難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211015A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1023
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田中 篤(帝京大学 医学部内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿毛 政義(久留米大学医学部)
  • 仁尾 正記(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 消化器外科)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 持田 智(埼玉医科大学 医学部 消化器内科・肝臓内科)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部)
  • 小森 敦正(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター難治性疾患研究部)
  • 原田 憲一(金沢大学医薬保健研究域医学系 人体病理学)
  • 伊佐山 浩通(順天堂大学 医学部)
  • 長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科)
  • 古市 好宏(東京女子医科大学 医学部)
  • 大藤 さとこ(大阪公立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の対象疾患は、肝・胆道の指定難病である自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、特発性門脈圧亢進症(IPH)、バッド・キアリ症候群(BCS)の5疾患、及び肝外門脈閉塞症(EHO)とフォンタン術後肝合併症(FALD)、肝内結石症、劇症肝炎(FH)を加えた9疾患である。
1:疾患レジストリ構築及びQOL調査を関連学会・患者団体と連携して定期的に行い、国内の患者動向を明らかにし、患者のアンメットニーズを把握する。
2:小児発症例が存在する疾患(AIH、PSC、EHO、FALD、FH)は小児診療施設をも対象とし、移行期を含む成人・小児を一体化した診療体制の構築を目指す。実態が明らかでないFALDは全国疫学調査を行う。
3:AIH、PBC、PSCでは各疾患のレジストリを活用し非典型例の診療ガイドラインを策定する。
4:研究成果を基に診断基準および重症度分類、診療ガイドラインを改訂し、関連学会で承認を得る。各疾患についての国内・地域内診療ネットワークを構築する。
5:研究成果を関連学会や患者団体などへ学術集会、講演会、ホームページ等で広く周知する。
6:対象疾患と新型コロナウイルス感染症との関連、及びワクチンの有効性・安全性についての調査・情報提供を行う。
研究方法
主たる施設で倫理審査を受け承認を得たのち、多施設共同研究によって多数の症例を登録して疾患レジストリを構築する。このレジストリに登録された臨床情報を研究目的に合わせて解析する。
結果と考察
・門脈血行異常症:日本門脈圧亢進症学会と連携し疾患レジストリへの症例登録を進め、48施設から136例(小児施設14施設から小児例24例)が登録。国内診療ネットワーク構築を進めている。
・PBC:既に9,919例が登録されている疾患レジストリをUMINのEDCで運用検討を進めている。登録された疾患レジストリを用いた臨床研究も多数進行している。
・PSC:AMED・難病プラットフォームとの協働で疾患レジストリを構築し、生体試料も含めた症例登録を進めており、65施設から75例(うち小児例33例)が登録された。収集した生体試料(DNA、血漿)については令和5年度から京都大学ゲノム医学センター及びAMED研究班の協力を得てゲノム解析およびプロテオーム解析を行う予定。irAE二次性硬化性胆管炎全国調査も60例以上の症例集積が終了した。
・AIH:令和5年から患者登録を開始。IgG4-AIHについては診断基準を確定し、今後日本肝臓学会の承認を得る。irAE肝障害については症例集積および病理・臨床的検討を終了し、論文化の準備中である。
・劇症肝炎:例年同様、2021年に発症した急性肝不全、LOHF、ACLFおよび小児の急性肝不全の全国調査を集計中で,2022年12月末までに解析を終了する。
・令和3年度(2年目)から研究対象疾患としたFALDは疫学調査を行って有病率や臨床像を明らかにした。令和5年以降、関連諸学会と合同で診療指針・ガイドラインを作成する。
・各疾患の診療ガイドラインは既に作成されており、今年度は改訂ないし追補を行った。
・AIH、PSC、EHO、劇症肝炎は小児期から成人へのシームレスな移行期医療を推進するため、各疾患レジストリ構築に当たり小児発症例の登録を積極的に進めている。
・AIH-PBCオーバーラップ:両分科会のレジストリから該当症例を抽出し、実態を把握して各診療ガイドラインへ治療指針を記載する。AIH-PSCオーバーラップは十分な該当症例の集積ができず、今後も症例情報の集積に努める。
・日本肝移植学会との協働により、PBC・PSCについて前向き症例登録を進めている。PBCは今年度目標登録数の100例を超える119例の登録が終了した。
以上について本研究班のホームページにて周知と共に閲覧した患者・医師からメールで質問を受付ている。
・患者会や自治体難病相談支援センター等が主催する難病講演会に講師を派遣し講演を行ってきた。今年度は令和4年10月に高知県難病相談支援センター、令和5年2月に患者会(東京肝臓友の会)主催の医療講演会へ講師を派遣した。患者会が隔月発行している会報への寄稿も継続している。
・新型コロナウイルス感染は引き続きホームページなどで情報提供に努める一方、前年度からのワクチンの安全性・有効性に関する調査の結果を解析した。計528例から調査票が得られ、副反応は一般人口とほぼ同等であり、安全性は接種後肝機能検査値の悪化が一部でみられるものの、概ね問題がなかった。有効性も、一般人口同等と考えられた。
結論
令和4年度も概ね研究目的に沿った結果が得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211015B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1023
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田中 篤(帝京大学 医学部内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿毛 政義(久留米大学医学部)
  • 仁尾 正記(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 消化器外科)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 持田 智(埼玉医科大学 医学部 消化器内科・肝臓内科)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部)
  • 小森 敦正(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター難治性疾患研究部)
  • 原田 憲一(金沢大学医薬保健研究域医学系 人体病理学)
  • 伊佐山 浩通(順天堂大学 医学部)
  • 長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科)
  • 古市 好宏(東京女子医科大学 医学部)
  • 大藤 さとこ(大阪公立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の対象疾患は、肝・胆道の指定難病である自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、特発性門脈圧亢進症(IPH)、バッド・キアリ症候群(BCS)の5疾患、および肝外門脈閉塞症(EHO)とフォンタン術後肝合併症(FALD)、肝内結石症、劇症肝炎(FH)を加えた9疾患である。令和2年~4年度の研究目的は以下の通りである。
(1)AIH・PBC・PSC・門脈血行異常症、および肝内結石症・急性肝不全(劇症肝炎)・FALDについての全国実態調査・定点モニタリングの継続および疾患レジストリの構築(PSCについてはAMED難病プラットフォームと協働してさらに生体試料の収集)
(2)従来十分に実態が明らかになっておらず疾患概念があいまいであったAIH・PBC・PSC非典型例の集積および臨床像の解明
(3)内科的治療に限界があり肝移植を施行したPBC・PSC例の集積および臨床像の解明
(4)小児発症例の多いAIH、PSC、EHO、劇症肝炎についてはスムーズな移行期医療を推進するため小児診療施設をも対象としたレジストリ構築
(5)令和元年までに作成した各疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの改訂・追補、また未作成の疾患については新規作成
(6)これらの研究結果を広く医師・一般に周知するためのホームページ作成・更新、および難病講演会への講師派遣
また、令和2年度から蔓延した新型コロナウイルス感染症と肝胆道系難病につき情報提供を行うとともに、新型コロナウイルスワクチンの同患者における安全性・有効性を検証した。
研究方法
いずれも疫学調査であり、主たる施設で倫理審査を受け承認を得たのち、多施設共同研究によって多数の症例を登録して疾患レジストリを構築する。このレジストリに登録された臨床情報をそれぞれの研究目的に合わせて解析することにより、国内の患者動向を把握するとともに、臨床上の疑問に対する解答をエビデンスとして蓄積する。新型コロナウイルスワクチンの安全性・有効性についてはアンケートによる調査を行った。
結果と考察
(1)AIH・PBC・PSC・門脈血行異常症、および肝内結石症・急性肝不全(劇症肝炎)・FALDについての全国実態調査・定点モニタリングを実施・継続し、EDCによる疾患レジストリを構築した。PSCについてはAMED難病プラットフォームと協働してレジストリを構築しており、収集した生体試料(DNA、血漿)についてはAMED研究班に依頼しゲノム解析およびプロテオーム解析を行う予定である。
(2)AIH・PBC・PSC非典型例についても症例を蓄積した。免疫チェックポイント阻害薬の普及に伴い問題となっているirAE二次性硬化性胆管炎、irAE肝障害についても症例を集積し診断・治療指針をまとめる予定である。臨床上問題となっている急性発症AIHについても症例を集積した。今後診断・治療指針を作成する。
(3)同様にPBC・PSC移植例についても前向きに症例を蓄積した。PBCについては今年度目標登録数の100例を超える119例の登録が終了した。
(4)小児発症例の多いAIH、PSC、EHO、劇症肝炎については小児診療施設をも対象としたレジストリを構築し、小児発症例の実態や移行期医療の状況を明らかにした。
(5)令和元年までに作成した各疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの改訂・追補を行った。FALDについては未作成であり今後新規に作成する。
(6)これらの研究結果を広く医師・一般に周知するためのホームページ作成・更新を行うとともに、医療従事者や一般からメールで質問を受け付け専門医が回答するという形で詳細な情報提供を行ってきた。また、各地の難病相談支援センターや患者会の主催する難病講演会へ講師を派遣した。
(6)令和2年から蔓延した新型コロナウイルス感染症についてホームページその他で情報提供を行うとともに、難治性の肝・胆道疾患に罹患している患者を対象として新型コロナウイルスに対するワクチンの安全性・有効性についての調査を行い、その安全性・有効性を確認した。
結論
令和2年度~4年度にかけて、いずれにおいても当初の研究目的・研究計画を達成することができた。これらの研究により肝胆道領域の難病及び研究対象としている疾患の診療レベルの向上、患者の予後改善、及び国の難病施策に大きく貢献することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
PSCの疾患レジストリで収集した生体試料を用いてPSC特異的抗体を発見した(現在論文投稿中)。また、FALDについても症例・臨床情報を集積し、モデルマウスの解析と合わせて病態のメカニズムが明らかになりつつある。
臨床的観点からの成果
研究成果は多数の学会発表および論文として公表され、関連学会へのインパクトは大きい。PBCに対するベザフィブラートの長期予後改善効果、急性肝不全の実態調査など、国際的に大きく注目された業績も多い。新型コロナウイルス感染症に対するホームページ上での情報提供は患者の自己決定を援助し不安軽減に貢献した(肝臓、62:10:613,2019)。
ガイドライン等の開発
研究対象としている指定難病5疾患(AIH・PBC・PSC・BCS・IPH)について令和元年までに診療ガイドラインを作成し、令和2年~4年にかけてそれぞれについて改訂・追補作業を行いアップデートした。
その他行政的観点からの成果
研究対象としている指定難病5疾患(AIH・PBC・PSC・BCS・IPH)について令和元年までに診断基準・重症度分類を作成し、令和2年~4年にかけて疾患レジストリに蓄積された臨床情報を踏まえ見直しを行った。これは国の難病施策(医療費助成対象者の選定)に活用されている。
その他のインパクト
研究成果はホームページで公開し(http://www.hepatobiliary.jp/)、一般からの質問や医療従事者からのコンサルテーションを受け付けている。患者数の多いPBC・AIHについては患者向けガイドブックを作成しており、令和4年度にこれらを改定した。令和2年~4年度の3年間において、各地の難病相談支援センター及び患者会でオンライン・対面形式を含め8回の講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
149件
その他論文(和文)
40件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
179件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
8件
ガイドライン作成8件
その他成果(普及・啓発活動)
27件
講演8件、患者会会報18件、ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202211015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,160,000円
(2)補助金確定額
17,160,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,020,943円
人件費・謝金 2,214,333円
旅費 1,770,222円
その他 7,249,586円
間接経費 3,960,000円
合計 17,215,084円

備考

備考
自己資金: 55,084円

公開日・更新日

公開日
2023-11-22
更新日
-