科学的根拠に基づく胎児治療法の臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200918003A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づく胎児治療法の臨床応用に関する研究
課題番号
H19-臨床試験・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
左合 治彦(国立成育医療センター 周産期診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田智明(国立循環器病センター周産期科)
  • 伊藤裕司(国立成育医療センター周産期診療部新生児科)
  • 岡明(杏林大学医学部小児科)
  • 村越毅(聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター)
  • 中田雅彦(山口大学医学部附属病院周産母子センター)
  • 室月淳(東北大学医学部附属病院産婦人科)
  • 北野良博(国立成育医療センター第二専門診療部外科)
  • 前野泰樹(久留米大学小児科総合周産期母子医療センター)
  • 奥山宏臣(兵庫医科大学小児外科)
  • 高橋雄一郎(国立病院機構長良医療センター産科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,836,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療法として期待されている4つの胎児疾患 [双胎間輸血症候群(TTTS)、胎児胸水、胎児頻脈性不整脈、先天性横隔膜ヘルニア] に対する胎児治療法の有効性・安全性を評価して、胎児治療法を臨床的に確立することを目的とする。
研究方法
1)TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(レーザー手術)は、後ろ向きコホート研究(有害事象、リスク因子について解析)と双胎間羊水不均衡症への手術適応拡大に関する研究(臨床試験のプロトコール作成)を行った。2)胎児胸水に対する胸腔―羊水腔シャント術は、臨床試験の症例登録を継続した。3)胎児頻脈性不整脈に対する抗不整脈剤投与の臨床試験のプロトコールを作成した。また徐脈性不整脈の全国調査を行った4)先天性横隔膜ヘルニアは、出生直後から理想的な管理ができた先天性横隔膜ヘルニア117例の予後に関する横断的調査研究の詳細解析を行った。
結果と考察
1) TTTSに対するレーザー手術:レーザー手術の有害事象についてまとめ、胎児治療における有害事象の共通用語を作成した。リスク因子について検討し、TTTSの定義に関する見解をまとめた。双胎間羊水不均衡に対するレーザー手術の臨床試験の準備が整った。2)胎児胸水に対する胸腔―羊水腔シャント術:有効性と安全性を確認する臨床試験の登録は順調で、予定期間内に登録を完了した。3)胎児頻脈性不整脈に対する薬剤投与:多施設共同単群介入試験のプロトコールが完成し、高度医療に申請し、臨床試験の準備は整った。胎児徐脈性不整脈の全国調査の中間報告をまとめた。4)先天性横隔膜ヘルニア:出生直後から理想的な管理ができた先天性横隔膜ヘルニアの90日生存は79%と良好であったが合併症なき退院は63%であった。肝脱出と胃泡の位置が予後判定に有用であることを明らかにした。
結論
レーザー手術の安全性について確認され、双胎間羊水不均衡に対するレーザー手術の臨床試験の準備が整い、レーザー手術のさらなる発展が期待される。重症胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術は、バスケットカテーテルを用いた臨床試験の成果が得られる。胎児頻脈性不整脈に対する薬剤投与は、臨床試験の準備が整い、薬剤による胎児治療のはじめての臨床試験が開始される。先天性横隔膜ヘルニアは、治療成績、予後予測因子が明らかになり、胎児治療の基盤ができた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200918003B
報告書区分
総合
研究課題名
科学的根拠に基づく胎児治療法の臨床応用に関する研究
課題番号
H19-臨床試験・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
左合 治彦(国立成育医療センター 周産期診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 智明(国立循環器病センター周産期科)
  • 伊藤 裕司(国立成育医療センター周産期診療部新生児科)
  • 岡 明(杏林大学医学部小児科)
  • 村越 毅(聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター)
  • 中田 雅彦(山口大学医学部附属病院周産母子センター)
  • 室月 淳(東北大学医学部附属病院産婦人科)
  • 高橋雄一郎(国立病院機構長良医療センター産科)
  • 北野 良博(国立成育医療センター第二専門診療部外科)
  • 前野 泰樹(久留米大学小児科総合周産期母子医療センター)
  • 奥山 宏臣(兵庫医科大学小児外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療法として期待されている4つの胎児疾患 [双胎間輸血症候群(TTTS)、胎児胸水、胎児頻脈性不整脈、先天性横隔膜ヘルニア] に対する胎児治療法の有効性・安全性を評価して、胎児治療法を臨床的に確立することを目的とする。
研究方法
1)TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(レーザー手術)は、レーザー手術を施行し分娩に至った181例を対象とした調査研究と双胎間羊水不均衡への手術適応拡大に関する研究を行った。2)胎児胸水に対する胸腔―羊水腔シャント術は、多施設共同臨床試験を高度医療において開始・継続した。3)胎児頻脈性不整脈は、治療実態をアンケート調査・解析し、母体に抗不整脈剤を投与する胎児治療の臨床試験の研究を行った。4)先天性横隔膜ヘルニアは、出生前診断された117例の予後に関する横断的調査研究を実施し、解析を行った。
結果と考察
1) TTTSに対するレーザー手術:予後調査からレーザー手術の有効性と安全性が確認され(少なくとも1児生存率90%以上)、TTTSの第一選択治療法であることが示された。胎児治療における有害事象の共通用語を作成した。適応拡大として双胎間羊水不均衡に対するレーザー手術の臨床試験のプロトコールを作成した。2)胎児胸水に対する胸腔―羊水腔シャント術:有効性と安全性を確認する臨床試験の登録(20例)を予定期間内に完了した。3)胎児頻脈性不整脈に対する薬剤投与:日本の胎児治療の現状を把握し、多施設共同介入試験のプロトコールを作成・確定し、高度医療に申請した。4)先天性横隔膜ヘルニア:出生直後から理想的な管理ができた例の90日生存は79%と良好であったが合併症なき退院は63%であった。肝脱出と胃泡の位置が予後判定に有用であることを明らかにした。
結論
レーザー手術は、TTTSに対する第一選択治療法として臨床的に確立された。また適応拡大し、双胎間羊水不均衡に対する臨床試験の準備が整い、レーザー手術の発展が期待される。重症胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術は、バスケットカテーテルを用いた臨床試験の成果が得られる。胎児頻脈性不整脈に対する薬剤投与は、臨床試験の準備が整い、薬剤による胎児治療の初めての臨床試験が開始される。先天性横隔膜ヘルニアは、治療成績、予後因子が明らかになり、胎児治療の基盤ができた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200918003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
この研究は、日本において胎児治療に関する初めての体系的な研究である。胎児治療に関する臨床試験は世界でも未だ数例しか行われていないが、この研究では「重症胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術」の臨床試験を実施完了し、また双胎間羊水不均衝に対するレーザー手術や胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的薬剤投与の臨床試験の準備を完了した。これらの臨床試験は世界でも初めての試みであり、胎児治療に関する科学的根拠を日本から世界へ発信する基盤が整備された。
臨床的観点からの成果
双胎間輸血症候群に対するレーザー手術の後ろ向きコホート研究から、レーザー手術治療成績は良好であり、レーザー手術が双胎間輸血症候群に対する第一選択治療法であることを示した。また胎児頻脈性不整脈に対する抗不整脈剤投与の日本の実態を明らかにするとともに、出生直後から理想的な管理ができた先天性横隔膜ヘルニアの治療成績、予後予測因子を明らかにした。これらの研究は胎児治療に関連する臨床に大きく貢献する。
ガイドライン等の開発
双胎間輸血症候群に対してレーザー手術が第一選択治療法であることを示した。また双胎間輸血症候群の定義に関する見解をまとめ、広義の双胎間輸血症候群、双胎間羊水不均衝、狭義の双胎間輸血症候群について定義した。
その他行政的観点からの成果
「重症胎児胸水に対する胸腔-羊水腔シャント術」の臨床試験は、未承認のバスケットカテーテルを用いているための臨床確認試験として「高度医療」において行い、高度医療制度を推進した。胎児治療に関する研究の推進は、少子化日本において安心して子どもを産み育てる環境の整備の一つとして意義が大きい。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
72件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
9件
胎児治療に関する講演会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishii K, Murakoshi T, Hayashi S et al.
Anemia in a recipient twin unrelated to twin anemia-polycythemia sequence subsequent to sequential selective laser photocoagulation of communicating vessels for twin-twin transfusion syndrome.
Prenatal Diagnosis , 28 , 262-263  (2008)
原著論文2
左合治彦
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術
日本周産期・新生児誌 , 43 (4) , 995-998  (2007)
原著論文3
Murakoshi T, Ishii K, Nakata M et al.
Validation of Quintero stage III sub-classification for twin-twin transfusion syndrome based on visibility of donor bladder: characteristic differences in pathophysiology and prognosis.
Ultrasound Obstet Gynecol , 32 , 813-818  (2008)
原著論文4
Ishii K, Murakoshi T, Hayashi S et al.
Anemia in a recipient twin unrelated to twin anemia-polycythemia sequence subsequent to sequential selective laser photocoagulation of communicating vessels for twin-twin transfusion syndrome.
Prenatal Diagnosis , 28 , 262-263  (2008)
原著論文5
Ishii K, Murakoshi T, Matsushita M et al.
Transitory increase in middle cerebral artery peak systolic velocity of recipient twins after fetoscopic laser photocoagulation for twin-twin transfusion syndrome
Fetal Diagnosis Therapy , 24 , 470-473  (2008)
原著論文6
Nakata M, Sumie M, Murata S et al.
Fetoscopic Laser Photocoagulation of Placental Communicating Vessels for Twin Reversed-Arterial Perfusion Sequence
J Obstet Gynaecol Res , 34 (4) , 649-652  (2008)
原著論文7
左合治彦
胎児治療の適応と限界
日本周産期・新生児誌 , 44 (4) , 916-919  (2008)
原著論文8
Nakata M, Murakoshi T, Sago H et al.
Modified sequential laser photocoagulation of placental communicating vessels for twin-twin transfusion syndrome to prevent fetal demise of the donor twin
J Obstet Gynaecol Res , 35 (4) , 640-647  (2009)
原著論文9
Ishii K, Murakoshi M, Takahashi Y et al.
Perinatal outcome of monochorionic twins with selective intrauterine growth restriction and different types of umbilical artery Doppler under expectant management
Fetal Diagn Ther , 26 , 157-161  (2009)
原著論文10
左合治彦,林聡,加藤有美 他
双胎間輸血症候群に対するレーザー手術の治療効果
日本周産期・新生児誌 , 45 (4) , 1226-1228  (2009)
原著論文11
左合治彦,林聡,穴見愛 他
胎児治療の倫理と胎児治療法の臨床的評価
日本周産期・新生児誌 , 45 (4) , 1239-1240  (2009)
原著論文12
三浦裕美子,左合治彦,高橋宏典 他
胎児胸水に対する胎児治療の検討
日本周産期・新生児誌 , 45 (4) , 1311-1315  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-