卒前教育から生涯教育に至るシームレスな総合診療医の養成・確保に関する研究

文献情報

文献番号
202201008A
報告書区分
総括
研究課題名
卒前教育から生涯教育に至るシームレスな総合診療医の養成・確保に関する研究
課題番号
21AA2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
前野 哲博(筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 仁志(秋田大学大学院 医学系研究科 医学教育学講座)
  • 高村 昭輝(富山大学 医学教育学)
  • 吉本 尚(筑波大学 医学医療系)
  • 稲葉 崇(筑波大学 医学医療系)
  • 久野 遥加(筑波大学 医学医療系)
  • 佐藤 幹也(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,362,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急速に少子高齢化が進む我が国において、地域包括ケアシステムの推進が求められている。それを担う人材として近年、総合診療医を養成する必要性が高まっている。地域で活躍する総合診療医を増やすためには、その必要数を算出したうえで、卒前教育、臨床研修、専門研修、生涯教育の各フェーズにおける切れ目のない教育プログラムの提供が求められる。
このような背景を踏まえ、我々は1)今後の医療需要の変化を反映した地域別の総合診療医の必要数を算出するシステムの開発、2)現在国内で実施されている総合診療医を養成するための研修制度の比較検討、3)卒前教育~生涯教育を通して活用できる研修目標及びマイルストーンの作成とその評価ツールの開発、4)能動学習を可能にする教育効果の高いオンライン研修プログラムの開発と教育効果の検証を目的とする研究を行った。
研究方法
上述した目的の1)~4)について、以下の研究を実施した。
1)総合診療医の必要数については、推計モデルに改良を加えるとともに、そのベースとなる総合診療医の診療範囲を総合診療スコープとして概念化し、各種パラメータを投入すれば、地域別・年代別に総合診療医の必要数をシミュレートできるシステムを構築した。さらに、このアルゴリズムを応用して、自らの診療が地域の総合診療医のニーズにどの程度一致しているかを見る指標(総合診療医指数)をウェブ上で算出できるシステムの構築を行った。
2)前年度の比較検討を踏まえ、主な制度の担当者や受講者にインタビューを行って、さらに詳細な情報を集めるとともに、研修の共有化や相互乗り入れの可能性などに関する検討を行った。
3)国内外の総合診療教育に係る状況の調査確認を行った。研修目標の設定に関しては、前年度に試行的に設定した研修目標について、有識者を研究協力者に招聘し、さらに検証と洗練を行った。
4)研修プログラムのオンライン化を進めるとともに、オンライン研修を実現するためのアプリケーションや、自宅で実習できる安価な模型の開発も合わせて行った。評価方法としては、研修が実際の診療に与えた影響を評価するために、研修前/中/直後の調査だけではなく、修了から6か月~1年後にWebアンケートによる評価を開始した。
結果と考察
1)医師一人当たり1日当たりの外来患者数や診療時間等のパラメータについて自動的に感度分析を行う機能を実装した。また、各疾患分類の患者における総合診療医が診療できる/すべき患者の割合の設定に関して、新たに総合診療スコープ(scope of general practice)として概念化した。そのうえで、このアルゴリズムを応用して、自らの診療が地域の総合診療医のニーズにどの程度一致しているかを見る指標(総合診療医指数)をウェブサイト上で算出できるシステムの構築を行った。
2)インタビューの結果より、いずれの団体も課題を持ちながら、教育カリキュラムに関して模索してきたことが分かった。また、共有や相互乗り入れについても団体の意向が得られれば前向きな方向性がうかがえた。
3)海外の総合診療医、家庭医のコンピテンシー、マイルストーンなどのフォーマットに新たな修正や変更はなかった。日本の研修目標については前回作成したものを再評価し、修正案として提示した。
4)オンライン研修プログラムは、さまざまな工夫を重ねた結果、オンラインでもinteractiveな研修を導入することができ、受講者の実践的な学びにつながっていることが確認できた。また、遠隔地で同時にシミュレーションに参加できるアプリや、受講者に送付する模型など、開発したツールを実際に用いる研修を開始した。教育評価に関しては、現在データ収集を行っているところであり、今後、フォローアップ調査を含めた教育効果の解析を進めていく予定である。
結論
総合診療医の必要数について、将来の総合診療医の必要数を算出する推計モデルを開発した。次年度は、これを医療計画や総合診療医の教育と研修に活用するための方策を提示することを想定している。
総合的な診療能力は、インタビューにより、制度間の情報共有や相互乗り入れについても前向きな方向性がうかがえたため、卒前教育からのシームレスな教材の共有化も含めた検討を進めて行く。
研修目標の設定に関しては、今回作成したコンピテンシーとマイルストーンを研修現場で活用できるように、より現場で具体的な業務能力を評価するための目標、評価ツールの開発、教育コンテンツの作成を行う必要がある。
研修のオンライン化については、研修内容の工夫や研修ツールの開発により、対面研修と遜色のない教育効果の高い研修が実施できることが示された。その教育効果を体系的に評価したうえで、上述した各種団体の研修プログラムでも計画的に活用することにより、より効果的な研修が実施できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2024-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202201008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,850,000円
(2)補助金確定額
12,549,000円
差引額 [(1)-(2)]
301,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,634,958円
人件費・謝金 3,295,629円
旅費 365,460円
その他 765,735円
間接経費 1,488,000円
合計 12,549,782円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差額782円は、補助金が1000円未満切り捨てのため、自己資金にて充当した。

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-