文献情報
文献番号
202209054A
報告書区分
総括
研究課題名
加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の研究
課題番号
21FA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
- 牛山 明(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 高橋 秀人(国立保健医療科学院 統括研究官)
- 伊藤 加奈江（戸次 加奈江）(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 杉田 和俊(麻布大学 獣医学部)
- 煙山 紀子(東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科)
- 中舘 和彦(明治薬科大学 薬学部)
- 李 時桓（イ シファン）(名古屋大学 大学院 環境学研究科)
- 鳥羽 陽(長崎大学 大学大学院医歯薬学総合研究科（薬学系）)
- 中田 光紀(国際医療福祉大学)
- 戸塚 ゆ加里(日本大学薬学部 環境衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
24,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
本研究では、これまでのたばこに関する研究成果（分析法、実験装置）を基盤として、加熱式たばこ等の新たなたばこ製品について、①主流煙および環境たばこ煙の成分分析および評価、②副流煙の室内でのシミュレーションと実験環境下での実測などから受動喫煙による健康影響を研究、③加熱式たばこおよび新たなたばこ製品についての評価手法を検討、④動物実験を基盤として曝露マーカー、毒性試験、⑤本研究によって開発された健康影響の評価手法に従って、加熱式たばこなど新たなたばこ製品の評価を実施し、受動喫煙防止のための施策に活用することを目的としている。
研究方法
2022年度は，2020から21年に販売開始された加熱式たばこ銘柄の副流煙ニコチン，たばこ特異的ニトロソアミン類（TSNAs）の分析を行った.主流煙に関して，多環芳香族炭化水素類，多環芳香族炭化水素キノン類，イソシアネート，揮発性のある水銀の分析を行った.次に，電子たばこのカルボニル化合物の発生量について調査を行った.紙巻たばこ用加熱装置から発生する有害化学物質の調査を行った。我々が開発した動物ばく露装置について実際にマウスに加熱式たばこのばく露を行う装置としての妥当性を検証した.今年度は，加熱式たばこのエアロゾル吸入時のマウスの心拍への影響を検討した。次に，肺・肝臓・心臓・腎臓組織中の遺伝子発現解析も行った。C57BL/6Jマウス肺より抽出したgDNAを用いて，気管内投与によるDNA付加体の網羅的解析を行なった。
結果と考察
2020から21年に販売開始された加熱式たばこ銘柄の副流煙ニコチン，たばこ特異的ニトロソアミン類（TSNAs）の分析を行ったところ副流煙のニコチン量は，先行研究の分析結果より低減されている銘柄と上昇した銘柄に分かれた. TSNAs量は大きい変化はなかった.さらに，主流煙の分析では、これまでに発がん性物質のベンゾ[a]ピレンが含まれる多環芳香族炭化水素類，多環芳香族炭化水素キノン類，イソシアネート，揮発性のある水銀が定量された.次に，電子たばこの出力，グリセロール，プロピレングリコールとカルボニル化合物の発生量についての関係を評価した.紙巻たばこ用加熱装置は，加熱装置の温度，加熱方式によって発生量が異なることが確認された.これらの分析データをもとに，加熱式たばこの喫煙による呼吸特性と化学種物質の挙動特性の解析に適用し，加熱式たばこ専用室でのたばこ成分の流れ，受度喫煙者の曝露評価を進めた.
動物ばく露装置を使用した研究について、今年度は加熱式たばこのエアロゾル吸入時のマウスの心拍への影響を検討したところ，加熱式たばこのばく露においてエアロゾル吸入直後に心拍の乱れ（特にRR間隔の不規則な増大）が観察された.次に，肺・肝臓・心臓・腎臓組織中の遺伝子発現解析では，IQOS曝露群において一部の炎症関連遺伝子並びに酸化ストレス関連因子発現に変動が認められた.C57BL/6Jマウス肺より抽出したgDNAを用いて，気管内投与によるDNA付加体の網羅的解析を行なったところ，control群と3R4F群，IQOS群の3つにクラスタリングができた.IQOSのクラスタリングに寄与する付加体を見出した.今後，この付加体の構造を検討するとともに，IQOSの遺伝毒性のメカニズムの解明を目指していく.引き続き，遺伝毒性，病理組織学的解析なども曝露期間を調整して評価を再度行っていく.
動物ばく露装置を使用した研究について、今年度は加熱式たばこのエアロゾル吸入時のマウスの心拍への影響を検討したところ，加熱式たばこのばく露においてエアロゾル吸入直後に心拍の乱れ（特にRR間隔の不規則な増大）が観察された.次に，肺・肝臓・心臓・腎臓組織中の遺伝子発現解析では，IQOS曝露群において一部の炎症関連遺伝子並びに酸化ストレス関連因子発現に変動が認められた.C57BL/6Jマウス肺より抽出したgDNAを用いて，気管内投与によるDNA付加体の網羅的解析を行なったところ，control群と3R4F群，IQOS群の3つにクラスタリングができた.IQOSのクラスタリングに寄与する付加体を見出した.今後，この付加体の構造を検討するとともに，IQOSの遺伝毒性のメカニズムの解明を目指していく.引き続き，遺伝毒性，病理組織学的解析なども曝露期間を調整して評価を再度行っていく.
結論
加熱式たばこ主流煙には、発がん性物質のベンゾ[a]ピレンが含まれる多環芳香族炭化水素類，多環芳香族炭化水素キノン類，イソシアネート，揮発性のある水銀が含有されていた。昨年度の結果も踏まえると加熱式たばこからは複数の有害化学物質が含まれていた。また、新型の加熱式たばこからも副流煙が発生し、ニコチン、たばこ特異的ニトロソアミン類が含まれていた。以上の分析データをもとに，加熱式たばこの喫煙による呼吸特性と化学種物質（今年度はニコチン）の挙動特性の解析に適用し，喫煙者からのたばこ成分の流れ，受度喫煙者の曝露評価を行った。加熱式たばこの動物曝露実験から心拍の乱れ、IQOS曝露群において一部の炎症関連遺伝子並びに酸化ストレス関連因子発現に変動が認められた。
公開日・更新日
公開日
2023-07-24
更新日
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