DPC制度の適切な運用及びDPCデータの活用に資する研究

文献情報

文献番号
202201016A
報告書区分
総括
研究課題名
DPC制度の適切な運用及びDPCデータの活用に資する研究
課題番号
22AA2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 阿南 誠(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科 公共健康医学講座医療管理学分野)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
  • 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
35,870,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DPC/PDPSは、1,764の病院が対象であり、急性期入院医療に重要な役割を持つ制度である。DPCデータの提出は5,000を超えており、入院医療の評価に活用されることが期待されている。制度は2年ごとに改定され、新たな項目の評価や調査項目の解析が迅速に行われる必要がある。今後は、DPCデータを回復期や慢性期を含む入院医療全体の評価に活用し、DPCデータベースとNDB・介護DBとの連結解析も開始される。このため、3つの研究目的を設定した。
①適切な診断群分類の研究
②DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
③DPCデータの解析と第三者提供の推進に資する研究
研究方法
約1,300の病院からデータ保護管理義務契約を結んでDPC調査データを収集し、パブリック・クラウドサービスを利用して安全かつ効率的にデータ処理を行い、研究を進めた。
 ①適切な診断群分類作成の研究では、ケア・ミックス型病院におけるコーディングの問題点やDPCデータの不明・欠損部分を調査した。また、新型コロナウイルス感染症が診療実態や診断群分類評価に与える影響を検証し、対応が必要な課題について検討しました。
 ②DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究では、高度急性期や急性期を中心に医療の質と効率性の評価手法の開発や臨床疫学研究の方法論の開発、回復期や慢性期に近い病態を持つ入院患者の評価手法の検討を行った。
 ③他データベースとの連結や第三者提供の推進に資する研究では、他のデータベースとの連結解析における課題や問題点を検討し、DPCデータの利活用促進や知識の普及方法、介護データとの連結解析における重要な病態解析手法について検討した。
結果と考察
昨年度までの研究に引き続き、パブリック・クラウドサービスを利用して研究班のウェブサイトを作成し、1332病院から6年間で延べ4736万人の暗号化されたDPC調査データファイルをデータベース化した。
 ①ケア・ミックス型病院におけるDPC/PDPSコーディングテキストの活用状況や特性について調査し、具体的なコーディングの問題点を明らかにし、診療報酬改定に向けた検討材料とした。また、DPCデータ、様式1における欠損や不明登録の実態と要因を検証し、ほぼ適切にデータ登録がなされている実態を明らかとした。
 ②DPCデータを用いた医療の質・効率性の評価として、2019年のセファゾリン供給停止による不足病院ではセファゾリンの使用割合が減少し、代替薬の使用が増加した、診療報酬改定後の待機的PCI施行症例数の減少傾向が示された、新型コロナ患者を多く受け入れた病院では、他の集中治療患者が減少していたが、医療の質は維持された、誤嚥性肺炎患者の退院先を予測するためのモデルが開発され、高齢者施設からの入院者と自宅からの入院者の退院予測に有用性が示された、などの成果が得られた。DPCデータベースは臨床疫学研究やヘルスサービスリサーチに活用できることを示し、2022年には52編の論文が掲載された。高度急性期病棟の入室患者実態調査で、都道府県によってはICU病床数が不足していることが示された。日本のCOVID-19入院患者は、第2および第3波では死亡率が低下していることを示した。誤嚥性肺炎入院例における抗菌薬投与短期治療は再発リスクをわずかに増加させる可能性を示した。日本の高齢肺炎患者のBMIとCD腸炎リスクに関する研究では、低BMIはCD腸炎のリスクが高く、高BMIは保護的な因子となることが示された。経皮経食道胃管挿入術(PTEG)は安全な手技であり、重篤な合併症は少ないが、輸血と早期チューブ交換が頻繁に行われることが示された。早産児の出生週数、新生児仮死、呼吸器サポート状況などが退院時在宅酸素と関連していることが示された。レセプト統計を用いた平均在院日数の推計式が病院報告の平均在院日数と実質的に一致することが示された。
 ③DPC制度の適正運用とデータ活用促進のためのセミナーを開催し、分析用マスターを整備して配布した。また、DPCデータからの要介護高齢者の急性期医療の現状と課題に関する研究では、要介護度が高くなると特定の傷病の割合が高まること、救急搬送の有無は死亡退院率には影響を与えないことが示された。


結論
研究結果はDPC制度改定に反映され、診断群分類の統合や精緻化、コード体系の整備が検討される。医療の質評価やDPC情報の透明化に関しても研究成果が活用され、DPCデータの質の確保や公表に貢献することが期待される。臨床疫学研究は医療の質向上と医学研究の発展に寄与し、さらなる発展が期待される。本研究はDPCの維持・整備手法や包括評価の妥当性に貢献し、基本的な考え方を示している。また、個人情報保護に配慮したデータの利活用や医療の質評価手法の開発も行われた。

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202201016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,870,000円
(2)補助金確定額
39,870,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,996,010円
人件費・謝金 2,869,337円
旅費 419,900円
その他 26,593,226円
間接経費 4,000,000円
合計 39,878,473円

備考

備考
研究の経過に伴い、追加のデータ分析等が増えたため、自己資金を追加で使用したため

公開日・更新日

公開日
2023-12-26
更新日
-