乳幼児期の玩具使用における健康被害防止に向けた有害性化合物の曝露評価に関する研究

文献情報

文献番号
202124024A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児期の玩具使用における健康被害防止に向けた有害性化合物の曝露評価に関する研究
課題番号
20KA3001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 哲史(千葉大学 予防医学センター)
  • 高口 倖暉(千葉大学 予防医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,956,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、子供の成長や健康影響に対する化学物質曝露による影響が着目される中、特に柔軟性や難燃性のある合成樹脂やゴム製品を作る上で有害性が指摘される多くの可塑剤・難燃剤が使用されている。こうした原材料から成る玩具は、小児が日常生活を送る上でも接触頻度が非常に高く、化学物質に対する特異的な曝露機会となるため、感受性の高い乳幼児期に玩具を口に入れるマウシングによる経口曝露は、化学物質曝露による乳幼児へのリスクを評価する上でも無視できないものと考えられる。また、乳幼児における玩具に関連した事故が多発していることからも、玩具の取り扱いに関する安全管理のための対策が必要である。そのため、本研究では、乳幼児用玩具の使用による可塑剤・難燃剤成分に関する曝露評価を実施することで,乳幼児へのリスクと将来的な健康被害の未然防止に向けたデータを得ることとする。また、玩具の取り扱いに関する事故防止のための対策の提案を目指す。
研究方法
本年度は、前年度実施した材質試験における分析法の問題点を改良し、材質試験の再試と溶出試験による口腔内への各成分の定量を模擬的に実施した。また、玩具を介した各成分の乳幼児への曝露濃度を推定するため、室内行動調査により実際の乳幼児のマウシング行動時間を調べ、曝露濃度を算出した。また、本研究では、玩具製品に含まれる未規制成分のリスクについても網羅的に調べるため、ノンターゲット分析による網羅的な解析を行った。さらに、日常における玩具の取り扱いに関する安全管理に向けた対策を考案するため、日常における乳幼児の玩具の使用状況や事故の発生状況についてアンケート調査を用いた情報収集を行った。
結果と考察
乳幼児用玩具を対象とした材質試験においては、GC-MS及びLC-MSMSを組み合わせることで、ピークの分離が困難で定量が不十分であった成分(DEHPとDEHT)においても精度良く定量することが可能となった。検出された成分については、製品ごとに組成や濃度が異なり、こうした背景には、可塑剤・難燃剤に関する各国での規制状況の違いや年代の違いが影響しているものと推測された。実際に、ノンターゲットによる網羅的な解析を行った結果について主成分分析を実施したところ、海外製かつ製造年が2010年以前の製品に特徴的な組成が認められ、可塑剤や難燃剤の他にグリコール、ノニルフェノール、ベンゾフェノンなど寄与が認められた。そのため、乳幼児が使用する玩具は、年代や材質、使用状況によって、曝露量が大きく変化することが示唆された。また、観察されたマウシング時間とアンケート調査による室内行動時間から、1日のマウシング行動時間の最大値は85分/日と見積もられ、今後は、溶出試験の結果を基に、各成分の曝露濃度の算出とリスク評価を行う予定である。さらに、ウェブでのアンケート調査の結果から、日常での使用頻度の高い玩具として、人形、歯固め、ボールなどが挙げられ、いずれもプラスチック素材のものが多く使用されている傾向にあった。また、玩具の取り扱いにおける安全面での調査においては、過去の事故経験について回答頂いたところ、小さなおもちゃの誤飲のほか、兄弟のおもちゃの誤飲やおもちゃの部品を飲み込むなどの事例が報告された。さらに、プラスチック製の玩具に関する規制の存在は十分に知られておらず、今後は、化学物質の有害性や事故発生の予防方法についての啓発が必要と考えられた。
結論
現在、国内では製造国の異なる多種類の玩具製品が流通しており、これら製品中の化学物質組成については、製造年代や国ごとの規制状況の違いによって異なることが示された。玩具を介した化学物質の曝露状況については、乳幼児の月齢に伴う室内行動の違いや生活環境の違いによっても異なるものの、多くの乳幼児が本研究で対象とした可塑剤・難燃剤を初め、有害性の異なる多種類の成分に曝露されていることが示された。今後は、本年度得られた乳幼児への化学物質の曝露濃度に関するデータを基に、乳幼児へのリスクを明らかにすると共に、玩具の取り扱いに関する安全管理のための啓発によるリスク低減のための対策が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-11-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-11-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,956,000円
(2)補助金確定額
2,956,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,395,615円
人件費・謝金 159,953円
旅費 0円
その他 401,515円
間接経費 0円
合計 2,957,083円

備考

備考
消耗品購入の事情により、補助金確定額と合計額に1083円の差額が生じたため、自己資金により補完した。

公開日・更新日

公開日
2023-09-05
更新日
-