化学物質の情動・認知行動に対する影響の毒性学的評価法に関する研究ー特に遅発性影響の評価系のメカニズム解明による確立

文献情報

文献番号
200839023A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の情動・認知行動に対する影響の毒性学的評価法に関する研究ー特に遅発性影響の評価系のメカニズム解明による確立
課題番号
H20-化学・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 一之(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター リサーチリソースセンター)
  • 種村 健太郎(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 中島 欽一(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 分子神経分化制御学講座)
  • 熊ノ郷 淳(大阪大学 微生物病研究所 感染病態分野 国際研究拠点大阪大学免疫学フロンティア研究センター)
  • 冨永 貴志(徳島文理大学 香川薬学部 病態生理学講座)
  • 高森 茂雄(東京医科歯科大学 脳統合機能研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
47,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
情動・認知行動試験は心理学では繁用されるが、主観的判定に傾きやすく、物証に裏付けられた毒性評価としての利用は限定的である。本研究は、それに脳神経科学の最先端解析手法及びトキシコゲノミクス手法を組み合わせてメカニズム解明を行うことにより、客観的な毒性評価手法としての「情動・認知行動毒性」、特に、発生発達期暴露の遅発影響の評価体系を確立することを目的とする。
研究方法
胎生-幼若期にあって、発生-発達段階にある脳の特性に配慮し、マウスを用いて【発生・発達期暴露in vivo解析】、【発生・発達期暴露ex vivo・in vitro解析】、【成熟期暴露in vivo解析】及び【成熟期暴露ex vivo・in vitro解析】について、成熟時点での情動・認知行動解析とともに、中枢神経系の先端的な形態機能解析、神経幹細胞分化能解析、神経回路機能解析、シナプス伝達活性解析、網羅的遺伝子発現解析等を行う。
結果と考察
成熟期マウスへのバルプロ酸ナトリウム投与により、顕著な情動・認知障害は認められないものの、海馬にアポトーシス関連遺伝子の発現が誘導されることをPercellome法による網羅的解析により明らかにした。これにより、胎生期マウスへの経胎盤投与によって神経幹細胞の増殖阻害と分化異常、シナプス形成異常が生じることを明らかにした。また、セマフォリン分子群に属するSema4Dタンパク添加がドーパミンニューロンに対する神経保護作用を有することを示した。幼若期マウスへのパロセキチン及びフルボキサミン投与によって、成長後のマウスに不安反応性異常が生じること、幼若期マウスへのトリアゾラム投与によって、成長後のマウスに学習記憶異常が生じることを情動・認知行動解析バッテリーによって示した。膜電位感受性色素(VSD)を用いた脳機能評価系の作出に着手し、アセフェート投与が海馬に及ぼす影響の一つとしてSchaffer-CA1経路の機能異常を示した。
結論
本研究により、幼若期マウスでの神経伝達物質受容体シグナルかく乱の結果、成熟後に行動異常が顕在化すること、また、Percellome法による網羅的遺伝子発現変動解析により、遅発性中枢影響の誘発のメカニズムを推定しうることが示唆される結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-01-27
更新日
-