迅速・簡便な検査によるレジオネラ対策に係る公衆浴場等の衛生管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
200840029A
報告書区分
総括
研究課題名
迅速・簡便な検査によるレジオネラ対策に係る公衆浴場等の衛生管理手法に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
倉 文明(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 常 彬(国立感染症研究所 細菌第一部 )
  • 森本 洋(北海道立衛生研究所 微生物部)
  • 前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部 )
  • 山崎 利雄(国立感染症研究所 バイオセーフティー管理室)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター 細菌科)
  • 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 田栗 利紹(長崎県環境保健研究センター 保健科)
  • 渡辺 祐子(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 緒方 喜久代(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
  • 荒井 桂子(横浜市衛生研究所 検査研究課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国におけるレジオネラ症の多くは入浴施設を介して発生しているが、浴槽水中のレジオネラ属菌検査は培養を基本としており、結果判定までに7-10日間要する。そこで、迅速にレジオネラ汚染を測定する方法の評価、改善を目的とした。

研究方法
DNA抽出手順を工夫し、市販の定量的リアルタイムPCR(qPCR)およびLAMP 法を利用して浴槽水のレジオネラの測定を行なった。リボソームRNAを鋳型として検出するRT-qPCRも行った。Legionella pneumophilaについて、flaAを含む7遺伝子の塩基配列の差異に基づく遺伝子型別を行い菌株の近縁図を作製した。バイオマスの指標としてのATPを浴槽水で測定した。
結果と考察
1) 浴槽水等(428試料)のレジオネラをDNA迅速検査により定量し、阻害物質の混入を避けるDNA抽出法を開発し、検出感度を向上させた。また、RT-qPCRの条件を検討し、感度を1000倍向上させた。これまで検出できなかったL. londiniensisを検出するためのプライマー・プローブを試作し浴槽水サンプルで測定できた。
2) 生菌を検出するDNA迅速検査を開発して浴槽水中のレジオネラ数の測定を実施した。
3) 現場で浴槽水のATPを測定して、迅速に浴槽を衛生管理する指標値を提案した。
4) 菌の遺伝子型と生息環境(感染源)との関係を検索し、冷却塔水由来および土壌由来に特徴的な遺伝子型を確認した。
5) 菌株識別法であるパルスフィールド電気泳動法を改良し、結果が判明するまでの日数を4日から2日に半減させた。
6) 迅速検査の対照となる培養法の改善法(非濃縮検体の並行培養、非選択培地の活用)を提言した。培養法と遺伝子検査法を組合わせ、早期のコロニーを遺伝子検査法で同定することにより、結果が得られる時期を4日間以上短縮した。
7) 環境水の濃縮、培養の段階ごとにレジオネラ属菌数の外部精度管理を行った。
8) レジオネラ属菌の同定のためのDNA-DNAハイブリダイゼーションキットに新たな菌種を追加した。
9) 浴槽水中に大量に検出されることのあるL. londiniensisの宿主アメーバの検索を行い、Naegleria属のアメーバと一部のAcanthamoeba株への感染性を認めた。

結論
DNA迅速検査を用いたレジオネラの定量により入浴施設の衛生管理が可能となった。より迅速に測定できるATP量はレジオネラ汚染の指標となる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-