東アジアの家族人口学的変動と家族政策に関する国際比較研究

文献情報

文献番号
200901035A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジアの家族人口学的変動と家族政策に関する国際比較研究
課題番号
H21-政策・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 正一(関西学院大学 経済学部)
  • 小島 宏(早稲田大学 社会科学総合学術院)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東アジアの出生力低下は突出して進行し、晩婚化・未婚化と離婚率の上昇が観察される一方、同棲と婚外出生の増加は非常に緩慢である。世帯規模の縮小と世帯構造の多様化も進行しているが、北西欧や北米とはまだかなりの差がある。また離家を含む成人移行の遅れは南欧に類似するが、国際結婚や外国人労働者の増加は南欧と比べてもまだ低い水準にとどまっている。こうした東アジアの家族変動、特に出生率とそれ以外の側面の不均衡は、今後の家族人口学的変動と家族政策の展開を考える上で非常に重要な意味を持つ。
研究方法
研究は文献・理論研究、データ分析、将来予測の三段階で進行される。文献・理論研究では、東アジアの家族人口学的変動とその社会経済的要因、および家族政策に関する情報を収集・分析する。データ分析では、東アジアを中心にマクロデータとマイクロデータを収集し、各国における家族人口学的変動の要因と政策的対応、その有効性に対する分析を行う。将来予測では東アジアの人口・世帯・家族に関する将来推計を収集し、必要であれば独自に推計を実施する。それを通じて、今後の家族人口学的変動と家族政策の展開における東アジア的特徴について考察する。
結果と考察
日本の合計出生率は南欧と似た推移を示すが、韓国・台湾は日本を大きく下回る。これは儒教家族の子孫である韓国・台湾の家族パターンと、封建家族の子孫であるヨーロッパや日本の差に帰すことができる。南欧・東欧や日本は封建家族の子孫だが、北西欧よりは家父長的・権威主義的要素が強い。中国・朝鮮・台湾・ベトナム等は儒教家族の子孫で、北西欧パターンからの距離はさらに大きい。低出生力は高度に発展したポスト近代的な社会経済システムと、変化が緩慢な家族システムの葛藤の結果と見られる。ポスト近代的変化に最も耐性が強いのが北西欧型家族パターンであり、それとの差異が大きいほど出生力は大きく低下する。
結論
2006年以後の合計出生率は台湾の方が韓国を下回り、その原因を早急に見つけ出す必要がある。シンガポールは1980年代にいちはやく出生促進策に転じ、アジアの大都市としては比較的高い水準を維持している。このことは出生促進策に即効性はなく、数十年の積み重ねが重要であり、性急な判断は避けるべきことを示している。シンガポールのベビーボーナス制度、韓国の国民年金クレジット制、産前産後休暇、育児休業制度と短時間労働制度等は日本が参考にしてもよい制度で、有効性が明らかになれば真剣に導入を検討すべきだろう。

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-