文献情報
文献番号
202207003A
報告書区分
総括
研究課題名
生涯を通じた健康の実現に向けた「人生最初の1000日」のための、妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のための研究
課題番号
20DA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
荒田 尚子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター病院 周産期・母性診療センター母性内科)
研究分担者(所属機関)
- 杉山 隆(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科)
- 瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
- 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院 看護系研究科 国際看護学)
- 前田 恵理(秋田大学 大学院医学系研究科 衛生学・公衆衛生学講座)
- 秋山 美紀(慶應義塾大学 環境情報学部)
- 小川 浩平(国立成育医療研究センター 産科)
- 三瓶 舞紀子(日本体育大学 体育学部健康学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,808,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
胎児期から生後早期の環境が生涯を通じた健康に強く影響を及ぼすことから、「人生最初の1000日」の栄養状態の改善が重要である。一方で、妊娠してから女性の栄養や生活スタイルに介入しても、妊娠転帰に対する効果は限られていることから、受胎前のヘルスケア、すなわち「プレコンセプションケア」が重要となる。開発した妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のためのプログラムを用いて実証を行い、妊娠前と妊娠経験のある20代30代女性の健康に関わるライフスタイルと健康行動の実態を踏まえ、さらにやせや肥満という体格特性も考慮し、有効な行動変容理論をとりいれ、わが国に適した「栄養・健康に関する知識の普及とそれに伴う効果的な行動変容のためのプログラム」を作成し、妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のための持続可能、発展可能なプラットホームの骨組みを開発した。
研究方法
現状調査としてウェブ調査を中心に、若い男女や妊産婦の身体状況や栄養状態、生活スタイルの現状と、社会教育環境と妊娠希望やヘルスリテラシーとの関連を把握した。また、出生コホート研究を用いて妊娠中の体重増加量と3歳児の体格の関連を調べた。開発した栄養・健康に関する知識の普及のみならず効果的な行動変容を起こしうる介入法を用いたプログラムを開発し、それらの効果実証をパイロット的に行った。地方のプレコンセプションからの前向きコホート研究を立ち上げ、そのベースライン調査を行った。
結果と考察
・全国の非医療系学部の大学生のウェブ調査では、健康関連QOLは下位尺度のうち「全体的健康感」、サマリースコアのうち「精神的健康度」が国民標準値より低く、メンタルヘルスの重要性があげられた。BMI18.5未満のやせ女性のうち、やせ願望のあるものを72%にみとめ、ボディイメージの歪みや「適正体重」に関するリテラシーの低さ、高い朝食欠食率、食行動における課題が示された。また、植物性たんぱく質やビタミン類の摂取不足、妊娠前の葉酸摂取、食行動に関するリテラシーの低さが明らかになった。(研究分担者 大田)
・我が国の若年女性においても、世帯年収や学歴が低いほど、将来子どもを持ちたいと考える者の割合、プレコンセプションケアに関する正しい知識を有する者の割合、適切な行動を取れている者の割合が低い。(研究分担者 秋山)
・妊娠中の体重増加量が増加すると、女性自身の将来の糖尿病や高血圧、肥満のリスクが増大することが単施設出生コホート研究で明らかになった。(研究分担者 小川)
・本研究で開発した妊娠前の女性を対象とした行動変容理論に基づくプレコンセプションヘルスの知識と行動に関する支援プログラムを持ちいた介入前後比較の結果、介入群において、プレコンセプションに関する知識、態度が向上し、生活習慣の改善に有意差が認められ、イノベーター理論を応用した介入プログラムの実行可能性が示唆された。(研究分担者 大田・秋山)
・自治体健診時に妊娠前女性に対する栄養・健康管理のための介入手法の検証を行い、知識、態度の向上を示した。プレコンセプションケアの自治体における社会実装への可能性と課題を得ることができた。(研究分担者 荒田)
・スマートフォンアプリを用いた妊産婦への妊娠中の栄養・生活習慣に関する情報提供による知識の習得と行動変容に関する調査の結果、アプリによる情報提供は、一方向性の情報提供のみでは行動変容をもたらすことには限界があったが、情報発信の場としての有用性は十分に認識された。妊産婦の体型によっても介入のポイントが異なる。 (研究分担者 杉山・瀧本・秋山)
・妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、胎児成長不全などの妊娠合併症のあった産婦に産後の退院までにインターコンセプションケアのリーフレットを用いてmotivating interviewing 法にてカウンセリングを行った。カウンセリング前に比較して、カウンセリング後1か月の時点での行動変容に対する効果はわずかであるがインターコンセプションケアの有効性を示すことができた。(研究分担者 三瓶・荒田)
・秋田市内の職場の一般定期健康診断で募集したプレコンセプション期女性338名のベースライン調査の結果、食事性葉酸摂取状況は十分でないうえに、葉酸サプリメントやマルチビタミンを内服しているものは全体の1割、妊活群でさえ2割と極めて低く、本人の喫煙率は低いがパートナーの3割が喫煙していた。女性だけでなくパートナーも含めたプレコンセプションケアの推進とモニタリングが必要である。(研究分担者 前田)
・我が国の若年女性においても、世帯年収や学歴が低いほど、将来子どもを持ちたいと考える者の割合、プレコンセプションケアに関する正しい知識を有する者の割合、適切な行動を取れている者の割合が低い。(研究分担者 秋山)
・妊娠中の体重増加量が増加すると、女性自身の将来の糖尿病や高血圧、肥満のリスクが増大することが単施設出生コホート研究で明らかになった。(研究分担者 小川)
・本研究で開発した妊娠前の女性を対象とした行動変容理論に基づくプレコンセプションヘルスの知識と行動に関する支援プログラムを持ちいた介入前後比較の結果、介入群において、プレコンセプションに関する知識、態度が向上し、生活習慣の改善に有意差が認められ、イノベーター理論を応用した介入プログラムの実行可能性が示唆された。(研究分担者 大田・秋山)
・自治体健診時に妊娠前女性に対する栄養・健康管理のための介入手法の検証を行い、知識、態度の向上を示した。プレコンセプションケアの自治体における社会実装への可能性と課題を得ることができた。(研究分担者 荒田)
・スマートフォンアプリを用いた妊産婦への妊娠中の栄養・生活習慣に関する情報提供による知識の習得と行動変容に関する調査の結果、アプリによる情報提供は、一方向性の情報提供のみでは行動変容をもたらすことには限界があったが、情報発信の場としての有用性は十分に認識された。妊産婦の体型によっても介入のポイントが異なる。 (研究分担者 杉山・瀧本・秋山)
・妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、胎児成長不全などの妊娠合併症のあった産婦に産後の退院までにインターコンセプションケアのリーフレットを用いてmotivating interviewing 法にてカウンセリングを行った。カウンセリング前に比較して、カウンセリング後1か月の時点での行動変容に対する効果はわずかであるがインターコンセプションケアの有効性を示すことができた。(研究分担者 三瓶・荒田)
・秋田市内の職場の一般定期健康診断で募集したプレコンセプション期女性338名のベースライン調査の結果、食事性葉酸摂取状況は十分でないうえに、葉酸サプリメントやマルチビタミンを内服しているものは全体の1割、妊活群でさえ2割と極めて低く、本人の喫煙率は低いがパートナーの3割が喫煙していた。女性だけでなくパートナーも含めたプレコンセプションケアの推進とモニタリングが必要である。(研究分担者 前田)
結論
妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のための介入プログラムの各現場での活用の可能性を確認できた。
公開日・更新日
公開日
2024-03-25
更新日
-