オールハザード・アプローチによる公衆衛生リスクアセスメント及びインテリジェンス機能の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202127027A
報告書区分
総括
研究課題名
オールハザード・アプローチによる公衆衛生リスクアセスメント及びインテリジェンス機能の確立に資する研究
課題番号
21LA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 智也(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学 医学部公衆衛生学講座)
  • 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
  • 関本 義秀(東京大学 空間情報科学研究センター)
  • 大西 光雄(国立病院機構 大阪医療センター 救命救急センター)
  • 高杉 友(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
  • 沼田 宗純(東京大学 大学院情報学環・学際情報学府/ 生産技術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、オールハザード・アプローチによる公衆衛生リスクの分析・アセスメントモデルの作成、事案発生時の迅速な状況把握・分析、効果的なリスクコミュニケーションを可能にするインテリジェンス機能のあり方の提案を主な目的とする。
研究方法
感染症・バイオテロ等、放射線および環境因子、化学物質・化学テロ、自然災害といったわが国の災害・健康危機管理において重要なハザード・驚異に関するリスクアセスメント(RA)のあり方について、国内外の事例を収集・整理を行った。また、オールハザード・アプローチのRAを実施する主要国の体制および国際機関のガイダンスを参照し、方法論や実施体制、リスクコミュニケーションを含むRAの活用のあり方等について情報収集・整理を行った。また、RAとその利活用に向けた情報システムのあり方、デジタル空間情報の利用可能性について検討した。
結果と考察
オールハザード・アプローチのRAを実践する米国、英国の方法、WHO、ECDCなどのガイダンスが推奨するRAの方法論には多くの共通点がみられた。国や地域の状況をふまえたハザード・脅威の特定、シナリオを用いた影響の大きさの検討と過去の事例等を参考にした発生可能性の推定、リスクのランクづけと優先すべきリスクの提示などである。そして、この一連のプロセスは、保健医療の関係者だけでなく、消防、警察、環境、交通などを扱う行政機関や専門家、さらにはリスクの影響を受ける可能性のある業界団体等の利害関係者を含む分野横断的な会議体において実施されていた。
新型コロナウイルス感染症への対応では、ECDC及び英国が体系的かつ迅速なRAを実施し、その結果をわかりやすく提示し、効果的なリスクコミュニケーションを可能にする体制を構築していた。
RAに関連する情報システムのあり方、そしてデジタル空間情報の活用の可能性についての分析では、RAに必要とされる情報の多くはすでにわが国において整備されており、ダッシュボードなど視覚的に理解しやすい方法での展開も実現可能な状況となっていることが明らかになった。また、デジタル空間情報は、自然災害後の被災地のインフラ・交通の被災状況の把握や感染症の伝播モデルなど、データの種類や活用範囲の幅が広く、今後社会のデジタル化が進む中、RAの実施・見直しのプロセスで活用の可能性を検討することが望ましいと考えられた。
結論
わが国ではオールハザード・アプローチのRAの実践体制が整備されていないが、米国・英国等では、国・地域で注意すべきハザード・脅威を幅広く対象とした体系的なRAが定期的に実施されており、この結果が災害・健康危機に対する事前準備に活用されていた。また、COVID-19対応におけるECDCや英国の取り組みにみられるように、健康危機の発生時に不明な点が多い状況下でも迅速かつ継続的にRAを実施し、さらにその結果を政策決定者や一般市民にわかりやすく提示することで、効果的なリスクコミュニケーションにつなげる体制を構築することも重要である。気候変動や社会情勢の変化、科学技術の進歩などに伴い未知のハザード・脅威も増えることが想定される中、わが国においても戦略的なRA体制を構築することは重要と考えられる。そのためには、WHOやECDCのガイダンスや先行する諸外国の取り組みが示すように、保健医療関係者だけでなく、多部門の行政機関、研究機関、多様なステークホルダーによる分野横断的なRA実践体制を整備することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2022-10-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202127027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,636,000円
差引額 [(1)-(2)]
364,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,301,131円
人件費・謝金 246,585円
旅費 383,433円
その他 6,305,451円
間接経費 2,400,000円
合計 11,636,600円

備考

備考
自己資金600円

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
-