高次脳機能障害の障害特性に応じた支援者養成研修カリキュラム及びテキストの開発のための研究

文献情報

文献番号
202118014A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害の障害特性に応じた支援者養成研修カリキュラム及びテキストの開発のための研究
課題番号
20GC1008
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 立石 雅子(一般社団法人日本言語聴覚士協会)
  • 浦上 裕子(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第一診療部 精神科(研究所併任))
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 脳機能系障害研究部)
  • 渡邉 修(東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座)
  • 鈴木 匡子(東北大学 大学院医学系研究科高次機能障害学)
  • 上田 敬太(京都大学医学部附属病院精神科神経科)
  • 青木 美和子(札幌国際大学人文学部心理学科)
  • 廣瀬 綾奈(帝京平成大学 健康メディカル学部言語聴覚学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害の支援については、障害福祉制度の整備は進んだが、同障害の特性に応じた支援が現場で十分行われているとは言えない。この課題に対応するため、申請者は平成30、令和元年度厚労科研を用いて「高次脳機能障害の障害特性に応じた支援マニュアルの開発研究」を実施し、その一環として、支援の実態調査及び分析を行った。結果地域の障害福祉事業所の利用は増加しているが、高次脳機能障害者の支援経験が無い/少ない事業所が大半であり、一方でこれまで支援経験のない事業所の7割が同障害の知識・情報を習得し、スタッフの支援体制が整えば同障害者の利用を受け入れたい、と回答した。このことから障害福祉サービス現場の支援者養成が喫緊の課題であることが明らかとなった。本研究は、高次脳機能障害者に対する支援者養成研修のカリキュラムおよびテキストを開発し、同障害者への適切な支援につなげることを目的とする。高次脳機能障害に対応可能な支援者を増やすことで、同障害者が住み慣れた地域で生活を営める体制整備の推進を図る。
研究方法
1)先行する各種養成研修について情報収集および分析を行う。2)1)を参考に基礎編および実践編カリキュラムを作成する。3)カリキュラムに沿って、テキストとシラバスを作成する。4)試行研修を繰り返し、受講者アンケート等の結果に基づいてカリキュラムおよびテキストを修正する。研修テキストには、個人が特定されるデータは使用しない。演習で使用する事例は架空事例とする。
結果と考察
1)先行する養成研修の情報収集と分析:強度行動障害、ホームヘルパー、ガイドヘルパー、障害福祉従業者等の養成研修の実施要項を集め、対象、参加要件、時間数、講義・演習内容、受講のメリット等を比較した。2)研修会基礎編および実践編カリキュラム作成:1)の比較結果に基づき、研究分担者、支援拠点機関、行政、当事者団体等との意見交換を行い、基礎編と実践編、各12時間(6時間×2日間)のカリキュラムを作成した。どちらの研修も講義(40分ⅹ9講座)と演習(基礎編は90分ⅹ4,実践編は180分x2)。3)基礎編および実践編テキスト作成:基礎編の講義9講座は、障害定義、診断評価、医学的リハビリテーション、失語症とコミュニケーション支援、制度利用、相談支援、生活訓練、復職・就労移行支援、生活と支援の実際、演習4講座は、診断・評価体験、退院時支援の実際、生活訓練の実際、復職・就労移行支援で各担当者が執筆し、研修会試用後に改訂した。実践編の講義9講座は、支援体制、発達障害・認知症との共通点と相違点、小児期における支援、長期経過とフォローアップ、多職種連携、家族支援・当事者家族会の活動、地域生活支援の実際、支援の実践的な枠組みと記録、自動車運転再開支援で各担当者が執筆した。演習2講座は、ロールプレイを取り入れた障害特性の理解と対応、アセスメントと計画立案とし、現在作成中。4)モデル研修および受講者アンケート:令和3年度に6回(所沢2回、三重県、名古屋市、千葉県、高知県各1回)試行研修を実施した。所沢市で実施した国立障害者リハビリテーションセンター学院研修では基礎編全部、その他の研修では基礎編・実践編の一部のカリキュラム、テキストを用いた。国立障害者リハビリテーションセンター学院研修の受講者アンケート(受講者数174名、回収者数116名(回収率66.7%))では、全体評価は、①非常に良い31.9%、②良い60.3%、③普通6.9%、④悪い0.0%、⑤非常に悪い0.0%、⑥未記入0.9%であった。自由回答として、「初心者にわかりやすかった」「講義は動画で配信してほしい」などが挙げられた。研修試行は、COVID-19感染拡大防止のためオンラインで行った。本研究は、神経内科学、脳神経外科学、リハビリテーション医学、神経心理学、社会福祉学等、分野横断型の取り組みであり、高次脳機能障害者・児の生活支援を多角的にとらえて補完しあい、社会への還元を目指す試みである。障害特性に応じたサービスを提供できる人材の育成は、社会的要請に基づく課題であり、その成果は障害福祉行政施策に直接寄与するものである。
結論
高次脳機能障害の障害特性に応じた支援者養成研修カリキュラム及びテキスト試案を開発し、研修会で試用した。今後は研修会での試用と修正を重ねて改善を図る。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,740,000円
(2)補助金確定額
8,692,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,048,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,862,309円
人件費・謝金 2,518,562円
旅費 284,281円
その他 879,280円
間接経費 1,150,000円
合計 8,694,432円

備考

備考
3名の研究分担者がそれぞれ、1,882円、516円、34円(計2,432円)の自己資金を投入したため。

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-