補装具費支給制度等における適切なフォローアップ等のための研究

文献情報

文献番号
202118017A
報告書区分
総括
研究課題名
補装具費支給制度等における適切なフォローアップ等のための研究
課題番号
20GC1012
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
高岡 徹(社会福祉法人 横浜市リハビリテーション事業団 横浜市総合リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 樫本 修(宮城県リハビリテーション支援センター)
  • 菊地 尚久(千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
  • 芳賀 信彦(国立障害者リハビリテーションセンター  自立支援局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 身体障害者更生相談所(以下、更生相談所)、医療機関、補装具製作事業者における補装具や治療用装具の支給とフォローアップの現状を調査し、課題を明らかにするとともに、補装具のフォローアップ体制構築のための具体的手段を提案することを目的とした。
研究方法
(1)更生相談所に関する調査:令和2年度に行った全国の更生相談所78カ所にアンケート調査結果から、フォローアップを行ったことのある18カ所の更生相談所の回答の分析および補装具判定専門委員会へのアンケート調査を実施した。さらに2017年度より実施している宮城県更生相談所による補装具フォローアップ事業に関する実績分析を実施した。また、北九州市において補装具管理手帳の配布および研修会の実施を通して普及、啓発を図るとともに、アンケート調査を実施した。
(2)地域リハビリテーション広域支援センターに関する調査:千葉県内の地域リハビリテーション広域支援センター(9施設)を対象にアンケート調査を行った。調査項目は、①施設における下肢装具処方の有無と処方内容、②在宅での装具フォローの有無とし、装具フォローを行っている施設では治療用装具と更生用装具の使い分けについて調査を行った。
(3)補装具製作事業者に関する調査:令和2年度に行った全国270カ所の義肢・装具製作所が所属する一般社団法人日本義肢協会の正会員を対象に実施したアンケートの結果を分析した。調査内容は、①製作所の規模、連携医療機関、義肢装具等の製作数、②義肢装具等のフォローアップ体制の現状、③義肢装具等のフォローアップに関する意見とした。さらに、6カ所の事業者を選び追加のヒアリングを行い、取り組みの詳細な内容や課題について把握した。
(4)障害当事者による有効利用の促進:前年度に引き続き、義手オンラインミーティング(第3回)を実施した。また、当事者、更生相談所職員、補装具製作事業者等によるワークショップを開催した。
(5)シンポジウムの開催: 2022年2月26日に「第2回補装具の効果的なフォローアップに関するシンポジウム」をハイブリッド形式で開催した。
結果と考察
 補装具のフォローアップの実施経験のある更生相談所は、そのほとんどが効果や今後の必要性、地域連携の重要性を認識していた。北九州市においては、補装具手帳やチラシの配布と普及の活動、関係者向けの研修会を実施し、必要性が高く認識されていた。
 千葉県内の地域リハビリテーション広域支援センター9施設を対象としたアンケート調査では、下肢装具処方を行っている施設は85.7%、長下肢装具と短下肢装具の両方を作製している施設は28.6%、在宅での装具フォローを行っている施設は28.5%だった。そのうち更生用装具での作製をしているのは50%、治療用装具は50%であった。地域リハビリテーション広域支援センターにおいて在宅訪問時の装具のチェック、装具作製に関する専門機関への連携が適切に行われるべきであると思われた。
 ユニークな試みを行っている補装具製作事業者を対象にしたヒアリング調査では、意欲的な事業者も多いが、マンパワーやコストが避けられない問題として障壁となっていた。筋電義手利用者に対する「義手オンラインミーティング」の開催に関しては、利用者の情報や交流への需要の高さがうかがえた。
 昨年度からの課題に対し、補装具手帳やチラシの配布、研修会、更生相談所によるフォローアップを具体的な方策として実施し、アンケート結果からはこれらの方策の有効性が示されていた。しかしながら、個別単発な方法を施行しての問題点と、それらをシステムとして運用する場合で生じる問題点は異なる可能性がある。補装具のフォローアップを、更生相談所、市町村、医療機関、補装具製作事業者、リハビリテーション専門職等の各社会資源が単独で実施するには限界がある。効果的かつ持続可能性のあるサービスの組み合わせ、地域の実情に応じた他機関との連携、システム作りが必要である。また、補装具制度への情報アクセスや判定場所への交通アクセス等の問題も課題であった。今回はこれらの体制を整えるうえで利用可能なツールを作成・提示することができた。次の段階で必要とされるのは、これらの方策を利用した地域レベルでの仕組みを構築することと考える。
結論
 各地域において補装具のフォローアップ体制を整える上で利用可能な手段・方法を作成・提示することができた。次の段階で必要とされるのは、これらの手段を組み合わせて、各地域の実情に応じた仕組みを構築することである。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118017B
報告書区分
総合
研究課題名
補装具費支給制度等における適切なフォローアップ等のための研究
課題番号
20GC1012
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
高岡 徹(社会福祉法人 横浜市リハビリテーション事業団 横浜市総合リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 樫本 修(宮城県リハビリテーション支援センター)
  • 菊地 尚久(千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
  • 芳賀 信彦(国立障害者リハビリテーションセンター  自立支援局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 令和2年度は、障害者総合支援法による支給を行う身体障害者更生相談所(以下、更生相談所)、健康保険制度を用いて装具処方を行う病院、実際に補装具を提供する製作事業者などにおける補装具や治療用装具の支給とフォローアップの現状を調査し、課題を明らかにすることを目的とした。令和3年度も引き続き補装具の支給とフォローアップの現状調査と分析を継続するとともに、補装具のフォローアップ体制構築のための具体的手段を作成・提案することを目的とした。
研究方法
1.補装具支給とフォローアップの実態把握
(1)更生相談所:全国の更生相談所78か所に対してメールによりアンケート調査を実施した。前記結果からフォローアップ実績がある18カ所の更生相談所の詳細な分析、および補装具判定専門委員会の委員に対するアンケート調査とヒアリングを併せて実施した。また、宮城県で行っている補装具フォローアップ事業の報告と課題の抽出を行った。北九州市では、補装具手帳とチラシの配布を年間通して実施し、リハビリテーション専門職向けの研修を開催した。
(2) 回復期リハビリテーション病棟および地域リハビリテーション広域支援センター:千葉県内の回復期リハビリテーションを行っている施設(64施設)および千葉県内の地域リハビリテーション広域支援センター(9施設)を対象にアンケート調査を実施した。
(3)補装具製作事業者:全国270か所の義肢装具製作事業所が所属する一般社団法人日本義肢協会の正会員を対象に、郵送によるアンケート調査を実施し、さらにユニークな試みを行っている6カ所の事業者を選び追加のヒアリング調査を実施した。
2.障害当事者による有効利用の促進:筋電義手の利用者の情報交換を行う場を設定するために、オンラインでのミーティングを開催した。また、補装具利用者、補装具製作事業者、更生相談所職員、補装具利用者向けアプリ開発者、ケアマネージャー、福祉用具専門相談員を参加者としてアイデア検討ワークショップを開催した。
3. シンポジウムの開催:各年度終了時にシンポジウムを開催し、調査研究内容の報告とディスカッションを行った。
結果と考察
 更生相談所の調査では、補装具のフォローアップを現在、あるいは以前に実施していた更生相談所は全国で18カ所(25%)に過ぎなかったが、そのほとんどが効果や今後の必要性を認識していた。更生相談所や市町村が要となってシステムを構築することが重要であり、「補装具支給事務取扱指針」に各機関の役割を明記する必要もあると考える。
 千葉県内の回復期リハビリテーション病棟と地域リハビリテーション広域支援センターを対象とした調査では、回復期リハビリテーション病棟において外来フォロー、退院後の装具修理、再作製が高率で行われていた。一方、地域リハビリテーション広域支援センターにおける在宅での装具のフォローアップの実施率は低かった。
 補装具製作事業者を対象にした調査では、義肢装具等のフォローアップ体制が製作事業者により異なり、4分の1の事業者ではフォローアップが行われていないこと、積極的に義肢装具等の状態を利用者に問いかけている事業者が少ないこと、利用者から不具合の連絡があった場合の対応も一定でないこと、が明らかになった。この調査結果をもとに、ユニークな試みを行っている事業者へのヒアリングを実施したところ、意欲的な事業者は多いが、マンパワーやコストの問題が避けられない障壁となっていた。
 筋電義手利用者に対する調査の解析では、当事者同士の情報共有の場の設置が重要であることが明らかとなった。そのための試行として「義手オンラインミーティング」を3回開催した。各回多くの参加者があり、利用者の情報や交流への需要の高さがうかがえた。
結論
 更生相談所、医療機関、補装具製作事業者のいずれにおいても、補装具フォローアップの必要性は認識されているものの、マンパワーやコスト等の問題や責任の所在が明確でないことなどから、有効な方策をとることができていない現状が明らかとなった。これらの課題に対し、補装具手帳やチラシの配布、研修会、更生相談所によるフォローアップを具体的な方策として実施し、アンケート結果からはこれらの方策の有効性が示されていた。
 しかしながら、個別単発な方法を施行しての問題点と、それらをシステムとして運用する場合で生じる問題点は異なる可能性がある。効果的かつ持続可能性のあるサービスの組み合わせ、地域の実情に応じた他機関との連携、システム作りが必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)研究成果:補装具フォローアップは、利用者本人を含めた多職種・多機関による多層的な仕組みの構築が必要である。本研究で具体的なフォローアップ手段を提示するとともにその有効性を検証した。
(2)意義:補装具管理手帳やチラシの配布、利用者向けのパンフレット作成、研修会等の実施を継続した。また、フォローアップに関して、利用者自身や行政、医療機関など関係各所が目指すべき姿をまとめて示したことは、社会的な意義があったと考える。
臨床的観点からの成果
(1)研究成果:補装具を利用する当事者を含めた第5回義手ミーティング、専門職を中心とした研究成果を報告する第4回のシンポジウムを開催した。また日本リハビリテーション医学会や日本義肢装具学会等において一般口演やシンポジウムで義肢装具のフォローアップに関する発表をする機会を得た。
(2)意義:補装具のフォローアップの重要性の認識がさらに高まり、障害者総合支援法で支給された補装具が適切に、かつ継続的に使用されれば、利用者の利便性向上に直結するとともに、公費の効率的な運用にもつながる。
ガイドライン等の開発
特に診療ガイドラインに関係する内容ではない。
しかし、有効性のある補装具フォローアップの具体的手段とモデルを提示することができた。研修会の資料などは公開されており、どの地域・機関においても利用してもらうことが可能である。
その他行政的観点からの成果
補装具管理手帳やチラシ、パンフレット等は簡単に利用可能なものとしており、意欲のある自治体・機関であればすぐに利用可能である。また、フォローアップの必要性や補装具制度の知識に関する研修は継続して開催することが重要であり、資料も利用可能となっている。また、令和6年度の補装具費支給事務取扱指針に補装具のフォローアップの重要性が追記されたことは大きな成果である。
その他のインパクト
補装具費支給制度等におけるフォローアップ体制の有効性検証のための研究(22GC1010)として、継続した研究を実施した。令和5年度にも第4回の補装具の効果的なフォローアップに関するシンポジウムを開催し、研究成果を報告した。また、「義手オンラインミーティング」も第5回目を開催した。各回多くの参加者があり、本テーマへの関心や問題意識の高さが感じられた。本研究の成果であるフォローアップを行うための具体的な手段・方策はホームページ上にアップロードしている。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
令和6年度の補装具費支給事務取扱指針に補装具のフォローアップの重要性が追記された
その他成果(普及・啓発活動)
7件
シンポジウム開催1件、ホームページ1件、研修会5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
2024-06-03

収支報告書

文献番号
202118017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
13,244,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,756,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 944,126円
人件費・謝金 1,452,712円
旅費 1,059,482円
その他 6,943,330円
間接経費 2,844,358円
合計 13,244,008円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
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