高齢者の寝たきり予防に役立つナノ表面構築型人工股関節の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200913004A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の寝たきり予防に役立つナノ表面構築型人工股関節の開発に関する研究
課題番号
H20-活動・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高取 吉雄(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 耕三(東京大学 医学部附属病院)
  • 川口 浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 石原 一彦(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 茂呂 徹(東京大学 医学部附属病院)
  • 苅田 達郎(東京大学 医学部附属病院)
  • 伊藤 英也(東京大学 医学部附属病院)
  • 金野 智浩(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 塙 隆夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
  • 岩崎 泰彦(関西大学 化学生命工学部)
  • 橋本 雅美(ファインセラミックスセンター)
  • 山脇 昇(日本メディカルマテリアル)
  • 京本 政之(日本メディカルマテリアル)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(活動領域拡張医療機器開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
41,335,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、生体適合性材料・MPCポリマーのナノ表面処理技術を応用し、安定性と耐摩耗性に優れ、高齢者の寝たきり予防に役立つ革新的なナノ表面構築型人工股関節を開発することである。
研究方法
MPC処理の至適条件の検索では、MPCによるナノ表面処理時の紫外線照射時間および紫外線強度について至適条件を検索した。ポリエチレン(PE)厚がMPC処理効果に与える影響の検討では、昨年度確立した評価系を用い、MPC処理したポリエチレン板の疲労特性の評価を行った。摩耗抑制効果の検討では、摩擦トルクの測定、ライナーの重量変化による摩耗量の測定、ライナー表面の解析、潤滑液中の摩耗粉の回収及び解析による摩耗動態の分析等を行った。関節摺動面の安定性の検討では、抗脱臼機構および関節可動域を検討するため、圧縮試験機を用いた引き抜き試験を行った。
結果と考察
MPC処理の至適条件の検索では、架橋ポリエチレン表面のMPCポリマー層は、紫外線を用いた光開始グラフト重合法により制御できるが、この方法は基材となるポリエチレンの材料特性に影響を与えないことが明らかとなった。ポリエチレン厚がMPC処理効果に与える影響の検討では、衝撃-摩耗負荷がかかる環境においても、MPC処理による耐摩耗特性の向上は有効であることが明らかになった。ポリエチレンが厚いほうが良好な耐衝撃-摩耗特性を示したものの、薄いポリエチレンにおいても重篤な欠陥は認められず、大径骨頭と組み合わせられる薄いライナーの適用の可能性が示唆された。摩耗抑制効果の検討では、骨頭径を大きくしても、顕著な摩耗抑制効果が期待できることが明らかとなった。来年度は骨頭径や骨頭種の条件設定を変え、より検討を進める予定である。関節摺動面の安定性の検討では、摺動面の安定性のための関節可動域の増大には、骨頭部分の大径化が有効であることが確認された。また、関節摺動面の吸着性を向上するために、MPC処理は有効である可能性が強く示唆された。来年度はこのモデルを用いて関節摺動面の安定性・吸着性を向上する新規インプラントの形状を検討する予定である。
結論
以上の研究成果は、高齢者の寝たきり予防に役立つナノ表面構築型人工股関節の開発を推進しうるものであり、革新的な人工股関節の臨床応用が期待できる内容であった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-