食育における歯科口腔保健の推進のための研究

文献情報

文献番号
202209053A
報告書区分
総括
研究課題名
食育における歯科口腔保健の推進のための研究
課題番号
22FA1024
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田野 ルミ(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院)
  • 岩崎 正則(北海道大学 歯学部)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
  • 小宮山 恵美(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 佐藤 眞一(千葉県衛生研究所)
  • 山本 貴文(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 吉森 和宏(千葉県衛生研究所 健康疫学研究室)
  • 中西 明美(女子栄養大学 栄養学部)
  • 梶浦 靖二(島根県益田保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では、食育推進基本計画において「ゆっくりよく噛んで食べる国民の増加」が目標となっており、地域において歯科関係者を含む多職種が食育に取組むことが重要であるとされている。
本研究では、自治体での食育における歯科口腔保健の取組みに必要なエビデンスや具体的な方法、考え方の提示に向け、自治体の食育における歯科口腔保健に関する実態把握、事例の収集、政府統計および各種調査の分析、エビデンスの収集を行うことを目的とした。
研究方法
4つの分担班に分かれて研究を実施した。
①全国の自治体の歯科口腔保健担当部局と食育担当部局と保健所を対象としたアンケート調査を行った。主な調査項目は、歯科口腔保健の推進に関する計画における食育の記載状況・食育や栄養に関連した目標、「食育や栄養に関連した歯科口腔保健事業」の実施有無・事業内容・支援内容など、食育推進計画の歯科口腔保健等に関する目標、「歯科口腔保健に関連した食育事業」の実施有無・事業内容・支援内容など、管轄市町村における食育事業との関わりの有無とした。
②ライフステージに応じた口腔機能の獲得、維持・向上などを目的とした食育における歯科口腔保健の事業について、事業担当者に面接調査を行った。
③農林水産省「食育に関する意識調査」、福岡県の職域歯科コホート研究、千葉県の特定健診と特定保健指導、のデータを用いた分析を行った。
④口腔機能、栄養バランスなどをキーワードとした、Pubmedと医中誌webを用いた文献検索を行った。
結果と考察
①回収率は、都道府県では歯科口腔保健担当部局94%、食育担当部局96%、市区町村では歯科口腔保健担当部局58%、食育担当部局55%、保健所では75%であった。歯科口腔保健の推進に関する計画は、全都道府県と79%の市区町村で策定され、食育や栄養などに関連した目標設定は都道府県の36%、市区町村の47%で行われ、これに関連した事業が都道府県の59%、市区町村の55%で行われ、回答された事業数は都道府県50、市区町村1,436であった。食育推進計画は全都道府県と92%の市町村で設定され、歯科口腔保健に関連した目標設定は都道府県の47%、市区町村の40%で行われ、これに関連した事業が都道府県の27%、市区町村の33%で行われ、回答された事業数は都道府県13、市区町村569 であった。
②16自治体での合計17事業の取組み状況について、回答を得た。事業化や事業推進のための体制構築などの過程において、多職種との連携および食育に関する資源の活用などが要点となっていた。事業の課題として、評価指標や数値目標の設定のしにくさなどが挙げられた。
③1721人が調査に回答した(男性759人(44.1%))。ゆっくりよく噛んでいる人は802人(46.4%)であった。ゆっくりよく噛んで食べていることは、子供時代の食事は楽しくないこと(OR=0.76,95%信頼区間(0.59-0.98))、仕事をしていないこと(OR=0.69,95%信頼区間(0.54-0.88))、良くない主観的健康観(OR=0.70, 95%信頼区間(0.52-0.95))、朝食を毎日摂取しないこと(OR=0.65, 95%信頼区間(0.49-0.86))、生活に時間的ゆとりがないこと(OR=0.68, 95%信頼区間(0.52-0.88))と負の関連があった。主食の重ね食べの頻度が1日1食未満の群と比較して、1日1食以上の群では4mm以上の歯周ポケットを有する歯数が有意に多かった(発生率比=1.47,95%信頼区間=1.10–1.96)。習慣的な喫煙があり、早食いがあり、夕食後2時間以内の就寝があり、習慣的な間食があり、朝食の欠食があり、咀嚼困難がありは、肥満、糖尿病において有意な危険因子が認められた。また、習慣的な喫煙があり、咀嚼困難がありに有意なやせ因子が認められた。
④採択した論文は211論文であった。口腔機能と食生活や栄養状態、健康状態の論文は、小児期5論文、成人期30論文、高齢期103論文であった。食具の種類と咀嚼回数や食物摂取量との関連の論文は3論文、食品の大きさや硬さと咀嚼回数や食物摂取量との関連は3論文、一口量と咀嚼回数や体格との関連の論文は6論文、速食いと咀嚼回数、食事量、体格との関連の論文は22論文、ガムを噛むことと口腔機能、食事、健康状態との関連の論文は21論文、よく噛んで食べることと口腔機能、食事、健康状態との関連の論文は19論文であった。
これらの結果は、自治体での食育における歯科口腔保健の推進につなげる資料に資する知見であると考えられた。
結論
今後は、今回得られた量的・質的データおよび既存データを基に、さらに分析をすすめるとともに、各自治体がライフステージに応じた食育における歯科口腔保健の取組みに活用できるエビデンスや具体的な方法、考え方を検討する。

公開日・更新日

公開日
2023-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202209053Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
4,452,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,048,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,869,814円
人件費・謝金 282,242円
旅費 987,119円
その他 1,313,415円
間接経費 0円
合計 4,452,590円

備考

備考
自己資金590円

公開日・更新日

公開日
2023-10-02
更新日
-