健康危機管理体制における精神保健支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200840033A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機管理体制における精神保健支援のあり方に関する研究
課題番号
H19-健危・若手-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
被災地に派遣され支援活動を行った保健師や看護師をはじめとした精神保健の非専門家を対象としてニーズ調査を行い、精神保健を必ずしも専門としない保健師等向けの災害時の精神保健支援の研修法のあり方を検討した。
研究方法
保健師や看護師を対象とした、精神保健支援に関するニーズ調査として、1)平成20年度保健師等ブロック研修会に参加した保健師等に災害時の精神保健活動の知識と自己効力感に関する自己記入式調査を実施した。また、2)近年大規模災害を経験した県や市町村の保健師等を対象に、研修プログラム案を提示し、研修内容、提供方式等に関する聞き取り調査を行った。
結果と考察
1)自己記入式調査(調査票回収率は51.3%)の結果、日常業務内での精神保健に関する対応経験として、身近な人の突然死(59.9%)、子どもへの虐待(49.4%)は比較的多かったが、それ以外のトラウマ的出来事、つまり自然災害(36.0%)等への対応経験は多くなかった。また、地域で遭遇するような精神健康危機状態についても、65%以上のものは、対応に「不安」あるいは「どちらかというと不安」と感じていた。また、「災害時地域精神保健医療ガイドライン」(厚生労働省, 2002)について、72.5%のものは、「知らない」、あるいは、「読んだことがない」と答えた。聞き取り調査の結果、具体的な初期対応法に関する研修を望む意見が多かった。特に、現場で住民の対応にあたる市町村の保健師は、精神保健に関する研修をうける機会が少なく、研修へのアクセスの向上を求める意見等があった。
結論
研修プログラムは、保健師等向けには、心理的初期対応法や支援者のストレス対応法などの具体的技法に注力して、レクチャーに加え事例に基づくロールプレイを提示するといった、技法獲得のための強化手段を組み込む必要がある。また、ウェブ上での学習といったアクセスの向上が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200840033B
報告書区分
総合
研究課題名
健康危機管理体制における精神保健支援のあり方に関する研究
課題番号
H19-健危・若手-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機管理体制における、保健師等による精神保健支援のあり方を検討した。
研究方法
平成19年度は、1)災害時の精神保健支援に関する国内外の既存のガイドラインやマニュアル類を系統的にレビューし、2)Pynoosらによる心理的応急処置(Psychological First Aid)のわが国への導入のあり方について、本プログラム開発者らと検討した。そして、3)わが国における大規模災害の被災地で精神保健支援にあたった経験者から現場における支援の実際や課題などについて聞き取り調査を行った。平成20年度は1)保健師や看護師を対象とした、精神保健支援対応に関するニーズ調査として、平成20年度保健師等ブロック別研修会に参加した保健師等に災害時の精神保健活動の知識と自己効力感に関する自己記入式調査を実施し、この結果に基づき2)災害を経験した県や市町村の保健師等を対象に、研修プログラム案を提示し、研修内容および提供方式等に関する聞き取り調査を行った。
結果と考察
平成19年度の結果に基づき実施した、平成20年度の自己記入式調査(回収率:51.3%)の結果では、日常業務内での精神保健に関する対応として、身近な人の突然死(59.9%)、子どもへの虐待(49.4%)の経験は比較的多かったが、それ以外のトラウマ的出来事、つまり自然災害(36.0%)等への対応経験は多くなかった。また、地域で遭遇するような精神健康危機状態に対する対応についても、65%以上のものは「不安」あるいは「どちらかというと不安」と感じていた。そして、2002年に厚生労働省から発行された「災害時地域精神保健医療ガイドライン」について、72.5%のものは「知らない」、あるいは、「読んだことがない」と答えた。聞き取り調査では、具体的な初期対応法に関する研修を望む意見が多かった。また、市町村の保健師からは、精神保健に関する研修をうける機会が少ないために、研修へのアクセスの向上を求める意見があった。
結論
保健師等による精神保健支援を円滑に行うために、心理的初期対応法などの具体的技法に注力して、講義に加え事例に基づくロールプレイを提示するといった、技法獲得のための強化手段を組み込んだ形の研修プログラムが必要である。また、研修機会を広く提供するために、ウェブ上での学習といったアクセスの向上が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200840033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
災害時の精神保健支援に関する国内外の既存のマニュアル、ガイドライン等を系統的に整理した結果、国内における既存のガイドラインは内容については大きな違いはみられず、臨床的支援の記述は比較的充実していたが、全体的な位置づけやそれぞれの役割分担が不足していることが明らかになった。国際的にはIASC(Inter-Agency Standing Committee)ガイドラインは行政、臨床支援の両面に言及しており、本指針をわが国の実情に沿うように修正して活用することが有用であると考えられた。
臨床的観点からの成果
心理的応急処置法のわが国への導入について検討した結果、本プログラム日本語版の開発のみならず、精神保健を専門としない支援者の使用を想定し、その後のアセスメント、精神保健専門家への紹介や連携体制の整備も同時に必要であり、これらの根拠となる災害後の心理的反応の自然史を明らかにする研究の展開を同時に進めることが重要であることが明らかになった。上記の知見に基づいて、災害対応時に活用できる保健師等を対象とする研修プログラム案を作成した。
ガイドライン等の開発
近年の大型災害の経験をもとに、災害精神保健および心理社会的支援に関する指針が、WHOらをはじめとする国際機関、大型国際NGOらによって構成されるIASC (Inter-Agency Standing Committee)から2007年に発行された。このIASCガイドライン「災害・紛争等時における精神保健・心理社会的支援に関するIASCガイドライン」を翻訳を完了し、普及の準備をしている。
その他行政的観点からの成果
これまでの我が国における災害精神保健に関するマニュアルやガイドラインは臨床的支援の在り方の記述が多かったが、これらの支援を支える各機関の役割分担が明確でなかった。本研究をもとに、行政、臨床支援の両面に言及した研修プログラムを開発し、今後の災害時の精神保健支援の質の標準化が進むことが期待される。本プログラムを、精神保健福祉センター長や保健所長、および保健師、その他行政職員を対象とした講演や研修時に実施しして、災害精神保健に関する理解や態度の向上に活用した。
その他のインパクト
関係する研究会、シンポジウム等で本研究結果の発表を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-