効果的な集団精神療法の施行と普及および体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202118046A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な集団精神療法の施行と普及および体制構築に資する研究
課題番号
21GC1015
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 大介(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 俊暁(慶應義塾大学 医学部)
  • 中川 敦夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 中島 美鈴(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター 臨床研究部)
  • 岡田 佳詠(国際医療福祉大学成田看護学部)
  • 大嶋 伸雄(東京都立大学 大学院人間健康科学研究科)
  • 岡島 美朗(自治医科大学 総合医学Ⅰ)
  • 佐藤 泰憲(慶應義塾大学)
  • 吉永 尚紀(宮崎大学医学部看護学科)
  • 耕野 敏樹(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター 医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.集団精神療法のエビデンスの整理:Common mental illnessの集団精神療法に関する国内外の研究知見を概観する。
2.実態調査:国内の全医療機関を対象に、集団精神療法の実施状況や課題に関する調査を行う。並行して、海外情報を、専門家へのヒアリングを通じて収集する。
3.研修と質担保の方法論の確立:集団精神療法の質担保のために施行者に望まれる要素とその評価法を明確化し、コンサルテーション・スーパービジョン)の方法を確立する。
4.集団認知行動療法のプログラムの作成と実証研究
研究方法
うつ病、不安症、統合失調症に関する国際ガイドラインのレビュー、集団認知行動療法の質の評価尺度の系統的レビュー、全国の医療機関を対象とした実態調査、多職種を対象とした研修に関するアンケート、海外の治療マニュアルを参考にした治療マニュアルの作成とパイロット試験を実施した。
結果と考察
1.集団精神療法のエビデンスの整理
・うつ病においては、集団精神療法は個人精神療法より人的コストが少なく、多くの患者に提供できることから、軽症例に対するうつ病初期治療の低強度治療の一つとして推奨される。特に若年者や高齢者の軽症うつ病の初期治療として、通常治療への併用が有用である。
・不安症に対する治療に、集団認知行動療法が選択肢になりうる。本邦における不安症に対する精神療法を普及するためには、集団精神療法を治療選択肢の一つに位置づけるとともに、対象の特性を踏まえたプログラムの内容の検討と、治療全体における集団療法の使いどころ・位置づけについて検討する必要が示唆される。
・統合失調症については、集団精神療法は、薬物療法などと複合しながら、患者のニーズに合わせて利用することが推奨される。具体的なアプローチには、ソーシャルスキルトレーニング、心理教育、アート・セラピー、認知行動療法、家族介入コンピューターを用いた認知矯正療法があげられる。
2.集団精神療法の実態調査
全国の医療機関を対象とした実態調査(回答数730件:回収率19.6%)では、集団精神療法の実施施設は回答施設の27.6%であり、病院規模(外来患者数)や施設種類(単科精神科病院や大学病院・ナショナルセンターで実施率が高い)の影響を受けた。実施プログラムは平均4.2種類、実施頻度は平均1.4週に1度、1セッションの時間は平均77.2分、回数は平均9.2回、参加人数は平均8.2人、治療者数は平均2.4人であった。対象疾患は、うつ病(128件)、統合失調症(110件)、発達障害(107件)の順に多かった。内容は心理教育(139件)、認知行動療法(128件)、社会生活スキルトレーニング(120件)の順に多かった。入院・通院集団精神療法以外に、デイケア/ナイトケア、ショートケアで多くコスト算定していた。
自施設の集団精神療法が「充足していない」「どちらかというと充足していない」と回答したのは104件(51.8%)で、「労力・コストが報酬に見合わない」が130件(64.7%)、「職員の人数が足りない」が112件(55.7%)、「職員が集団精神療法に従事する時間がない」が93件(46.3%)などの課題が指摘された。
3.研修と質担保の方法論の確立
システマティックレビューにより7つの集団認知行動療法の治療者を評価する尺度が見い出されたが、特定の疾患や技法に限定されており、対象・技法・セッティングを越えて使用できる評価基準の作成が必要と考えた。
集団精神療法の実施経験のある専門職を対象とした調査が実施され(回答者97名)、研修の受講状況は個人差が大きかった。研修は、認知行動療法的アプローチに関する、講義と演習で構成される対面研修が多かった。スーパービジョンを受けていない者が約7割であった。研修やスーパービジョンの受講の機会が少ないこと、スーパーバイザーの養成が必要という課題が指摘された。
4.集団認知行動療法のプログラムの作成と実証研究
アメリカ心理学会が推奨するマニュアルに基づいて、8セッションからなる集団認知行動療法プログラムが作成され、パイロット試験が実施された。抑うつ、不安、認知行動療法スキルの活用や知識に、ストレス対処などにおける有効性が期待される。本研究を通して、事前準備、セッション外の連携とルール作りなど、集団認知行動療法の実施におけるいくつかの留意点が確認された。
結論
うつ病、不安症、統合失調症に関する海外ガイドラインにおける集団精神療法の位置づけを整理した。国内の医療機関における集団精神療法の実施状況や課題を明らかにした。集団精神療法の質担保のために、評価法を確立し、研修やスーパービジョン体制の整備、スーパーバイザーの養成が急務と考えられた。集団認知行動療法のプログラムが作成され、パイロット試験が実施された。今後、ランダム化比較試験による実証が期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
11,293,000円
差引額 [(1)-(2)]
707,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,790,671円
人件費・謝金 2,082,668円
旅費 1,260円
その他 4,650,252円
間接経費 2,769,000円
合計 11,293,851円

備考

備考
自己資金851円。

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-