中性脂肪蓄積心筋血管症の医療水準と患者QOLの向上に資する研究

文献情報

文献番号
202211076A
報告書区分
総括
研究課題名
中性脂肪蓄積心筋血管症の医療水準と患者QOLの向上に資する研究
課題番号
22FC1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
平野 賢一(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 天野 哲也(学校法人愛知医科大学 医学部 )
  • 安斉 俊久(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究院 )
  • 池田 善彦(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病理部)
  • 磯 博康(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター)
  • 井手 友美(国立大学法人九州大学 大学病院)
  • 伊藤 智範(学校法人岩手医科大学 大学院医学研究科)
  • 稲葉 亨(京都府公立大学法人京都府立医科大学 医学研究科 )
  • 奥村 貴裕(国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院)
  • 梶波 康二(学校法人金沢医科大学 医学部)
  • 神田 貴弘(日本赤十字社浜松赤十字病院 循環器内科)
  • 小澤 純二(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 小林 邦久(学校法人福岡大学 筑紫病院)
  • 坂田 泰彦(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 臨床研究開発部)
  • 杉村 宏一郎(学校法人国際医療福祉大学 医学部)
  • 長澤 康行(学校法人兵庫医科大学 医学部)
  • 中嶋 憲一(国立大学法人金沢大学 先進予防医学研究科)
  • 後岡 広太郎(国立大学法人東北大学 大学病院)
  • 羽尾 裕之(学校法人日本大学 医学部)
  • 東 将浩(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 放射線診断科)
  • 藤本 進一郎(学校法人順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 松本 直也(学校法人日本大学 医学部)
  • 宮内 秀行(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院 )
  • 矢崎 義行(東邦大学 医学部)
  • 山本 一博(国立大学法人鳥取大学 医学部)
  • 吉田 博(学校法人慈恵大学東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中性脂肪蓄積心筋血管症 (TGCV)は、研究代表者が我が国の重症心不全患者より発見した新規疾患概念である。本研究では、全国規模で構築した診療、研究ネットワークを患者会、関連学会とともに発展させる。AMED難治性疾患実用化研究事業エビデンス創出TGCVレジストリ研究班と連携、科学的根拠を集積、患者の実態把握を行い関係学会から承認された診断基準・重症度分類を作成、指定難病化審議、BMIPP後期像加算の保険収載に必要となる情報収集、本症の医療水準、患者QOLの向上に資する研究を展開する。各年度の主たる目標は、初年度が指定難病化審議に必要となる情報収集、診断基準・重症度分類の関連学会での承認に向けて議論、連携強化、次年度にはTGCVレジストリ等で得るエビデンスを基に診療ガイドラインを作成する。
研究方法
令和2年度に本事業で策定したTGCV診断基準2020を用いて疾患啓発、実態調査を行った。また、日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化研究事業TGCVが構築した本症のレジストリを用いたレトロスペクティブ解析を行った。
結果と考察
結果
1.TGCV診断基準2020のfeasibilityについて
全国67施設で本症が診断されていた。累積診断数は640例、内93例が既に死亡していた。前年度調査の50施設から診断可能施設は大きく増加した。

2. 特発性TGCVの予後に関して
日本医療研究開発機構 難治性疾患政策研究事業 TGCV研究班が本症のレジストリを構築した (ClinTrials Gov. Identifier: NCT05345223)。2021年12月までに診断されたTGCV症例を登録し、レトロスペクティブにその予後について分析した。Tricaprin/Trisdecanoinを用いた栄養療法、食事療法を実施している患者は除外した。年齢、性別、診断日、合併症、非致死性心血管イベント(冠動脈血行再建、脳卒中、心不全入院、除細動器の適切作動)、死亡日及び死因等を登録した。生存率はカプランマイヤー法を用いて算出した。合計183例の特発性TGCV患者が登録された。診断時平均年齢は64.8才。冠動脈疾患、心不全、心室性不整脈をそれぞれ74.9%、71%、26%に認めた。糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病の併存率は、それぞれ56%、68%、66%、57%であった。平均観察期間は2.9年であった。診断後5年までに39例が死亡(男性31例、女性8例)した。死亡時平均年齢は71才であった。3年及び5年生存率は、それぞれ80.1%、71.8%であった。死亡した39例中、27例が心血管死、非心血管死が4例、残りが不明であった。非致死性心血管イベントが伴わない3年及び5年生存率はそれぞれ60.9%、54%であった。非致死性心血管イベントの内訳は、冠動脈血行再建が21例、脳卒中が6例、心不全入院が32例、除細動器の適切作動が5例であった。

3.原発性TGCV患者の予後について
原発性TGCV患者は、これまで11例が同定されている。日本人10例、残りの1例は南アジア起源と報告されている。6例が既に死亡、3例が心臓移植を受けている。ATGL変異の内訳は、8種の変異が8家系に認められている。エキソン2からイントロン9に及ぶLarge deletionが1兄弟、1種のPremature stop codon、3種のFrame shift 変異、1種のスプライス異常、2種のミスセンス変異である。いずれの変異もATGL蛋白の機能を障害する病原性変異であることが分子・細胞生物学的実験により明らかになっている。しかしながら、欧米から報告のある極希少類縁疾患であるNLSD-myopathyでも原発性TGCVと同一変異の存在が報告されており、genotype-phenotype correlationは解明されておらず、原発性TGCVの発症機構は未だ不明である。

4.疾患啓発ホームページ公開
https://tgcv.org/において公開している。

5.疾患啓発シンポジウム開催
TGCV患者会、日本医療研究開発機構TGCV研究班、一般社団法人 中性脂肪学会と連携してTGCV克服シンポジウムを、2022年10月15日、開催した(福岡大学筑紫病院とオンラインのハイブリッド開催)。

考察
TGCVの予後についてオールジャパンでのデータが明らかになった。5年生存率は71.8%であった。この予後は代表的循環器指定難病である拡張型心筋症と同等であり、本症の可能な限り早期の指定難病化、治療薬の開発が必要であると考える。

結論
TGCVは、原因不明、治療法未確立、長期の療養を要する希少心臓難病である。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211076Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 497,838円
人件費・謝金 446,296円
旅費 394,780円
その他 1,361,086円
間接経費 800,000円
合計 3,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-02-05
更新日
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