文献情報
文献番号
202208025A
報告書区分
総括
研究課題名
国際比較可能ながん登録データの精度管理および他の統計を併用したがん対策への効果的活用の研究
課題番号
20EA1026
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部)
研究分担者(所属機関)
- Charvat Hadrien(シャルヴァ アドリアン)(順天堂大学 国際教養学部)
- 堀 芽久美(静岡県立大学 看護学部)
- 宮代 勲(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 中田 佳世(山田 佳世)(大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
- 杉山 裕美((公財)放射線影響研究所疫学部)
- 大木 いずみ(埼玉県立医科大学)
- 西野 善一(金沢医科大学 医学部 公衆衛生学)
- 高橋 新(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
- 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 研究支援センター医療統計室)
- 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所 予防検診政策研究部)
- 雑賀 公美子(弘前大学大学院 医学系研究科 医療情報講座)
- 伊藤 秀美(愛知県がんセンター がん情報・対策研究分野)
- 澤田 典絵(倉橋 典絵)(国立がんセンター がん対策研究所 コホート研究部)
- 木塚 陽子(サイニクス株式会社 マーケットアセスメント)
- Gatellier Laureline(ガテリエ ローリン)(国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国内のがんに関する統計データを、単独または既存統計を併用・突合して解析することにより、欧米諸国と同等のがんサーベイランス体制を築くことを目的とする。がん登録情報のがん対策への利活用を一層推進することが求められ、一歩踏み込んでがん登録データと既存データをリンケージまたは併用した活用、最新統計手法による分析方法を示す必要がある。
研究方法
一定の精度基準を満たすデータより2012-15年診断症例の生存率を算出する。罹患率、生存率、患者死因等の分析を行い、諸外国との比較をして、我が国のがん負担の把握をする。がん診療連携拠点病院と、その他医療機関別に集計し、医療機関種別の院内がん登録体制や、受療患者群の特性を都道府県別に把握する。NCDのデータと悉皆性のある住民ベースデータとの連携方法を提示する。最新の統計モデル手法を国や都道府県のがん対策に活用する。がん登録データに詳細な診療情報を個別に突合追加することで患者群の特性および診療内容を把握する。大規模コホート研究など疫学研究へのがん罹患・生存情報の活用方法について検討し、個人情報保護上の問題を検討する。世界の医療情報収集・提供状況を、国際ネットワークを利用して調査する。個別データの移送をせずに共同研究をする方法(Federated Learning)を利用して国際共同研究を実施する。
結果と考察
がん生存率推計は、研究期間内にデータの確定がされなかったことから後継研究班で実施することとした。2011-2018年診断症例を対象に、RARECAREnet listを用いて、18種類のFamily、68種類のTire-1のがん、216種類のTier-2のがんに分類し、がん種別、診断期間別、都道府県別に、罹患数、粗罹患率、年齢調整罹患率(日本人モデル人口および世界標準人口で調整)を算出した。また、年次推移都道府県比較を行った。小児がんサバイバーの二次がんの累積発症リスクを到達年齢別にみると、20-24歳時での累積発症リスク(1.8%)は一般人口の40-44歳時のものと同程度であった。二次医療圏の5年相対生存率をポアソン回帰モデルにより比較した結果、性、年齢、病期補正後の過剰死亡ハザードの有意な上昇は肺について拠点病院が圏内にない1医療圏で認めたのみであった。がんに関連する統計データを整理し、更新し公表した。2022年度末時点で統計データは103件が登録された。また、47都道府県のがん登録データ利用窓口を一覧で掲載し、継続的に更新した。臓器がん登録データや人口動態調査票情報との併用により、地域がん登録及び全国がん登録データの活用をはかるとともに、法に照らすと困難な活用方法や突合時の運用上の注意点を示した。地域がん登録データを用いて、中咽頭がん、肛門がん、膣がん、陰茎がんの年齢調整罹患率を調べた。また、がん罹患率・死亡率の長期予測を行った。SEER*Stat用のデータベースを用いて、統計ソフトの利用が困難である担当者でもSEER*Statを用いて、罹患率、生存率(実測、相対含む)が算出できることが確認できた。20年間でがん治療は大きく変化しているため、がん種別、性別、年齢階級別、進行度別に手術(観血的治療)、化学療法、放射線治療による初期治療実施割合を計算し、その推移を検討した。がん登録データ利活用側の立場から、利活用を進めるうえで特に障害となっている、1)情報を管理する部屋が他の業務から独立していなければならない、2)公表時の少数例の数の秘匿化、3)海外への提供、の3点について、法律の観点から、現在の安全管理措置が妥当なのか、また、個人情報保護を厳守しつつ利活用を進めるには、どのような改正ができるか、弁護士から意見を受け、まとめた。がん統計の利用環境の調査では、国や地方公共団体が主体となってデータの収集を行っている国が多かったが、収集されたデータの利用者とその範囲は様々な結果となった。Federated Learningに基づいて、頭頸部がんに焦点を当て、日本と台湾、イタリアで実際の分析を実施した。
結論
匿名データでは、全国生存率集計のデータ利用申請、希少がん、小児がん等の国際分類に基づいた集計、HPV関連がんや肺がんの詳細集計を継続し、臓器別がん登録や人口動態統計との併用を進めた。非匿名データでは、個人情報保護の問題を整理した。都道府県庁において独自に統計解析ができるような支援体制の整備、諸外国のがん統計の利活用の現状の調査、個別データを移動させずに仮想の集合データを作成する最新手法の検討なども試みた。リンケージ利用などデータを活用する方法を開発するとともに、国際比較を行い、データ収集及び利活用について提案を行うことができた。
公開日・更新日
公開日
2023-07-04
更新日
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