日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定に資する各栄養素等の最新知見の評価及び代謝性疾患等の栄養評価に関する研究

文献情報

文献番号
202209058A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定に資する各栄養素等の最新知見の評価及び代謝性疾患等の栄養評価に関する研究
課題番号
22FA2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
佐々木 敏(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 朝倉 敬子(東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野)
  • 勝川 史憲(慶應義塾大学 スポーツ医学研究センター)
  • 桑波田 雅士(京都府立大学 大学院 生命環境科学研究科)
  • 田中 清(神戸学院大学 栄養学部)
  • 福渡 努(滋賀県立大学 人間文化学研究院)
  • 上西 一弘(女子栄養大学 栄養学部)
  • 吉田 宗弘(関西大学化学生命工学部)
  • 片桐 諒子(医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
  • 雨海 照祥(滋慶医療科学大学医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準」の次期改定(2025年版)に際して、現状の課題を整理し、目指すべき方向性について、科学的かつ具体的な示唆を与えるための資料を提供すること、特に次の2点を中心とすることとした。(1)主として過去5年間に出版された論文から「食事摂取基準で参考または引用すべき論文」について、特に改善または拡張すべき部分を中心として情報収集を行うこと。(2)食事摂取基準の利活用の実態並びに課題を調査し、客観的かつ具体的な改善方針を提案すること
研究方法
主に学術論文や諸外国・国内の関連するガイドラインを対象に系統的レビューを行った。
結果と考察
研究目的の(1)については次の通りであった。
(1-1)「総論」については栄養素の調理損耗のレビューを行った。この情報は給食業務において必須でありながら、これまで食事摂取基準に具体的な記述はない。今回の報告はその端緒となる貴重な資料と言える。
(1-2)「エネルギー」については、「望ましいBMI」の概念整理を行ったうえで後期高齢者、妊婦のエネルギー必要量に関して新規情報を収集し、得られた結果を評価した。
(1-3)「たんぱく質」については食事摂取基準で採用すべき測定法という観点からレビューを行った。従来法(窒素出納法)に関する新たな知見は収集されなかった一方で、新たな測定法である指標アミノ酸酸化法を用いた研究はその数、質ともにまだ限られており、食事摂取基準での採用はむずかしいと考えられた。
(1-4)「エネルギー産生栄養素」については、今年度は、その健康影響が世界的に注目されている糖類にしぼった。まず、諸外国の状況を整理し、つづいて、糖類の過剰摂取による健康影響が考えられる健康課題について網羅的に論文収集を行った。
(1-5)「ビタミン」については、脂溶性、水溶性ともに参照の必要性が考えられる論文を抽出した。特に、脂溶性ではビタミンDに関する知見の集積がここ数年めざましいことが明らかとなった。水溶性ビタミンでは葉酸について日本人妊婦の摂取量と血清葉酸濃度についてレビューを行った。
(1-6)「ミネラル」については、多量ミネラルはナトリウムに、微量ミネラルは亜鉛にしぼって情報収集を行った。前者は日本人の摂取量について、後者は糖尿病との関連を扱った。加えて、鉄との関連として必要な情報として、日本人女性の月経周期についての検索も試みた。
(1-7)「対象者特性」については、小児の成長曲線および体格指数と、高齢者の体格と生活機能障害の2つについてレビューを試みた。前者について食事摂取基準では明確な記述はないため、貴重な資料が得られたものと考える。高齢者では死亡(生存)だけでなく生活機能の観点も欠かせず、体格(BMI)と生活機能の観点から論文収集を行った。
(1-8)「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」については、わが国の診療ガイドラインを網羅的に探索し、食事・食品・栄養素摂取量など栄養関連の記載の有無と程度、その内容について整理を試みた。この種の情報収集は初めてであり、今後、食事摂取基準が各種疾患の診療等ガイドラインとの連携を図るうえで重要な資料と考えられる。
(1-9)その他、現在の食事摂取基準に収載されていないものの、その健康影響が量的に明らかなものや諸外国の食事摂取基準等で基準が設けられている栄養素等について、その策定状況と栄養素間相互作用に関する記述を収集した。
(1-10)食事摂取基準の特殊な、しかし有用な用途として、災害時の対応が考えられる。そこで、災害栄養の観点から、「定義や基本情報のレビュー」、「水」、「病院・福祉施設における災害用備蓄食の目的と現状」についてレビューまたは実態調査を行った。
研究目的の(2)については、来年度早期に調査を実施することをめざし、その準備を行った。具体的には、大学(管理栄養士養成校)、給食委託会社、自治体、福祉施設、病院の各職域に勤務する栄養士・管理栄養士有資格者を対象に聞き取り調査を行い、対象とすべき集団の特性を絞り込むとともに、質問項目(質問票)を作成した。また、報告書には記載はないものの、実施に向けて具体的な準備を進めた。
結論
食事摂取基準が必要する情報の範囲は極めて広い。その全体を網羅することはできなかったが、検討課題として上げられていた項目や諸外国の食事摂取基準で近年取り上げられている項目を中心に、資料の収集と整理ができたものと考える。また、利活用に関する実態調査は次年度の調査実施のための準備を整えることができたものと考えられる。しかしながら、欠落している部分や検討課題が残されている分野もあり、これらは来年度に補強する予定である。また、今年度に行った準備に基づき、「食事摂取基準の利活用の実態並びに課題に関する調査」の実施を予定している。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202209058Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
26,000,000円
(2)補助金確定額
26,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,954,518円
人件費・謝金 14,679,765円
旅費 537,530円
その他 828,187円
間接経費 6,000,000円
合計 26,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-08-29
更新日
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