タンパク質及び核酸含有製剤の高感度安定性評価法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200838025A
報告書区分
総括
研究課題名
タンパク質及び核酸含有製剤の高感度安定性評価法の確立に関する研究
課題番号
H19-医薬・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部 第二室)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷芳枝(星薬科大学 医薬品化学研究所 創剤構築研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の分解にともなうナノワットレベルの極微小な熱を検出することや、分解に必要な分子の運動を固体高分解能NMRや誘電緩和スペクトルなどによって高感度に検出することによって、保存安定性と関連する医薬品の物理化学的な特性を明らかにし、熱力学的に不安定なタンパク質や核酸などの高分子医薬品に対し、高度な製剤学的工夫を施すことにより安定化した製剤に対しても適用可能な安定性予測法を開発することを目的とする。
研究方法
ミクロ熱量計によって、凍結乾燥製剤中のβ-ガラクトシダーゼの分解に伴って発生する微弱な熱を測定し、製剤の安定性を高感度に評価する方法について検討した。また、熱刺激脱分極電流測定装置(Thermally Stimulated depolarizing Current、TSC)により凍結乾燥製剤の分子運動性を高感度に測定する手法の検討を行った。さらに、新規に合成したカチオン性コレステロール誘導体を用い、Tween80やMEL-Aなどの界面活性剤を添加することによりリポソーム表面の物性を変えた遺伝子導入用リポソームベクターを調製し、そのin vitroとマウスの経肺投与における遺伝子導入効率を検討した。
結果と考察
スクロース、トレハロースあるいはスタキオースを添加したβ-ガラクトシダーゼ凍結乾燥製剤の40℃における分解にともなう発熱はスクロース<トレハロース<スタキオースの順であり、凝集速度の順と一致した。発熱量の温度依存性はアレニウスの関係に従い、その活性化エネルギーの値をもとに予測される25℃における10%分解に要する時間はそれぞれ、3.2年、2.4年、1.6年であった。また、TCSにより、タンパク質凍結乾燥製剤のグローバルな運動性の指標であるガラス転移温度を測定できた。さらに、遺伝子導入用リポソーム製剤の遺伝子導入効率はリポソーム/DNA複合体の表面のカチオン性電位や表面の水和状態の影響を受けた。表面水和状態を制御することにより、遺伝子導入効率の高いリポソームベクターの設計が可能であることが示唆された。
結論
ミクロ熱量計がβ-ガラクトシダーゼ凍結乾燥製剤の安定性予測に有用であることを明らかにした。また、従来の方法では測定が困難なタンパク質凍結乾燥製剤の運動性を測定する手法として、TSC測定が有用であることを明らかにした。このような評価法を、表面水和状態を制御することによって遺伝子導入効率を高めた遺伝子導入用リポソーム製剤のような高度な製剤学的工夫を施した製剤に適用し、その有用性を確認することが必要と考える。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-