薬物乱用・依存等の実態把握と「回復」に向けての対応策に関する研究

文献情報

文献番号
200838039A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存等の実態把握と「回復」に向けての対応策に関する研究
課題番号
H19-医薬・一般-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
和田 清(国立精神・神経センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 清(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 尾崎 茂(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 庄司 正実(目白大学 人間学部)
  • 嶋根 卓也(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 福永 龍繁(東京都監察医務院)
  • 宮永 耕(東海大学 健康科学部)
  • 松本 俊彦(国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部)
  • 近藤 あゆみ(新潟医療福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(研究1)薬物乱用・依存等の実態把握調査と(研究2)「回復」に向けての対応策研究を実施し、薬物乱用・依存対策の立案・評価の際の基礎資料として資する。
研究方法
(研究1)1.全国中学生調査、2.全国精神科病院調査、3.全国児童自立支援施設調査、4.大学新入生調査、5.監察医務院での薬物検出結果調査を行った。(研究2)1.社会復帰資源に関する研究、2.少年施設における教育ツール開発研究、3.家族介入の有効性研究を行った。
結果と考察
(研究1)1.有機溶剤生涯経験率は0.8%、大麻生涯経験率は0.3%、覚せい剤生涯経験率は0.3%であった。これらの値はこれまでの最低である。2.「覚せい剤症例」が52.1%と最多で、「有機溶剤症例」14.1%と合わせると全体の2/3を占めた。「睡眠薬症例」「抗不安薬症例」の割合は年々増加傾向にある。「大麻症例」は2.5%と低いが,「大麻使用歴を有する症例」は26.1%と高水準を保っていた。「リタリン症例」「リタリン使用歴を有する症例」は激減しており,保険適用病名の変更・流通管理の厳格化による効果が現れていると思われた。3.有機溶剤生涯経験率は17.1%、ガスは14.0%、大麻は7.3%、覚せい剤は2.5%であった。4.薬物乱用経験者は、大麻2名、有機溶剤1名のみで、経年的には大麻が最も乱用されている薬物であった。5.覚せい剤,MDMAが検出された。ベゲタミンAの成分が高頻度に検出された。MDMA濫用の5例は剖検によって初めてその濫用が判明した若年者であった.
(研究2)1.「モデル」的とされていた某ダルクでは、公的運営費補助の割合が拡大するにつれ、自助組織から「サービス・プロバイダー」としての「役割」が増大し、行政→理事会主導型に変遷し、運営主体と援助スタッフとの間にコンフリクトを生み出す結果となっていた。2.自習ワークブックを開発・施行し、この教材の、現実性、効率性、汎用性が確認された。3.本人の薬物乱用期間が長い例では、家族の取り組みの積極性が本人のダルク等からの離脱を防いでいることが確認された。
結論
薬物乱用経験率は減少傾向にあるが、大麻の占める割合が増加傾向にある。公的運営費補助の割合が拡大するにつれて、自助組織から「サービス・プロバイダー」としての「役割」が増大し、運営に行き詰まったダルク事例が紹介された。この事態を重く受け止める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200838039B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物乱用・依存等の実態把握と「回復」に向けての対応策に関する研究
課題番号
H19-医薬・一般-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
和田 清(国立精神・神経センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 清(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 尾崎 茂(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 庄司 正実(目白大学 人間学部)
  • 嶋根 卓也(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 福永 龍繁(東京都監察医務院)
  • 宮永 耕(東海大学 健康科学部)
  • 松本 俊彦(国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部)
  • 近藤 あゆみ(新潟医療福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(研究1)薬物乱用・依存等の実態把握調査と(研究2)「回復」に向けての対応策研究を実施し、薬物乱用・依存対策の立案・評価の際の基礎資料として資する。
研究方法
(研究1)1.全国住民調査、2.全国中学生調査、3.全国精神科病院調査、4.全国児童自立支援施設調査、5.大学新入生調査、6.監察医務院での薬物検出調査を行った。(研究2)1.社会復帰資源に関する研究、2.少年施設における教育ツール開発研究、3.家族介入の有効性研究を行った。
結果と考察
(研究1)1.生涯経験率は、有機溶剤2.0%、大麻0.8%、覚せい剤0.4%、MDMA0.2%、いずれかの薬物2.6%、有機溶剤を除いたいずれかの薬物1.2%であった。2. 生涯経験率は有機溶剤0.8%、大麻0.3%、覚せい剤0.3%であった。3.「覚せい剤症例」52.1%、「有機溶剤症例」14.1%で、両者で全体の2/3を占めた。「睡眠薬症例」「抗不安薬症例」の割合は年々増加傾向にある。「大麻症例」は2.5%と低いが、「大麻使用歴を有する症例」は26.1%と高水準を保っていた。「リタリン症例」「リタリン使用歴を有する症例」は激減し、保険適用病名の変更・流通管理の厳格化の効果が現れていた。4. 生涯経験率は有機溶剤17.1%、ガス14.0%、大麻7.3%、覚せい剤2.5%であった。5.薬物乱用経験者は、大麻2名、有機溶剤1名のみで、経年的には大麻が最も乱用されている薬物であった。6.覚せい剤、MDMAが検出された。ベゲタミンAの成分が高頻度に検出された。
(研究2)1.「モデル」的とされていた某ダルクでは、公的運営費補助の割合が拡大するにつれ、自助組織から「サービス・プロバイダー」としての「役割」が増大し、行政→理事会主導型に変遷し、運営主体と援助スタッフとの間にコンフリクトを生み出す結果となっていた。2.自習ワークブックを開発・施行し、この教材の、現実性、効率性、汎用性が確認された。3.本人の薬物乱用期間が長い例では、家族の取り組みの積極性が本人のダルク等からの離脱を防いでいることが確認された。
結論
薬物乱用経験率は減少傾向にあるが、大麻の占める割合が増加傾向にある。公的運営費補助の割合が拡大するにつれて、自助組織から「サービス・プロバイダー」としての「役割」が増大し、運営に行き詰まったダルク事例が紹介された。この事態を重く受け止める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-03-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200838039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)薬物乱用・依存の実態把握は、「違法行為の掘り起こし」的性質を持っており、どのような方法を用いても極めて実施が困難であるが、(研究1)で実施した1.全国住民調査、2.全国中学生調査、3.全国精神科病院調査、4.全国児童自立支援施設調査は、わが国唯一最大規模のものであり、方法論的にもわが国を代表する調査研究である。
2)監察医務院での薬物検出調査はバイオロジカルマーカーを用いた新しい調査法である。
臨床的観点からの成果
1) 全国精神科病院調査の結果は、社会問題化しそうな依存性薬物を予測する力をもつ有用な調査である。今回の調査により、リタリンに対する行政措置の効果が確認された。
2)少年鑑別所における薬物再乱用防止教育ツールの開発はわが国初の試みである。
3)薬物依存症者を持つ家族の家族会への関わりと当事者との関係を研究したのは初めての試みである。
4)ダルクを公的運営費補助との関係で考察した研究は初のものである。
ガイドライン等の開発
・「薬物乱用防止新五か年戦略フォローアップ」(平成20年8月22日)、および「第三次薬物乱用防止五か年戦略」策定時に、薬物乱用・依存の実態把握データとプログラム開発研究が基礎資料として利用された。
その他行政的観点からの成果
・全国精神科病院調査の結果により、リタリンに対する行政措置の効果が確認された。・厚労省は薬物乱用・依存の実態把握データを日本のデータとして国連麻薬統制委員会に提供した。・「薬物の乱用防止対策に関する行政評価・監視-需要根絶に向けた対策を中心として-」結果報告書(総務省行政評価局、平成22年3月)にて、分担研究2つが資料として引用された。
その他のインパクト
1)研究成果報告会(公開)の開催(2008.3.9、2009.3.1)
2)自ら栽培も・・・進む欧米化(東京新聞,2008.10.12)
3)サンデ-版大図解「薬物乱用」(東京新聞,2009.10.11)
4)女性と薬物依存1.(読売新聞,2009.11.11)
5)違法薬物すぐそこ①.(日本経済新聞,2009.11.17)

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
成果が・「第三次薬物乱用防止五か年戦略」策定、・リタリンに対する行政措置の効果確認、・国連麻薬統制委員会への提供、・「薬物の乱用防止対策に関する行政評価・監視」に利用された。
その他成果(普及・啓発活動)
2件
研究成果報告会(公開)の開催(2008.3.9、2009.3.1.)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
宮永耕
薬物依存者処遇におけるサービスプロバイダとしての治療共同体について
龍谷大学矯正・保護研究センター研究年報 , 5 (5) , 19-40  (2008)
原著論文2
和田 清、尾崎 茂、近藤あゆみ
薬物乱用・依存の今日的状況と政策的課題
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 43 (2) , 120-131  (2008)
原著論文3
尾崎 茂
覚せい剤精神疾患の疫学的研究
最新精神医学 , 14 (2) , 133-138  (2008)
原著論文4
松本俊彦、今村扶美、小林桜児、千葉泰彦、和田 清
少年鑑別所における薬物再乱用防止教育ツールの開発とその効果-若年者用自習ワークブック「SMARPP-Jr.」-
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 44 (3) , 121-138  (2009)
原著論文5
Ayumi Kondo, Kiyoshi Wada
The Effectiveness of a Mutual-Help Group Activity for Drug Users and Family Members in Japan
Sybstace Use & Misuse , 44 , 472-489  (2009)
原著論文6
嶋根卓也、和田 清、三島健一、藤原道弘
危険飲酒行動と薬物乱用リスクグループとの関連について-大学新入生を対象とした調査より-
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 44 (6) , 649-658  (2009)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-