についての半日(4 時間程度)の web 講習会を実施した。資材は、過去に厚生労働省科学研究事業(9GC1201)で作成した「睡眠薬・抗不安薬の出口戦略に向けた SDM」の補助資材(Decision Aid)を参考に、研究分担者が過去に実施した対面での講習会の資材を活用した。なお参加者は参加前後の理解度テスト、及び講習会の感想をアンケートにて回答を得た。
結果と考察
 本研究では、睡眠薬の適正使用を目的とした計4 回にわたる診療報酬改定の睡眠薬長期処方に対する効果を調査したが、診療報酬改定の効果を示すことはできなかった。質問紙を用いた睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略に向けた意識調査では、プライマリ・ケア医 251 名、精神科医543 名、薬剤師 3021 名、当事者 104 名より回答を得た。本調査結果から、プライマリ・ケアにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用に向けて非薬物的介入を含む出口戦略への教育・普及、そして補助資材の提供は有効な手段であることが示唆された。精神科医の調査結果からは、共同意思決定において、患者・医師・薬剤師が連携して遂行していくことが、睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止実現に重要であることが示唆され、共同意思決定のための補助資材の作成も重要な課題であることが示された。薬剤師に対する調査では、薬剤師は睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止に高い関心を持っているものの、医療者間でのコミュニケーションの課題があり、これを改善するための資材を作成することが求められていた。また、当事者の対する調査結果から、多くの当事者が症状改善後早期に減薬を開始することを望んでいるにも関わらず、減薬に関する適切な情報を十分には持ち合わせていないことが示唆された。
 これらの結果を基に、医療者に対して睡眠薬・抗不安薬の適正使用と出口戦略に向けたエキスパートコンセンサスを作成して実践的な指針を示した。また、プライマリ・ケア医を対象として、睡眠薬・抗不安薬の適正使用と出口戦略を実践するための web 講習会を開催した。これまで本邦において共同意思決定を用いたベンゾジアゼピン受容体作動薬の減量 web 講習プログラムは存在しておらず、今回実施した、プライマリ・ケア医対象の web 研修プログラムは、アンケート結果からもそれなりに意義あるものにな
ったと考えられる。今回のプライマリ・ケア医からの意見やトライアルを行って得られた問題点などを検証し、より汎化できるようにしていくことが望ましい。
結論
 医療者・当事者ともにベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬・中止を望んでいるにも関わらず、減薬可能な症状や病態や、減薬の適切な時期、そして具体的な減薬法に関する適切な知識がないことや医療者間、医療者と当事者間での十分な話し合いができていないことにより出口戦略の実装化がなされていない現状が明らかとなった。本研究班で作成したエキスパートコンセンサスの結果や web 講習会の効果が、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用・出口戦略の普及と実装化に繋がっていくことに期待したい。

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218024C

収支報告書

文献番号
202218024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,186,000円
(2)補助金確定額
8,186,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,500,000円
人件費・謝金 2,000,000円
旅費 491,000円
その他 3,000,000円
間接経費 1,195,000円
合計 8,186,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-27
更新日
-