角膜全層の再生医療技術の開発および臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200906001A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜全層の再生医療技術の開発および臨床応用に関する研究
課題番号
H19-再生・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(東北大学大学院医学系研究科 神経・感覚器病態学講座・眼科視覚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 仲野 徹(大阪大学大学院医学系研究科病理学幹細胞病理学)
  • 明石 満(大阪大学大学院工学研究科応用化学)
  • 大和 雅之(東京女子医科大学先端生命研究所)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所生体組織工学研究部門生体材料学分野)
  • 竹花 一成(酪農学園大学獣医学部獣医解剖学)
  • 山口 拓洋(東京大学医学部付属病院臨床試験データ管理学)
  • 嶋澤 るみ子(東北大学未来医工学治療開発センター)
  • 上 昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重篤な角膜疾患に対して現在角膜移植が実施されているが、わが国では献眼数は絶対的に少なく、また他家組織による拒絶反応のため角膜移植が奏功しない。本研究では、自家細胞と人工材料を用いて全層性再生角膜を作製する技術を創出し、免疫抑制剤を必要としない安全性で有効な角膜再生治療法の開発を行い、臨床応用の実現化を目指している。3年計画の3年目に当たる本年は、角膜上皮、角膜実質、角膜内皮のパーツ毎に昨年度までに得られた知見および技術の課題をふまえて、角膜全層の再生医療技術を発展させ、臨床研究の橋渡しを行った。
研究方法
角膜上皮については、医師、生物統計家、薬事法の専門家、CRCなど多くの専門家と共同で臨床プロトコールを作成した。さらに、培養細胞シート作製をGMP準拠の管理下で行うため、CPCの整備を行った。角膜実質については、これまでに独自に開発したコラーゲンゲルのゲル作製条件の最適化と、透明化皮膚移植術の開発を進め、動物実験を中心とした評価を行った。角膜内皮については、角膜内皮様細胞への分化誘導条件を検討し、さらに細胞シートを作製して機能評価を行った。また、移植用キャリアシートの開発も行った。
結果と考察
角膜上皮については、臨床プロトコールの作成をおこない、臨床試験の準備をさらに進めることができたまた、CPCの準備も完了したことから、施設面においてもGMP準拠の細胞調整の準備が完了した。今後、多施設共同臨床研究を行うことで、さらに本治療法の有効性及び安全性が証明されることが期待される。角膜実質については、線維配向・積層型コラーゲンゲルを作製する技術を開発し、移植試験等にて一定の有効性が確認でした。しかし、臨床応用を考えた際にはさらに機能向上を図る必要性がある。そのための要素技術として、新規積層技術、添加物導入技術、細胞培養技術等を開発した。また透明化強膜および皮膚移植術といった独創的な技術を提案することができた。角膜内皮については、眼組織由来の細胞から角膜内皮細胞を分化誘導し、誘導性角膜内皮細胞シートを作製することに成功した。誘導性角膜内皮細胞は角膜内皮と同様にポンプ機能およびバリア機能を有していた。また、移植に用いるキャリアについて、細胞培養および物質特性、生体適合性の検討の結果、ゼラチンハイドロゲルシートを開発することに成功した。
結論
角膜上皮、実質、内皮それぞれのフェーズで角膜全層の再生医療技術を開発できた。今後は、角膜全層の再生医療の実用を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200906001B
報告書区分
総合
研究課題名
角膜全層の再生医療技術の開発および臨床応用に関する研究
課題番号
H19-再生・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(東北大学大学院医学系研究科 神経・感覚器病態学講座・眼科視覚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 仲野 徹(大阪大学大学院医学系研究科病理学幹細胞病理学)
  • 明石 満(大阪大学大学院工学研究科応用化学)
  • 大和 雅之(東京女子医科大学先端生命研究所)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所生体組織工学研究部門生体材料学分野)
  • 竹花 一成(酪農学園大学獣医学部獣医解剖学)
  • 上 昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門)
  • 山口 拓洋(東京大学医学部付属病院臨床試験データ管理学)
  • 嶋澤 るみ子(東北大学未来医工学治療開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重篤な角膜疾患に対して現在角膜移植が実施されているが、わが国では献眼数は絶対的に少なく、また他家組織による拒絶反応のため角膜移植が奏功しない。本研究では、自家細胞と人工材料を用いて、免疫抑制剤を必要としない安全性で有効な角膜再生治療法の開発を行い、臨床応用の実現化を目指す。
研究方法
角膜上皮については、ヒト皮膚線維芽細胞をフィーダー細胞として使用できるか検討した、さらに医薬品のみで構成される培地を用いて上皮細胞シートを作製し、GLP準拠の造腫瘍性試験を実施した。また、臨床研究を行うにあたって、GCP準拠の臨床プロトコール作成および申請、セルプロセシングセンター(CPC)の準備を行った。角膜実質については、架橋コラーゲンゲルおよび線維配向積層ゲルの開発を行った。また、添加物導入の網羅的検討、新規積層法を検討した。さらに、細胞導入技術、透化強膜作製法、透明化皮膚移植術の開発を行い、動物実験による有効性評価を行った。角膜内皮については、まず角膜内皮再生の細胞源の探索を行った。次いでこれらの細胞を用いて、角膜内皮様細胞への分化誘導条件の検討を行った。さらに誘導性角膜内皮様細胞の機能評価および有効性評価を行った。また、角膜内皮移植用のキャリア開発を行った。
結果と考察
角膜上皮については、皮膚線維芽細胞は3T3細胞と同等のフィーダー効果があり、自家細胞のみで行える角膜上皮再生医療技術を開発できた。さらに造腫瘍性試験により、安全性を確認できた。また、臨床試験の準備も完了し、多施設共同臨床研究を今後行うことで、さらに有効性および安全性が証明されると期待される。角膜実質については、架橋コラーゲンゲルが十分な透明性をもつシートであることを示した。さらに、線維配向・積層型コラーゲンゲルを作製する技術を開発し、移植試験等にて一定の有効性が確認できた。また、新規積層技術、添加物導入技術、細胞培養技術、透明化強膜および皮膚といった独創的な技術を開発できた。角膜内皮については、眼組織中の未分化細胞から角膜内皮様細胞へ分化誘導可能であることを見出した。さらに、誘導性角膜内皮様細胞について、角膜内皮と同様にポンプ機能およびバリア機能を持っており、有効性も確認した。また、移植用キャリアとしてゼラチンハイドロゲルシートなどを開発できた。
結論
角膜上皮、実質、内皮それぞれについて再生医療技術を開発できた。今後は、角膜全層の再生医療の実用を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200906001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
角膜上皮について、皮膚線維芽細胞は3T3細胞と同等のフィーダー効果があることを示した。角膜実質の主成分であるコラーゲンを用いた移植片の開発を行い、線維配向積層ゲル、多層化ゲル、添加物導入ゲルなどの新規作製法を発見した。強膜および皮膚を透明化する方法を見出した。眼組織中から神経堤細胞を単離する方法を発見し、さらに角膜内皮様細胞に分化誘導する条件を見出した。成果は学術論文および学会にて発表し、国内外から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
角膜上皮再生に関して、先進医療の申請を行った。さらに、臨床プロトコールの完成、CPCの整備、多施設臨床研究の準備を行った。これらの成果によって、培養口腔粘膜上皮細胞シート移植を今までよりも高いレベルで行う準備が完了したと考えられ、今後の多施設研究が本治療法標準化の足掛かりになることが期待できる。
ガイドライン等の開発
日本工業標準調査会により、2010年2月25日、「角膜上皮疾患治療用培養上皮細胞シートの試験方法」がTechnical report(TR:標準情報)として承認、公表された。これは、難治性角膜上皮疾患の治療を目的に、温度応答性培養皿を用いて自己の細胞から製造した、培養角膜上皮細胞シート及び培養口腔粘膜上皮細胞シートを、位相差顕微鏡などを用いて測定する方法などを取りまとめたものである。
その他行政的観点からの成果
本事業によって得られた角膜内皮細胞についての知見について、次世代医療機器評価指標策定事業が作成した「角膜内皮細胞シート評価指標案」に次世代医療機器評価指標検討会
を通してフィードバックを行った。
その他のインパクト
本事業のテーマである角膜再生が注目され、新聞で13件報道された。特許について、角膜上皮からは皮膚線維芽細胞由来フィーダー細胞に関する1報、角膜実質からはコラーゲンゲルの作製法に関して3報、組織の透明化法について2報、角膜内皮からは角膜内皮分化誘導法に関して1報、移植用キャリアについて1報の出願を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
60件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yuji Tanaka, Akira Kubota, Michiya Matsusaki他
Anisotropic mechanical properties in collagen hydrogels induced by uniaxial-flow for ocular applications.
Journal of Biomaterials Science  (2010)
原著論文2
Oie Y, Hayashi R, Takagi R, Yamato M他
A novel method of culturing human oral mucosal epithelial cell sheet using post-mitotic human dermal fibroblast feeder cells and modified keratinocyte culture medium for ocular surface reconstruction.
Br J Ophthalmol  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-