文献情報
文献番号
202206009A
報告書区分
総括
研究課題名
UHC達成の要因としての医療安全の世界の動向把握及び我が国の強みの戦略的な訴求に資する研究
課題番号
22CA2009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
- 後 信(財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部)
- 田中 和美(群馬大学 大学院医学系研究科 医療の質・安全学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Universal Health Coverage(UHC)の達成の要素の1つとしての医療安全の重要性が指摘されている。医療安全において我が国のプレゼンスを発揮し続けるためには、UHC達成の要因としての医療安全の世界の動向を把握し、日本の医療安全の強みを分析するとともに、海外と比較・整理する必要がある。そのため本研究では、閣僚級世界患者安全サミットなど国際会議などにおいて、日本からの発言や提案の内容を作成する際に活用し得る基礎資料を作成することを目的とする。
研究方法
①文献等調査によって、最新の世界の医療安全の潮流、特にUHC達成にむけての医療安全について、情報収集を行う。このときWHO、OECDなどの国際機関の資料、閣僚級世界患者安全サミットの議題・テーマについても併せて調査をおこなう。また、②日本の専門家へのインタビュー調査、及び、③海外の専門家・国際機関へのインタビュー調査も実施する。
結果と考察
世界の医療安全の動向を示唆するWHOのAction Planや閣僚級世界患者安全サミットのアジェンダなどから、医療安全の推進に人材育成は欠かせない。日本においては、医療安全を推進する様々なレベルでの人材育成の取り組みがあるにも関わらず、海外ではあまり知られていない。またG7の国々の医療安全に関する取組みのレビューからは、体系的に医療安全の人材育成を推進する仕組みは限定的である。これらのことから、事故報告制度に加えて、日本の医療安全における‘強み’であり、海外にも発信するとよい取り組みの1つは人材育成であると考えられた。日本の人材育成を以下の2つの観点から整理した:①各医療機関における様々な立場の対象者ごとの研修(事務職を含む全職員、病院の管理者、医療安全管理者、医療対話推進者、など)、②個々の医療機関を超えた学びの機会。後者については、さらに3つのレベルでの取り組みとして整理することが考えられた:a)複数の医療機関同士のレベル、b)地域のレベル、c)国レベル。これらの全体に共通する特記すべき人材育成の特徴として、以下の点があげられた:患者・家族が協働して実施する研修機会が増えている、非医療分野における品質管理・安全の専門家の協力もある、医療安全に関わる報告制度の分析結果などが、研修資料の教材としても活用されつつある。またインタビューなどから、医療安全に関する制度上には現れていないが、日本の医療安全の推進のために産業界の品質専門家などの貢献は欠かせなかったと考えられ、人材育成の取組みの中にも包含される日本の‘強み’であると考えられた。さらに、卒前からの医療安全教育の充実化も欠かせないと考えられるが、医療者教育のモデル・コア・カリキュラムは、改訂を重ねるごとに医療安全教育の重要性が強調されており、国家試験問題にも医療安全に関する問題が出されるなど、国として医療安全教育の体制整備を進めていることは我が国の強みとなると考えられた。
結論
事故報告制度に加えて、日本の医療安全における‘強み’であり、海外にも発信するとよい取り組みの1つは人材育成であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-06-22
更新日
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