プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211086A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究
課題番号
22FC2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山田 正仁(国家公務員共済組合連合会 九段坂病院)
研究分担者(所属機関)
  • 水澤 英洋(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
  • 高尾 昌樹(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院臨床検査部)
  • 齊藤 延人(東京大学医学部附属病院)
  • 北本 哲之(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 阿江 竜介(自治医科大学医学部)
  • 金谷 泰宏(東海大学医学部基盤診療学系臨床薬理学)
  • 原田 雅史(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 佐藤 克也(長崎大学 医歯学総合研究科)
  • 村山 繁雄(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 太組 一朗(聖マリアンナ医科大学 医学部脳神経外科学、てんかんセンター)
  • 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究院)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 小野寺 理(国立大学法人新潟大学 脳研究所脳神経内科学分野)
  • 三條 伸夫(東京医科歯科大学医学部付属病院)
  • 村井 弘之(国際医療福祉大学医学部神経内科学)
  • 塚本 忠(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
  • 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 濱口 毅(金沢医科大学 脳神経内科学)
  • 道勇 学(愛知医科大学医学部 神経内科学)
  • 望月 秀樹(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 山下 徹(岡山大学 脳神経内科学)
  • 磯部 紀子(黒木 紀子)(九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
59,650,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 松下拓也(令和4年4月1日~11月30日) →磯部紀子(令和4年12月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
稀少かつ致死性感染症であるプリオン病の発症・感染機序の解明・克服をめざし、①全例サーベイランスによる疫学的研究を通じて、わが国における発生状況や新たな医原性プリオン病の出現を監視し、②遺伝子・髄液検査の普及、画像診断の改良、患者・家族への心理カウンセリング等の支援を進め、③プリオン対応の滅菌法も含めた感染予防ガイドラインの改訂を進め、④手術後にプリオン病と判明した事例を調査して、二次感染対策をとるとともにリスク保有可能性者のフォローアップを行い、⑤プリオン病の臨床研究コンソーシアムJACOPと協力してプリオン病の自然歴を解明し、開発が進む治療薬・予防薬の全国規模の治験研究を支援する。⑥早期診断に向けて、海外の新しい孤発性プリオン病の診断基準について検討する。
研究方法
全国を10地区に分けて地区サーベイランス委員を配置し、脳神経外科、各種検査(遺伝子、髄液、画像、脳波、病理)とカウンセリングの専門委員を加えてサーベイランス委員会を組織し、各都道府県のプリオン病担当専門医と協力して全例調査をめざす。プリオン蛋白質遺伝子検索と病理検索、画像読影、髄液14-3-3蛋白質・総タウ蛋白質の測定、RT-QuIC法などの診断支援を提供し、検査の感度・特異度、診断精度の向上を図る。インシデント委員会を組織し、疑い事例を評価し該当事例に対する対策とリスク保有可能性者のフォローを支援する。
結果と考察
サーベイランス委員会は、平成11年4月の発足より令和5年2月までに6936例を検討し4714例をプリオン病と認定し、本邦におけるプリオン病の実態を明らかにした。その内訳は、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病 (Creutzfeldt-Jakob disease: CJD) 3578例(76%)、1例の変異型CJD、硬膜移植後CJD 93例 (2%)、遺伝性CJD 842例 (18%)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病 (GSS)174例 (4%)、致死性家族性不眠症8例であった。令和4年度プリオン蛋白質遺伝子解析を行った368例中104例に変異を認め、V180I変異が最も多かった。
MRIデータが揃っている3264例の脳波の解析では、PSD陽性群ではPSD陰性群よりも基底核のMRI高信号率が高い、すなわち大脳皮質と基底核の両方の高信号率が高いことが示された。遺伝性CJDでは基底核高信号の陽性率もPSD陽性率も同じ傾向(E200K>M232R>V180I)を示した。髄液検査とPSDの相関ではRT-QuIC陽性率がPSD陽性率と明確に相関することを報告した。
第2世代QuIC法により4153検体の髄液検査を行った結果、プリオン病では感度74.3%, 特異度100%であった。
平成29年度に運用を開始した自然歴調査とサーベイランス研究の一体化を令和4年度も推進し、委員会での討議をすべてPCとタブレット端末によるWeb会議で行うことができた。未回収例の解消に努め、着実な進捗が見られた。新規インシデント事例は2件であった。いずれも脳生検術を行った事案であった。令和4年末までの全20件のうち13事例で10年間のフォローアップ期間が終了し、二次感染事例は確認されていない。
当研究で得られた最新情報は、学会や論文での発表だけでなく直ちにプリオン病のサーベイランスと感染対策に関する全国担当者会議あるいはホームページなどを通じて周知され、適切な診断法、治療・介護法、感染予防対策の普及に大きく貢献している。
結論
プリオン病サーベイランス事業の継続により、わが国におけるプリオン病の疫学的特徴を明らかにした。診断に必要な画像・脳波・遺伝子・髄液バイオマーカーの諸検査の重要性を明らかにし、インシデント事例の発生に対応し二次感染予防に努め、診療と感染予防の2つのガイドラインの普及啓発を進めた。自然歴調査とサーベイランス調査の一体化とともに、調査データのデジタル化を推進した。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211086Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
76,000,000円
(2)補助金確定額
62,151,483円
差引額 [(1)-(2)]
13,848,517円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,541,495円
人件費・謝金 19,701,106円
旅費 1,947,282円
その他 9,611,600円
間接経費 16,350,000円
合計 62,151,483円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
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