細菌性食中毒の防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
200837030A
報告書区分
総括
研究課題名
細菌性食中毒の防止対策に関する研究
課題番号
H19-食品・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 進(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品研究所)
  • 小西 良子(国立医薬品食品研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.食品の製造加工に用いられる機器について、食中毒細菌汚染防止の観点から機器の衛生要件を究明する。
2.鶏卵によるサルモネラ食中毒の防止対策のそれぞれについて個別に便益を計測する手法を検討する。コールドチェーンの導入によるサルモネラ食中毒防止の経済効果を推定する。
3.腸炎ビブリオ食中毒の防止対策に資するために市販のアジと二枚貝について腸炎ビブリオ汚染実態を究明する。

研究方法
1.食品製造加工機器に用いられるステンレス表面とボルト上でのサルモネラの生残実験を行なった。各器材表面にサルモネラ菌液を接種してから、生残菌数の変化を測定した。
2.食中毒リスクをモンテカルロシミュレーションによって推定し、各対策による便益への寄与度を計測した。定量化可能な社会的費用として、物流コストの増加等を抽出することによって、コールドチェーン導入によるサルモネラ食中毒防止の経済効果を求めた。
3.市販のアジと2枚貝の腸炎ビブリオ汚染実態について血清型を含めた調査を昨年度と同じ方法で行った。

結果と考察
1.ステンレス上でのサルモネラの生残については、ステンレスの組成と研磨度の相違による影響は見られなかった。ボルトにおける菌の生残に関しては、綿棒を用いる通常の拭取り方法とボルトを緩衝液に漬け込む方法の間に、大きな検出感度の差異が認められたことから、拭取り方法の改良が必要である。
2.各対策の寄与度は、日付表示義務が 20%、コールドチェーンが 50%、ワクチンが 30%と推定された。社会的便益はコールドチェーンの寄与度を用いて平均約737億円と算出され、費用便益比は平均1.05と推定された。
3.tdh陽性菌はアサリでは9.5%、アジでは2.9%から検出され、アサリでの汚染率が高かった。また、1gあたり100の総腸炎ビブリオ数を超える検体の割合はアサリでは23.9%、アジでは7.3%とアサリで高いことが認められるなど、腸炎ビブリオの汚染源対策の評価と構築のために有用な知見が得られた。

結論
食品の製造加工に用いられる機器の衛生管理の監視に必要な菌の生残に関するデータを得た。鶏卵のコールドチェーン導入に伴う経済効果を推定した。市販のアジと2枚貝の腸炎ビブリオ汚染実態の現状を明らかにした。以上より、食中毒対策の構築と評価に有用な知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
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