機能性siRNA経口投与による家族性高コレステロール血症に対する新しい治療薬の開発

文献情報

文献番号
200907015A
報告書区分
総括
研究課題名
機能性siRNA経口投与による家族性高コレステロール血症に対する新しい治療薬の開発
課題番号
H20-ゲノム・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
斯波 真理子(国立循環器病センター 研究所バイオサイエンス部)
研究分担者(所属機関)
  • 山岡 哲二(国立循環器病センター 研究所生体工学部)
  • 飯田 秀博(国立循環器病センター 放射線医学部)
  • 笹栗 俊之(九州大学大学院医学研究院 生体情報科学講座臨床薬理分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
27,503,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
FHは、LDL受容体遺伝子を欠損する遺伝病であり、ホモ接合体では著明な高コレステロール血症、幼少期より進行する動脈硬化症を示し、未治療では20才まで生きられない。現在、LDLアフェレーシス療法が行なわれているが、患者の身体的、経済的負担が大きく、改善が望まれている。遺伝子治療が試みられているが、充分な効果を得られていない。本研究では、安全性が高くて効率が良く、経口という非侵襲的な方法でのsiRNA遺伝子導入システムを開発して、FHをモデル疾患として治療実験を行い、体内動態を含めて総合的に研究し、研究終了後の臨床試験に備えることを目的とする。
研究方法
 本研究では、ApoBの合成に関わる物質のsiRNAを修飾化することによって、経口投与による腸管での吸収、血液中での安定、肝臓への標的化を可能にし、肝臓でのリポ蛋白合成および分泌を抑制して、FHモデル動物の高コレステロール血症を改善する。siRNAをin vivoで安定化するために、キャリアーと肝臓への標的化のためにプルラン化PEIを用いること、siRNAの一部の塩基をBNA化して、in vivoでの安定性、標的遺伝子への親和性の上昇を図り、高脂血症モデルマウスを用いた治療実験を行なった。
結果と考察
 ApoB siRNAに修飾化核酸であるbridged nucleic acid (BNA)を搭載して、血清耐性試験、細胞を用いたアポB合成抑制実験、高脂血症モデルマウスへの静脈内投与による治療実験を行ない、肝臓でのアポB mRNA発現量の低下、投与後の血中総コレステロール値、VLDL、LDLコレステロール値の低下などの治療効果を確認した。合成ベクターについては、in vitroにおいて、Pullulan-siRNA効果、Pullulan-PEIを用いたsiRNA効果、細胞毒性、またin vivoにおいて、Pullulan-PEI/siRNA複合体の尾静脈投与による治療実験を行ない、単回、または、複数回投与後の肝臓におけるApoB mRNA量を有意に低下させること、組織に対する毒性の軽減、siRNAの安定性向上、肝臓ターゲティングおよび肝臓選択的イメージングを実現できた。
結論
 修飾化siRNA静注による高脂血症モデルマウスの治療実験に成功し、来年度の行なうsiRNAの経口投与による治療実験の準備がすべて整った。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
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