地理・時間情報を加味した突発的・集中的な健康危機事象の発生を早期発見するための統計手法に関する研究

文献情報

文献番号
200840023A
報告書区分
総括
研究課題名
地理・時間情報を加味した突発的・集中的な健康危機事象の発生を早期発見するための統計手法に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ある症候が突発的・集中的に発生する事象をいち早く検出するために集積性の検定という統計手法が利用できる。本研究では我々の提案するflexible scan法をサーベイランスに適用するため時間変化を考慮した手法への拡張を行う。またより精度よく事象を同定できる統計的な手法の改良を検討しさらに実際の適用について検討を行う。
研究方法
ニューヨーク市の担当者との連携によって、米国でのサーベイランスの実情を把握する。その上で我々の提案するFleXScan法を実際のニューヨーク市のサーベイランスデータに適用し、従来法との比較を行う。またより精度よく集積地域を同定できるよう統計量の改良を試みる。改良した統計量や、また利用者からの要望に応えた新たなモデルのもとでの解析が行えるよう、アプリケーションFleXScan v3の開発を行う。
結果と考察
提案するFleXScan法は従来法に比べ複雑な形状の地域での事象をうまく検出できることが確認できた。特にニューヨーク市のデータへの適用についても理論的、数値的にはもちろん、実務家が見ても解釈できる妥当なものであることが確かめられた。一方で統計量に関する新たな問題点があることがわかった。これらは従来の方法を含め共通の問題となるが、その解決を目指して新たな検定統計量の検討を行った。いくつの方法についてその精確性が確かめられた。今後さらに改良を行った統計量の開発により、適切なサーベイランスが行えることになると考えられる。アプリケーションについてもユーザーの意見を取り入れながら、特に2項モデルについても解析が行うことができるようになり、実際の利用者にとって必要なアウトプットも行えるように改良を行った。
結論
ニューヨーク市の担当者との連携によって我々の提案するFleXScan法をサーベイランスデータに適用することができ、実際的観点からもその有効性が確認できた。統計量の問題点に対していくつかの検討を行い改良された統計量を提案できたが、依然として問題点は残っている。今後、これを解決するため更なる統計量の改良の検討が必要であり、理論的側面、実際的側面から様々な検討を行い、より適切な手法を提案したい。ソフトFleXScanについても国内外で認知されるようになってきた。今後もユーザーの声を反映しサーベイランスにおいて有用なツールとして容易に利用できるよう改良を続け、公開されることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200840023B
報告書区分
総合
研究課題名
地理・時間情報を加味した突発的・集中的な健康危機事象の発生を早期発見するための統計手法に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ある症候が突発的・集中的に発生する事象をいち早く検出するために集積性の検定という統計手法が利用できる。本研究では我々の提案するflexible scan法をサーベイランスに適用するため時間変化を考慮した手法への拡張を行う。またその研究を通してより精度よく事象を同定できる統計的な手法の改良を検討しさらに実際の適用について検討を行う。
研究方法
平面におけるflexible scan法をサーベイランスのために時間変化も考慮したものに拡張した方法を提案し、従来法との比較および精度の検討を行った。実際に米国のデータに適用した。また検定法の統計的な精度を検討するためシミュレーションデータを用いて従来法と精度の比較を行った。さらに、わが国におけるサーベイランス解析への適用の検討として小学校児童欠席数のデータを用いて実際の解析を試み、その結果をもとに更なる方法の改良について検討を行った。またニューヨーク市でのサーベイランスデータにflexible scan法を適用した解析をおこなって比較検討をおこなった。同時にアプリケーションソフトFleXScanの改良・開発を試みた。
結果と考察
提案法は従来法に比べ、複雑な形状の地域での事象をうまく検出できることが確認できた。特に実際のデータへの適用について、理論的、数値的にはもちろん、実務家が見ても解釈できる妥当なものであることが確かめられた。その一方でその理論的検討から新たな問題点がわかった。そこでその解決を目指して新たな検定統計量の検討を行い、いくつの方法についてその精確性が確かめられた。今後さらに改良された統計量の開発により、適切なサーベイランスが行えることになると考えられる。ソフトについても身近なユーザーの意見を取り入れながら、特に2項モデルについても解析や実際の利用者にとって必要なアウトプットも行えるように改良を行った。
結論
本研究で提案できた方法は、理論的および数値的、実際例の適用において、従来法で同定できないような非円状の地域でのアウトブレイクの検出においてその有効性が示された。しかし研究途中において明らかになった統計量の問題点はサーベイランスにとって大変重要な問題であり、これを解決するため更なる統計量の改良の必要性が示唆された。ソフトについても、ユーザーの声を反映しサーベイランスにおいて有用なツールとして容易に利用できるよう改良を続け、今後も公開されていくことが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200840023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来、世界的に用いられている方法の問題点を改善した新たな統計手法を提案することができ、その精度が確認できた。
臨床的観点からの成果
実際のサーベイランスデータにおいて、提案する統計手法の有用性が確認できた。
ガイドライン等の開発
研究者・実務者が利用できる形でソフトウェアの開発を行った。
(http://www.niph.go.jp/soshiki/gijutsu/download/index_j.html)
その他行政的観点からの成果
実際の利用者からの要望に応えながら、細かい点もソフトウェアの開発・改良を行い、実際の場面でユーザーが利用しやすい形に改良することができた。
その他のインパクト
国内外の研究者によってFleXScan法が取り上げられ、実際、利用もされてきている。
海外の空間疫学の専門書(Pfeiffer D et al,"Spatial Analysis in Epidemiology" 2008, Oxford)などに、そのダウンロード先もあわせて紹介されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ソフトウェアの公開

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tango T
A spatial scan statistic with a restricted likelihood ratio
Japanese Journal of Biometrics , 29 (2) , 75-95  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-