建設工事における安全衛生の確保のための設計段階の措置の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202123009A
報告書区分
総括
研究課題名
建設工事における安全衛生の確保のための設計段階の措置の確立に向けた研究
課題番号
20JA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 直孝(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 大幢 勝利(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 研究推進・国際センター)
  • 平岡 伸隆(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 堀 智仁(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
  • 高橋 弘樹(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所建設安全研究グループ)
  • 伊藤 和也(東京都市大学 建築都市デザイン学部 都市工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,053,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、肌落ち、土砂崩壊、転倒、倒壊、爆発災害を取り上げ、災害事例分析を通じて、トンネル建設工事、法面保護工事、地盤改良工事、ビル新築工事、構造物建築工事における設計段階からの適切な安全衛生対策を抽出することを目的とする。
 また、施工の合理化・効率化だけでなく、BIM/CIMにおいて安全衛生の情報も管理できるよう、BIM/CIM図面上にリスクポイントを記載し、一覧表として直ちにリスク情報を管理できるようにすることを目的とする。
研究方法
 本研究では、国内外の行政機関等のホームページから、公開されている災害事例に関する有用な公的資料をダウンロードし、それらを分析する方法とした。分析に当たっては、機械安全分野で国際的に認められている「危険源から危害に至るプロセス」図を用いて災害事例を分析し、危険源、危険状態、対策の不足等を抽出した。また、機械安全分野のスリーステップメソッド(本質的安全設計、安全防護、使用上の情報の提供)を用いて、「危険源から危害に至るプロセス」の上流から各安全衛生対策を提案した。さらに、各対策を実行する上で権限のある者を対策の実施者として明確化した。
 また、国内外でBIM/CIMソフトウェアとして最も利用者の多いAutodesk Revitを採用し、その中の部品(ファミリ)として、リスクポイントを新たに作成した。リスクポイントはRevitの図面上で任意の位置に配置できるように作成し、リスクの種類、リスクの大きさ、考慮すべきフェーズ、対策等を属性情報として登録可能なように作成した。また、配置した全てのリスクポイントの属性情報は、一覧表として直ちに出力できる仕様とした。
結果と考察
 トンネル建設工事、法面保護工事、地盤改良工事、ビル新築工事、構造物建築工事の肌落ち、土砂崩壊、転倒、倒壊、爆発災害とかなり限定的ではあるが、同種工事の同種災害については、本質的安全設計方策を含めて再発防止対策を提案することができたと考えている。これまでの取り組みでは、どうしても工学的対策以下が主な再発防止対策であったが、本質的安全設計方策まで言及できた意義は大きいと考えている。
 これらの本質的安全設計方策は、企画、基本計画、基本設計、実施設計等の企画・設計段階で考慮する必要がある。そのためには、近年、建設プロジェクトのライフサイクルを通して、情報を一貫して管理するために着目されているBIM/CIMを有効に使うことが望まれる。
 本研究では、BIM/CIMソフトウェア上にてリスクポイントを新たに開発した。開発したリスクポイントは、任意の建設プロジェクトファイルに複数設置することが可能である。このように、設計段階において想定される全てのハザード/リスクをプロジェクトファイルに配置することで、設計から施工、施工から維持管理へとリスク情報が一貫して活用される仕組みを構築できたと考えている。
 また、本研究にて開発したリスクポイントは、BIM/CIMの部品の特徴である属性情報(リスクの種類、リスクの大きさ、対策等)に加えて、パラメトリックに大きさ、色、材料等を変化させることができる。当然ながら、基本設計、実施設計等の各段階で想定されるハザード/リスクが新に出現した場合には、その都度、リスクポイントを新たに配置できる。一方、除去又は許容可能なリスクレベルまで低減できたリスクについては、その旨、属性情報に記載し、色(マテリアル)を黄色から緑色等に変更すれば良い。
 さらに、BIM/CIMのプロジェクトファイルに配置した全てのリスクポイントのリスク情報は、いつ、どの段階においても直ちに一覧表として出力することができる。これは、英国やシンガポールの規則に謳われているリスク登録表に位置付けることが可能と考えている。
結論
 各工事の各種災害について、本質的安全設計方策を含めて再発防止対策を提案することができた。企画、基本計画、基本設計、実施設計等の企画・設計段階にて、これらの本質的安全設計方策を考慮するため、建設プロジェクトのライフサイクルを通して、安全衛生情報を一貫して管理できるよう、本研究にてBIM/CIMソフトウェアのリスクポイントを開発した。開発したリスクポイントは、BIM/CIM図面上の任意の位置に配置し、リスクの種類、リスクの大きさ、考慮すべきフェーズ、対策等を属性情報として登録可能である。また、配置した全てのリスクポイントの属性情報は、一覧表として直ちに出力することができる。さらに、開発したリスクポイントは、同じソフトウェアを用いている全ての建設プロジェクトにおいて利用可能である。
 このように、新たに作成したリスクポイントを利用し、設計段階からリスク情報を一貫して管理できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202123009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,904,000円
(2)補助金確定額
4,556,000円
差引額 [(1)-(2)]
348,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,538,600円
人件費・謝金 0円
旅費 100,200円
その他 1,066,200円
間接経費 851,000円
合計 4,556,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
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