文献情報
文献番号
202207007A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究
課題番号
20DA1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
白土 なほ子(内野 なほ子)(昭和大学 医学部産婦人科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 関沢 明彦(昭和大学 医学部 産婦人科学講座)
- 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 病院 臨床検査部)
- 左合 治彦(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 柘植 あづみ(明治学院大学 社会学部)
- 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
- 菅野 摂子(明治学院大学 社会学部)
- 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産科婦人科学講座)
- 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
- 鈴森 伸宏(名古屋市立大学 大学院医学研究科 産科婦人科)
- 山田 崇弘(北海道大学大学院医学研究科総合女性医療システム学講座)
- 山田 重人(京都大学大学院 医学研究科)
- 田中 慶子(慶應義塾大学 経済学部)
- 清野 仁美(兵庫医科大学 精神科神経科学講座)
- 和泉 美希子(昭和大学 昭和大学病院 臨床遺伝医療センター)
- 坂本 美和(昭和大学 医学部産婦人科)
- 宮上 景子(昭和大学 産婦人科)
- 廣瀬 達子(昭和大学 医学部産婦人科学講座)
- 池本 舞(昭和大学藤が丘病院 産婦人科)
- 水谷 あかね(昭和大学 医学部 産婦人科)
- 池袋 真(昭和大学 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,870,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
背景:出産年齢の高年齢化とともに出生前検査への関心が高まっているが、一般市民・妊産婦がどのような意識を持ち、どのような検査体制を望んでいるかの客観的なデータがない。NIPTを行う非認証施設が増加し、出生前遺伝学的検査の提供体制は混乱した状況にある。
目的:出生前遺伝学的検査について社会的に理解される検査体制と充実した妊婦の支援体制を構築する。
目的:出生前遺伝学的検査について社会的に理解される検査体制と充実した妊婦の支援体制を構築する。
研究方法
・R2年には調査会社登録のWeb調査モニター男女の中から、R3年には妊産婦から出生前検査に関する調査を行った。
・R4年には出生前検査経験者、遺伝カウンセリング経験者から出生前検査を受ける際の意思決定、検査体制の問題点、支援の必要性などについてのWeb調査を行った。
・R3年にNIPTコンソーシアム施設及び遺伝に関わる全国の施設を対象に、出生前検査に対する医療支援体制の実態調査と医療者個人に対する自己記入式アンケートを行った。
・R4年には出生前検査で胎児の問題点が検出された妊婦への具体的な対応など医療者からヒアリング調査を行った。
・R4年には出生前検査経験者、遺伝カウンセリング経験者から出生前検査を受ける際の意思決定、検査体制の問題点、支援の必要性などについてのWeb調査を行った。
・R3年にNIPTコンソーシアム施設及び遺伝に関わる全国の施設を対象に、出生前検査に対する医療支援体制の実態調査と医療者個人に対する自己記入式アンケートを行った。
・R4年には出生前検査で胎児の問題点が検出された妊婦への具体的な対応など医療者からヒアリング調査を行った。
結果と考察
◆◆一般市民・妊産婦等の意識調査◆◆
一般男女、妊産婦共に「出生前検査に関する検査の種類や職種などの知識」が低いためか、「出生前検査に対する情報提供」はすべての妊婦に必要と4割が考え、条件付きも含めると8割が必要と感じていた。「すべての妊婦への出生前検査の実施」について一般男性、出生前検査受検妊産婦の方が一般女性より多くすべきと感じており、条件付きも含めると8割以上が実施を望む同等な認識をもつことを確認した。出生前検査選択者には社会的、心理的な背景に特徴があり、そのような背景を踏まえた対応が必要と思われ、選択者・非選択者の自由記載についてもまとめた。
◆◆出生前検査陽性症例の支援体制構築◆◆
上記意識調査を踏まえ、遺伝カウンセリング/出生前検査経験者の視点で出生前検査に関連した支援体制の問題点を抽出して解析予定である。また、医療機関調査では出生前検査陽性症例に対する支援体制は十分とは言えず、 医療者個人調査では支援者も負担に感じていることも多いことが分かった。具体的理由として「時間的制約」「個別化した対応が必要」「予後予測が困難」など担当医療者個人の努力に依存してケアが行われている状況がうかがえた。医療者のこころのケアも含めた支援体制の充実が必要であるとともに、ケアを担う医療スタッフの負担を軽減する方策の検討も必要と考えられた。出生前検査陽性者への対応には産婦人科だけでなく関連する診療科や地域との連携も不可欠であるとの考え方が抽出され、特色ある取り組みを行う10施設にヒアリング調査を行った。遺伝カウンセリング体制、問題症例に対する具体的な対応など事例集を作成した。今回の調査で、認証施設でNIPTを受けている妊婦が多い実態、また、NIPTの受検動向の実態などが明らかとなった。検査で陰性以外の結果を得た場合には小児科医の意見や公的支援体制についての情報を望んでいることが分かった。
一般男女、妊産婦共に「出生前検査に関する検査の種類や職種などの知識」が低いためか、「出生前検査に対する情報提供」はすべての妊婦に必要と4割が考え、条件付きも含めると8割が必要と感じていた。「すべての妊婦への出生前検査の実施」について一般男性、出生前検査受検妊産婦の方が一般女性より多くすべきと感じており、条件付きも含めると8割以上が実施を望む同等な認識をもつことを確認した。出生前検査選択者には社会的、心理的な背景に特徴があり、そのような背景を踏まえた対応が必要と思われ、選択者・非選択者の自由記載についてもまとめた。
◆◆出生前検査陽性症例の支援体制構築◆◆
上記意識調査を踏まえ、遺伝カウンセリング/出生前検査経験者の視点で出生前検査に関連した支援体制の問題点を抽出して解析予定である。また、医療機関調査では出生前検査陽性症例に対する支援体制は十分とは言えず、 医療者個人調査では支援者も負担に感じていることも多いことが分かった。具体的理由として「時間的制約」「個別化した対応が必要」「予後予測が困難」など担当医療者個人の努力に依存してケアが行われている状況がうかがえた。医療者のこころのケアも含めた支援体制の充実が必要であるとともに、ケアを担う医療スタッフの負担を軽減する方策の検討も必要と考えられた。出生前検査陽性者への対応には産婦人科だけでなく関連する診療科や地域との連携も不可欠であるとの考え方が抽出され、特色ある取り組みを行う10施設にヒアリング調査を行った。遺伝カウンセリング体制、問題症例に対する具体的な対応など事例集を作成した。今回の調査で、認証施設でNIPTを受けている妊婦が多い実態、また、NIPTの受検動向の実態などが明らかとなった。検査で陰性以外の結果を得た場合には小児科医の意見や公的支援体制についての情報を望んでいることが分かった。
結論
令和2年度「出生前検査に関する一般市民への意識調査」を行った。受検要因分析より、一般女性、出生前検査・不妊治療経験者に追加のアンケートを実施し、同様の質問に加え出生前検査について深く質問した。令和3年に重要項目のクロススタディーに加え、自由記述欄への回答の分析を行った。その結果、NIPTを含む出生前検査の実施における妊婦への情報提供がより適切に行われる体制づくりや、遺伝カウンセリング、検査前後の相談・支援のあり方、妊娠・出産、育児へのサポートのために、有意義な資料を報告した。令和4年度に出生前検査認証制度等運営委員会HPに「検査を受けた人の声 受けなかった人の声」として抜粋掲載した。行政支援についての実態調査として、出生前検査における行政機関の役割や支援内容に関する情報発信を行うことと、妊婦のニーズや必要とする支援に応じて医療機関と行政機関が連携することが重要であると示唆された。出生前検査への認識において、6割以上の人が行政機関にある相談窓口の存在を知らないことが明らかになった。さらに、出生前検査で胎児の情報を知ることに対しては、8割以上の女性が「準備ができる」という思いと「分かっても治せないなら不安になる」との思いを抱いていることが明らかになった。また、NIPT認証制度の存在について7割以上の女性が知らなった。今回の調査で、認証施設でNIPTを受けている妊婦が多い実態、NIPTの受検動向の実態などが明らかとなった。検査で陰性以外の結果を得た場合には小児科医の意見や公的支援体制についての情報を望んでいることが分かった。出生前検査を検討している妊婦に対して社会的にも理解されやすい支援体制を構築し、またNIPTを提供する基幹、認証施設において、今後起こりうる場面において「事例集」が参考になることを期待する。
公開日・更新日
公開日
2023-08-03
更新日
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