加速器トンネルにおける位置情報を活用した防災アプリの開発

文献情報

文献番号
202123002A
報告書区分
総括
研究課題名
加速器トンネルにおける位置情報を活用した防災アプリの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
19JA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
石井 恒次(大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
10,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では労働安全衛生総合研究の方向性であるIoTを活用した安全管理システムの開発を行う。開発する防災アプリは加速器トンネルのような巨大な閉空間での使用が可能あり、双方向通信できることで災害時の瞬時情報共有や、無線LAN測位システムによる作業者位置特定をリアルタイムに実現する。J-PARC MR加速器トンネルに導入して定常的に運用して、システムの有用性を実証する。
研究方法
早い段階で防災アプリを導入し、作業者に利用してもらってフィードバックを行い、既存の安全システムと統合して完成させる予定である。また研究発表等を通し、国内外の加速器施設等へシステムの普及活動を行い、他の研究施設への展開を促進することも予定している。初年度(2019年度)に、必要な設備の設置等を行い、次年度(2020年度)の7月からユーザ利用の運用を開始した。停電時対策や放射線測定との連動も実現させ、当初予定には無かった地上施設でのシステム展開や映像通信を利用した日常作業の支援等も、ユーザからのフィードバックにより実現することとなった。
最終年度(2021年度)は、1)災害時対策の充実へ向けての研究開発、2)安全システムへの組み込みに向けての研究開発、3)日常使用の利便性向上、4)他施設への展開(広報活動)の4本柱で研究を進める。完成という観点からは、特に2)の研究開発が重要となってくる。既存の安全システムは主に放射線防護を念頭に構築されているためとても高度なものとなっている。防災アプリを安全システムに組み込むことにすると、スマートフォンと携帯する作業者との確実な紐づけ、トンネル内入域者がスマートフォンを携帯しないと入域できない仕組みを構築する必要がある。技術的には顔・指紋認証等を導入することで実現可能ではあるが、統合した安全システムを構築するには莫大なコストがかかり、時間的にも安全性の確認に数年程度は必要である。またコロナ禍で適当な施工業者も見つけることができていない。アプローチ的に適切でないと判断し、独立した安全システムの構築の方向で研究開発を行う。
結果と考察
2021年度(3年目)はコロナ禍の影響で、予定通り達成した項目と修正を余技なくさせられた項目がある。日常使用の利便性向上として、QRコードを導入して放射線測定位置の精度を向上させたり、注意喚起の設定を可能にして危険区域に近づいた時には自動的に警告を発してスマートフォン所持者に知らせる機能を持たせたりした。また独立した安全システムへの構築でも自動追尾が可能なロボットの活用に着目し、MRトンネル内でロボットの試験を始めた。一方で試験や開発は十分ではなく、特にロボット活用は中途半端な状態である。開発を協力してもらっている研究者が、現場であるJ-PARCに来所するのが難しい状況が続き、現場状況に即した開発が進まなかった。また他施設への展開や広報活動に関しても、3件の学会発表や2件の論文発表、1件のプレスリリースも行うことができたが、他施設へ赴いての展開を視野に入れた議論等をすることは実現できなかった。そこで1年間の予算繰越を行い、研究開発や広報活動の補完を実施することにした。
結論
防災アプリとしては1年以上の期間に渡り、安定に稼働しており、完成したと見なすことができる。今後、独立した安全システムへの構築を目指し、ロボット等の活用を検討する。研究期間の1年延長により、広報活動を含めた研究開発を継続し、当初目標を達成する。

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202123002B
報告書区分
総合
研究課題名
加速器トンネルにおける位置情報を活用した防災アプリの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
19JA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
石井 恒次(大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では労働安全衛生総合研究の方向性であるIoTを活用した安全管理システムの開発を行う。開発する防災アプリは加速器トンネルのような巨大な閉空間での使用が可能あり、双方向通信できることで災害時の瞬時情報共有や、無線LAN測位システムによる作業者位置特定をリアルタイムに実現する。J-PARC MR加速器トンネルに導入して定常的に運用して、システムの有用性を実証する。
研究方法
早い段階で防災システムの運用を開始し、利用者からのフィードバックを得てシステムを段階的に発展させる。防災システムとして必須である停電時の対策を整え、全入域者に対して使用可能な状況にするとともに、既存の放射線安全を主にした安全システムとの統合を模索する。また研究発表等を通し、国内外の加速器施設等へシステムの普及活動を行い、他の研究施設への展開を促進することも検討する。システム運用後としては、1)災害時対策の充実へ向けての研究開発、2)安全システムへの組み込みに向けての研究開発、3)日常使用の利便性向上、4)他施設への展開(広報活動)の4本柱で研究を進める。
結果と考察
初年度(2019年度)にMR 加速器トンネルでの運用が可能になるよう、無線LANのアクセスポイント(AP)をトンネル全周に配備し、作業者が携帯するスマホ端末を整備した。数回の試験運用を行ってアプリの改修を重ね、有事の際に最大限活用できるよう、平常時においても常に使われるようなシステムを構築した。
次年度(2020年度)の早い段階でユーザ利用の本格運用が開始できた。また停電時対策としてリチウム蓄電池を導入し、計画停電時に試験をしての実証を行った。またスマホ端末に放射線測定器を接続し、位置と放射線測定値との連動測定を可能にした。さらに映像通信の研究開発を行い、スマホカメラを用いた映像通話や360度カメラを用いた映像通話も可能にした。この1年で防災システムとしての機能が大きく向上したものと考えている。
最終年度(2021年度)はコロナ禍の影響で、予定通り達成した項目と修正を余技なくさせられた項目がある。日常使用の利便性向上として、QRコードを導入して放射線測定位置の精度を向上させ、注意喚起の設定を可能にして危険区域に近づいた時には自動的に警告を発してスマートフォン所持者に知らせる機能を持たせた。また独立した安全システムへの構築でも自動追尾が可能なロボット・ドローンの活用に着目し、MRトンネル内で試験を始めた。ロボット・ドローンの試験や開発は十分ではなかったため、2022年度にかけて1年間の延長をして開発を進めた。台車ロボットを自己開発し、人検知追随や指定位置自動移動を開発して搭載し、試験を実施した。課題はあるものの、有効性は認められる結果となった。
他施設への展開や広報活動に関しては、4年間で8件の学会発表、5件の論文発表、1件のプレスリリースを行うことができた。議論が活発な研究会が徐々に復活してきており、今後も機会を捉えて発表・議論を継続していく考えである。
早い段階でユーザ利用が開始され、停電時対策等の整備が進んで防災システムとして実証できたことは大変嬉しい。またユーザからのフィードバックを受け、当初予定になかった機能を持たせることに成功したことも大変有意義だったと考えている。一方で利用率は半分程度に留まったため、少しでも作業者が負担を感じるようなものは強制力無しでは難しいと実感した。放射線安全が主目的の現行安全システムに対し、統合ではなく独立の方向性を考え、かつ強制力の必要ないロボット・ドローンの活用に活路を見出し、開発と試験を繰り返して将来の活用に目途を付けた。加速器トンネル等の研究施設や工場等において、災害時の安全を担保する防災システムの在り方に一つの解を示したと考えている。
結論
防災アプリとしては2年以上の期間に渡り安定に稼働しており、完成したと見なすことができる。今後も継続して使用することで、ユーザからのフィードバックを得て、将来の防災システム構築への指針に充てたい。また研究会などの機会を捉えて、J-PARC MR 加速器トンネルで実現した防災システムの宣伝や議論を行い、他研究施設等で採用されるよう働きかけていく所存である。さらに独立した安全システム構築を念頭にロボット・ドローンの活用を視野に入れ、将来、他研究施設等で採用されて導入が実現するよう、継続して努力を行う予定でいる。

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202123002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
東日本大震災の教訓を得て、巨大な閉空間である加速器トンネル内のどこに作業者が居るかをリアルタイムで検知できるシステムを開発、J-PARC MR加速器トンネルに導入した。地上の管理者と地下の作業者間で一斉に情報通信が可能なため、災害時の避難誘導や救助に役立つものと期待している。国内外の加速器関連の学会を中心に発表を行い、好評を得ている。本防災システムは加速器研究施設としては世界初の試みであり、今後は他の研究施設での普及を期待している。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
2022年3月30日に報道機関向けに記者会見をJ-PARCで開催し、翌31日はプレス発表を行いました。記者会見は飛島建設、J-PARCセンター、綜合警備保障株式会社(ALSOK)、関西大学総合情報学部田頭研究室と共同で開催しています。また新聞社等7社から各1名に参加いただき、各新聞・雑誌等で記事が掲載されました。

発表件数

原著論文(和文)
5件
加速器学会2019・2020・2021・2022・2023のプロシーディング
原著論文(英文等)
1件
Proceeding of International Particle Accelerator Conference 2021
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
加速器学会2019・2020・2021・2022・2023・SATテクノロジー・ショーケース2022
学会発表(国際学会等)
3件
International Technical Safety Forum 2019・2022・International Particle Accelerator Conference 2021
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
2022年3月30日J-PARCで記者会見

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-02-15
更新日
2025-05-26

収支報告書

文献番号
202123002Z