ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202118027A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究
課題番号
20GC1022
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松崎 尊信(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 精神科)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 米厚(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
  • 原田 豊(鳥取県立精神保健福祉センター)
  • 館農 勝(ときわ病院)
  • 治徳 大介(東京医科歯科大学医学部附属病院 精神科)
  • 高野 歩(東京医科歯科大学 保健衛生学研究科 精神保健看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,366,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネットの急速な普及と、オンラインゲームを中心としたゲームの隆盛により、自らのゲーム行動をコントロールできず、日常生活に支障をきたす人々の問題が世界中で広がっている。このような状況を踏まえ、世界保健機関は、2019年「ゲーム障害」を精神疾患に収載したICD-11を承認した。ゲーム障害の健康・社会生活への影響は大きく、昼夜逆転、遅刻・欠席、学業の成績低下、家族への暴言・暴力、引きこもり等が多くの患者に見られている。しかし、日本におけるゲーム障害の実態について、まだ不明な点が多く、相談機関や専門的治療を行っている医療機関も限られている。そこで、ゲーム障害の対策を提言し、ゲーム障害の相談・治療ニーズに適切に対応できる体制整備に寄与することを目的とする。また、臨床現場で利用できるゲーム障害の診断ガイドラインについて検討する。
研究方法
○ゲーム障害の実態調査
○相談機関向け対応ガイドライン、教育機関向け対応マニュアルの作成
○ゲーム障害の標準的治療法の開発と効果検証
○ゲーム障害に関する研究のreview
を実施する。
結果と考察
1)令和1年実施したゲーム使用に関する全国調査のデータを解析し、ゲーム使用の実態、問題となる使用状況、出現した症状、社会生活障害等の実態を明らかにするための分析を行った。大多数の若者がインターネットやゲームを用いていることがわかり、ゲーム障害対策はこの世代の健康問題としても重要な課題である。
2)全国の精神保健福祉センターにおけるゲーム依存に関する相談の状況、それぞれの課題ごとの内容、対応についてアンケート調査を実施し、マニュアル作成に関して検討した。課題によって適切な対応が求められ、また、対象者の年代、家庭や学校・職場などの環境、発達障害の有無などの視点も重要であり、マニュアル作成に関しては、総合的な視野に立った検討が必要である。
3)令和3年6〜7月に日本児童青年精神医学会認定医を対象にゲーム障害の診療実態調査を行った。ゲーム障害は、様々な要因が複雑に絡み合った結果生じたものであると考えられ、多面的で包括的なアセスメントが重要であると考えられた。
4)学校教育現場向けの対処マニュアルに必要な項目を抽出し、構成や記述内容の一部の作成を進めた。一貫した対応方法や学校からの聞き取り項目などを定めた「相談対応マニュアル」が必要とされている。
5)ゲーム障害対策の提言をするために国内外のゲーム障害対策について整理し、どのような教育や情報共有が望ましいかを考えるにあたり、リスク因子・保護的因子という観点から文献探索を行った。背景因子の理解を促すような教育・情報共有を行うことや認知行動療法など認知の修正を促すようなプログラムを行っていくことが重要であると考えられた。
6)昨年度尺度開発ガイドラインに従い翻訳したゲーム障害スクリーニング尺度(自記式または親評定版)を用いて、児童精神科に通院する小学校4~6年生とその親を対象に予備調査を行い、翻訳した尺度のわかりやすさ等を調査した。親のみから相談を受ける場合や多角的に本人の状況をアセスメントする際に親評定版尺度が活用できる。
全国の精神科・児童精神科に通院するゲーム使用問題を有する患者とその親を対象に、質問紙またはウェブによるアンケート調査を実施した。家族全体の支援が必要である。
7)包括的な治療プログラム(Comprehensive Treatment Program for Gaming Disorder, CAP-G))を、久里浜医療センターインターネット依存専門治療外来を受診した患者にオープントライアルで有効性について予備的調査を実施した。
8)令和4年2月WHOより発出されたゲーム障害の診断ガイドラインを参考に、日本版のガイドラインについて検討した。
結論
1)分析作業を継続し、学会発表、論文化へとつなげる。
2)全国の精神保健福祉センターに実施したアンケート調査の結果をもとに、現場に即した相談対応マニュアルを作成する。
3) 今回の結果をもとに、医療機関の受診に至る前段階である、相談機関で活用可能なマニュアルにも反映されるよう検討をすすめる。
4) 「実態児童生徒が自らおこなう判断チェックリスト・フローチャート」なども加えて、「対処マニュアル」の項目立てをおこない、実際の対処マニュアルの記述を進めていく。
5) 前年度に行ったゲーム障害対策の国際的な現状も踏まえ、本邦で可能な対策案を提言する。
6) 患者・家族調査の追跡調査を実施し、ゲーム使用問題と精神的健康との関連などを明らかにする。
7) 本年度作成したCAP-Gの介入研究を継続し、データを解析する。
8)WHOによるゲーム障害の診断ガイドラインを参考に、日本版のガイドラインを作成する。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118027Z