医療機関における医療安全および業務効率化に資する医薬品・医療機器のトレーサビリティ確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202122025A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における医療安全および業務効率化に資する医薬品・医療機器のトレーサビリティ確立に向けた研究
課題番号
20IA2010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
美代 賢吾(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 医療情報基盤センター)
研究分担者(所属機関)
  • 髙本 真弥(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 医療安全管理室)
  • 大原 信(筑波大学  医学医療系 臨床医学域 医療情報マネジメント学)
  • 折井 孝男(NTT東日本関東病院 薬剤部 )
  • 笠松 眞吾(福井大学 医学部附属病院)
  • 近藤 克幸(秋田大学)
  • 武田 理宏(大阪大学医学部附属病院 医療情報部)
  • 高橋 弘充(東京医科歯科大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 藤田 英雄(自治医科大学 附属さいたま医療センター)
  • 植村 康一(一般財団法人流通システム開発センター ソリューション第1部)
  • 稲場 彩紀(一般財団法人流通システム開発センター ソリューション第1部)
  • 渡邉 勝(宮城県立こども病院 診療情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療現場では、多種多様な医薬品、医療機器が用いられ、それらを間違いなく適切に使用することが日々求められている。平成30年度の「医療機関におけるUDI利活用推進事業(厚生労働省)」では、UDI(Unique Device Identifier:機器固有識別子でバーコードやRF-ID等で製品に直接表示)の院内での活用について検討され、有効期限切れや、使用した医療機器の把握において、UDI活用の優れた効果が確認されている。一方、課題として、その導入コストが挙げられており、これは、現在の電子カルテシステムの機能では、十分にUDIを活用できないことを示唆している。
加えて、偽薬防止、リコールの迅速化、使用後の診療報酬への反映、特定生物由来製品などのロットの長期保管など、製造から消費までの一貫したトレーサビリティの確立が求められているが、現状では、「院外の製造・流通」と「院内物流・使用」で、トレーサビリティは分断されている。
令和元年11月、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が改正され、製造業者によるバーコードの貼付が義務化され、利活用ための環境は整いつつある。そこで、本研究では、院内でのUDI利活用を促進するとともに医療機器製造業者・卸業者を含む院外の流通とも一貫したトレーサビリティを確保するための課題を抽出し、医療機関での普及を促進する方策について研究をおこなう。
研究方法
医療機関におけるバーコード、RF-ID利用のユースケースを収集し、医療安全および業務効率化に資するための方策を検討する。各社の電子カルテの機能について具体的な調査をおこなった上で、備えるべき機能および運用について、標準的な「手順書」を作成するとともに、電子カルテがパッケージとして備えるべき標準機能の提案を行う。医療機関で、バーコード・RF-IDを活用するための課題を整理し、医療機関が導入するための資料を提示する。また、海外の状況についても調査を行い、日本の医療機関の現状を踏まえた手順書とする。
結果と考察
1. 医療機関内でのバーコード、RF-ID使用のユースケース
手術部門および薬剤部門におけるGS1バーコードの活用は、部門業務の効率化と質の向上に非常に有用であることが示唆され、今後は電子カルテを利用した病棟でのバーコード活用が進むことが期待された。導入の壁としては、パッケージ版の電子カルテの機能がユーザーフレンドリーでないこと、病院全体の運用を変えることやマスタの整備に対する負荷があげられた。収集した76のユースケースの中から、他の医療機関において、医療安全・業務効率化の参考となる取り組みとして、複数のベストプラクティスを選定し、手順書に収載することとした。

2.医療機関での導入に関わる諸課題の解決
バーコードリーダーの性能比較においては、バーコードの読み取り時間、使いやすさと、リーダーの費用に関しては相関は無いことが示された。また、医薬品と医療機器では、使いやすいバーコードリーダーは異なることが示され、手順書には、医療安全・業務改善に資するバーコードリーダーの選定について記載した。また、ロット番号や有効期限が記載されているEPC Memory領域のPacked Object形式で記録される情報を取り出すためのデコードモジュールの開発を行った。このモジュールを医療機関に提供することで、各医療機関において、RFIDからロット、有効期限を容易に取得できる環境の整備が期待される。

3.国際的な状況把握
医薬品のバーコード表示は各国で進められているが、多くの国では偽造品混入防止、リコールの迅速化の目的で、箱単位への表示にとどまっている。これに対し日本は、患者安全を目的とし調剤包装への表示まで行っており、先進的であるとの意見があった。GS1標準のRFID導入に関して、医療業界としての取り組みが行われるのは日本が初めてとの意見があった。GS1本部(英国)からは、世界の状況について報告を受け、一部の国では電子カルテシステムの基本機能として、GS1バーコードの読み取り機能が装備されていることが確認された。
結論
以上の成果を踏まえ、システム導入のための課題とその方策について、「医療機関における標準バーコード・RFID導入・活用手順書」としてまとめた。日本におけるこれまでの先進的な事例は、その多くの部分が属人的な努力によって構築、運用されてきた。今後、全国の医療機関に拡大するには、個人が持つ経験や知識を、明示的にまとめ、それを提示する必要がある。今回作成した手順書は、その役割を担うことが出来ると確信している。この手順書が多くの医療機関の職員の目に触れ、医療機関と医療従事者、そして多くの患者にとって、有用なシステムや仕組みが普及することを望む。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122025B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機関における医療安全および業務効率化に資する医薬品・医療機器のトレーサビリティ確立に向けた研究
課題番号
20IA2010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
美代 賢吾(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 医療情報基盤センター)
研究分担者(所属機関)
  • 髙本 真弥(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 医療安全管理室)
  • 大原 信(筑波大学  医学医療系 臨床医学域 医療情報マネジメント学)
  • 折井 孝男(NTT東日本関東病院 薬剤部 )
  • 笠松 眞吾(福井大学 医学部附属病院)
  • 近藤 克幸(秋田大学)
  • 武田 理宏(大阪大学医学部附属病院 医療情報部)
  • 高橋 弘充(東京医科歯科大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 藤田 英雄(自治医科大学 附属さいたま医療センター)
  • 植村 康一(一般財団法人流通システム開発センター ソリューション第1部)
  • 前川 ふみ(一般財団法人流通システム開発センター コード管理部)
  • 稲場 彩紀(一般財団法人流通システム開発センター ソリューション第1部)
  • 渡邉 勝(宮城県立こども病院 診療情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療現場では、多種多様な医薬品、医療機器が用いられ、それらを間違いなく適切に使用することが日々求められている。平成30年度の「医療機関におけるUDI利活用推進事業(厚生労働省)」では、UDI(Unique Device Identifier:機器固有識別子でバーコードやRF-ID等で製品に直接表示)の院内での活用について検討され、有効期限切れや、使用した医療機器の把握において、UDI活用の優れた効果が確認されている。一方、課題として、その導入コストが挙げられており、これは、現在の電子カルテシステムの機能では、十分にUDIを活用できないことを示唆している。
加えて、偽薬防止、リコールの迅速化、使用後の診療報酬への反映、特定生物由来製品などのロットの長期保管など、製造から消費までの一貫したトレーサビリティの確立が求められているが、現状では、「院外の製造・流通」と「院内物流・使用」で、トレーサビリティは分断されている。
令和元年11月、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が改正され、製造業者によるバーコードの貼付が義務化され、利活用ための環境は整いつつある。そこで、本研究では、院内でのUDI利活用を促進するとともに医療機器製造業者・卸業者を含む院外の流通とも一貫したトレーサビリティを確保するための課題を抽出し、医療機関での普及を促進する方策について研究をおこなう。
研究方法
医療機関におけるバーコード、RF-ID利用のユースケースを収集し、医療安全および業務効率化に資するための方策を検討する。各社の電子カルテの機能について具体的な調査をおこなった上で、備えるべき機能および運用について、標準的な「手順書」を作成するとともに、電子カルテがパッケージとして備えるべき標準機能の提案を行う。医療機関で、バーコード・RF-IDを活用するための課題を整理し、医療機関が導入するための資料を提示する。また、海外の状況についても調査を行い、日本の医療機関の現状を踏まえた手順書とする。
結果と考察
1. 医療機関内でのバーコード、RF-ID使用のユースケース
手術部門および薬剤部門におけるGS1バーコードの活用は、部門業務の効率化と質の向上に非常に有用であることが示唆され、今後は電子カルテを利用した病棟でのバーコード活用が進むことが期待された。導入の壁としては、パッケージ版の電子カルテの機能がユーザーフレンドリーでないこと、病院全体の運用を変えることやマスタの整備に対する負荷があげられた。収集した76のユースケースの中から、他の医療機関において、医療安全・業務効率化の参考となる取り組みとして、複数のベストプラクティスを選定し、手順書に収載することとした。

2.医療機関での導入に関わる諸課題の解決
バーコードリーダーの性能比較においては、バーコードの読み取り時間、使いやすさと、リーダーの費用に関しては相関は無いことが示された。また、医薬品と医療機器では、使いやすいバーコードリーダーは異なることが示され、手順書には、医療安全・業務改善に資するバーコードリーダーの選定について記載した。また、ロット番号や有効期限が記載されているEPC Memory領域のPacked Object形式で記録される情報を取り出すためのデコードモジュールの開発を行った。このモジュールを医療機関に提供することで、各医療機関において、RFIDからロット、有効期限を容易に取得できる環境の整備が期待される。

3.国際的な状況把握
医薬品のバーコード表示は各国で進められているが、多くの国では偽造品混入防止、リコールの迅速化の目的で、箱単位への表示にとどまっている。これに対し日本は、患者安全を目的とし調剤包装への表示まで行っており、先進的であるとの意見があった。GS1標準のRFID導入に関して、医療業界としての取り組みが行われるのは日本が初めてとの意見があった。GS1本部(英国)からは、世界の状況について報告を受け、一部の国では電子カルテシステムの基本機能として、GS1バーコードの読み取り機能が装備されていることが確認された。
結論
以上の成果を踏まえ、システム導入のための課題とその方策について、「医療機関における標準バーコード・RFID導入・活用手順書」としてまとめた。日本におけるこれまでの先進的な事例は、その多くの部分が属人的な努力によって構築、運用されてきた。今後、全国の医療機関に拡大するには、個人が持つ経験や知識を、明示的にまとめ、それを提示する必要がある。今回作成した手順書は、その役割を担うことが出来ると確信している。この手順書が多くの医療機関の職員の目に触れ、医療機関と医療従事者、そして多くの患者にとって、有用なシステムや仕組みが普及することを望む。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内外の18種類のバーコードリーダーの性能比較をおこなった。読み取り時間や使いやすさと、機器の価格に相関が無いことが示された。また、医薬品と医療機器では、使いやすい機種は異なることが示され、後述の活用手順書に、機種選定方法の記載をおこなった。また、医療用RFIDにロット番号や有効期限が記載されているUSER Memory領域のPacked Object形式のデコードモジュールの開発を行った。このモジュールを医療機関に提供することで、ロット番号、有効期限を容易に取得できる環境が整備される。
臨床的観点からの成果
本研究で把握したユースケースからは、医療現場において、バーコードやRF-IDが活用できる場面は、非常に多く、医療安全及び、効率化の面で大きな期待があることが明らかとなった。後述する手順書において、ベストプラクティスを示すことで、導入を検討する医療機関の参考となることを期待している。同時に「医療機関における標準バーコード・RF-ID 導入・活用手順書」には、バーコードリーダーの性能評価など、導入を検討する医療機関が参考となる項目の調査結果も盛り込んでおり、有効に活用されることを期待する。
ガイドライン等の開発
研究班および有識者を中心に執筆し、1.医療用バーコード、医療用RFIDの概要、2.医療機関内での活用のユースケースとベストプラクティス、3.医療機関での効果的な活用のために、4.GS1バーコードを診療に活用するためのシステム仕様書記述のためのポイント、5.業界団体における取り組み、について150ページからなる「医療機関における標準バーコード・RF-ID 導入・活用手順書」を作成した。
その他行政的観点からの成果
活用手順書の冊子を、主要な医療機関および関係者に配布するとともに、PDF化したものを一般に公開した。活用手順書には、インプラント管理、薬剤、手術、カテーテル管理、滅菌、一般医療材料管理などのユースケースが含まれており、これらを導入する際に必要な仕様書のひな型についても提供している。また、医療用バーコードやRFIDを医療機関が利活用するために必要な情報がまとめられており、今後これを活用して、導入する医療機関が増えることが期待され、医薬品・医療材料の効率的な管理や、医療安全の一層の向上が期待できる。
その他のインパクト
JSTの提言書「感染症に強い国づくりに向けた感染症研究プラットフォームの構築に関する提言」に「メディカルロジスティクス;Track and Trace が実現する医療の未来」として、また「GS1 Healthcare Reference book 2020-2021」に、「Successful implementation of electronic health record system for traceability of medical materials」として掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドライン(手順書)作成 1件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
講演5件 ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
2023-06-14

収支報告書

文献番号
202122025Z