成育医療からみた小児慢性特定疾病対策の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
202111007A
報告書区分
総括
研究課題名
成育医療からみた小児慢性特定疾病対策の在り方に関する研究
課題番号
19FC2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
賀藤 均(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(福島県立医科大学 ふくしま国際医療科学センター 甲状腺・内分泌センター)
  • 窪田 満(国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
  • 檜垣 高史(愛媛大学 大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座)
  • 落合 亮太(横浜市立大学 大学院医学研究科 看護学専攻)
  • 小松 雅代(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 黒澤 健司(神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 研究開発監理部 生命倫理研究室)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
30,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児慢性特定疾病(以下、小慢)対策の推進に寄与する基礎資料および実践基盤の整備を目的として、①小児慢性特定疾病対策のあり方の検討(国際生活機能分類や医療経済評価の概念導入)、②小慢性特定疾病患者の自立支援等に関する検討(移行期医療、政策横断的な情報等の国民への提供)、③小児慢性特定疾病登録データベースのあり方に関する検討(登録データの二次利用に係る課題、対象疾病へのコード附番等)を実践し、小慢対策の発展と疾病研究の促進につながる基礎的資料等を整理することを目的とした。
研究方法
各分担研究者が以下の研究を実践した。
1.小児慢性特定疾病対策のあり方に関する検討
1.1 国際生活機能分類(ICF)の概念導入の検討
1.2 医療経済評価の手法を用いた小慢の在り方に関する検討
1.3 医療意見書及び診断の手引きの改訂及び在り方に関する検討
1.4 小児慢性特定疾病における遺伝学的検査の必要性に関する検討
2.小児慢性特定疾病患者の自立支援等に関する検討
2.1 小児慢性特定疾病児童等の成人移行支援ガイドの改訂等
2.2 障害福祉等関連施策・制度に関する患者視点での整理
2.3 小児慢性特定疾病児童等の生活実態等に関する調査結果の分析
2.4 医療関係者や患者家族等への情報提供・情報共有についての検討
2.5 小児慢性特定疾病患者の成人移行状況に関する調査分析
3.小児慢性特定疾病登録データベースのあり方に関する検討
3.1 登録DBシステムの設計開発及びデータ精度向上に関する検討
3.2 対象疾病に係るICD-10等のコード附番に関する検討
3.3. 指定難病DB等の他のデータベースと小児慢性特定疾病登録DBの連携に関する検討
結果と考察
疾病を抱える子どもたちの生活における重荷(burden)を国際生活機能分類(ICF)での評価を試み、小慢児童等の日常生活や社会参加への課題抽出や小慢から指定難病への移行時の課題整理に利用できる可能性を示した。小児医療の社会経済的な価値評価の検討として、既存データを用いた川崎病に対する薬物療法の費用対効果分析を行い、生物学的製剤の費用対効果の検証の可能性を示した。また成果の判断基準となる小児への社会資源の投下(医療費)に関わる国民の支払意思額調査を行い、小児医療に対する医療費投下は国民に比較的多く許容される傾向にあることが分かった。日本小児科学会他の関連学会の協力のもと、令和3年度実施分として小児慢性特定疾病に新たに追加された26疾病の医療意見書、疾患概要、診断の手引きを整備した。また令和3年度対象疾病に対するICD-10コード附番の更新を行った。小児慢性特定疾病には遺伝学的検査が診断に重要な役割を担っている疾患が多いが、必要な遺伝学的検査が保険収載されていないことが多く、小児疾病の遺伝学的検査に関する課題をまとめた。小慢の移行期医療対策は重要な課題の一つであり、小慢から指定難病への移行はその対策の一つである。現在小慢対象疾病であるが指定難病ではない疾病について、状況を整理したところ、指定難病への追加申請において成人期の知見の不足がしばしば指摘されていたことから、疾病研究による知見の集積が重要であることが示唆された。また多くの自治体において、移行期医療の中心となる移行期医療支援センターの設置が進まないことから、設置済みの各移行期支援センターの状況について整理した。令和3年度のポータルウェブサイト、指定医研修用e-learningサイト、一般国民向けサイトの利用状況等について分析を行った。2015(平成27)から2019(令和元)年度分の医療意見書について、2022(令和4)年3月末日までの小児慢性特定疾病児童等データベースへの登録状況について集計・分析を行った。
結論
慢性疾病を抱えた子どもたちに対するより適切な支援を考えた場合、社会参加や周囲の環境に関する評価も重要であると思われた。国際生活機能分類との対比において、現状でも社会参加の一部は捉えることができていたが、環境要因については評価がほとんどできておらず、今後の小児慢性特定疾病の在り方を考える上での示唆が与えられた。小児医療に対する医療経済評価や遺伝学的検査の体制整備、移行期医療支援体制の検討なども、子どもたちの支援の枠組みを支える環境要因の一つであり、小児領域における具体的な評価方法の確立を見据え、更なる研究が必要であると考えられた。
小児慢性特定疾病と指定難病との対応評価や対象疾患に対するコード附番などの基礎的情報の整理やウェブサイト等の情報共有の分析など、制度運用を支えるための情報整理を行った。
以上の研究成果を踏まえ、引き続き政策への貢献、社会への情報提供に努めたい。

公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202111007B
報告書区分
総合
研究課題名
成育医療からみた小児慢性特定疾病対策の在り方に関する研究
課題番号
19FC2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
賀藤 均(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(福島県立医科大学 ふくしま国際医療科学センター 甲状腺・内分泌センター)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 医学部)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
  • 落合 亮太(横浜市立大学 大学院医学研究科 看護学専攻)
  • 小松 雅代(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
  • 檜垣 高史(愛媛大学 大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座)
  • 窪田 満(国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 黒澤 健司(神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 研究開発監理部 生命倫理研究室)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児慢性特定疾病(以下、小慢)対策の推進に寄与する基礎資料および実践基盤の整備を目的として、①小児慢性特定疾病対策のあり方の検討(国際生活機能分類や医療経済評価の概念導入)、②小慢性特定疾病患者の自立支援等に関する検討(移行期医療、政策横断的な情報等の国民への提供)、③小児慢性特定疾病登録データベースのあり方に関する検討(登録データの二次利用に係る課題、対象疾病へのコード附番等)を実践し、小慢対策の発展と疾病研究の促進につながる基礎的資料等を整理することを目的とした。
研究方法
各分担研究者が以下の研究を実践した。
1.成育医療からみた小児慢性特定疾病対策のあり方に関する検討
・国際生活機能分類(ICF)の概念導入の検討
・医療経済評価の手法を用いた小慢の在り方に関する検討
・医療意見書および診断の手引きの改訂等を含む保守・管理
・指定難病に該当する可能性のある小慢対象疾病についての検討
・小児慢性特定疾病における遺伝学的検査の必要性に関する検討
2.小児慢性特定疾病患者の自立支援等に関する検討
・小児慢性特定疾病児童等の成人移行支援ガイドの改訂等
・障害福祉等関連施策・制度に関する患者視点での整理
・小児慢性特定疾病児童等の生活実態および社会支援等に関する調査結果の分析
・医療関係者や患者家族等への情報提供・情報共有についての検討
・小児慢性特定疾病患者の成人移行状況に関する調査分析
3.小児慢性特定疾病登録データベースのあり方に関する検討
・登録データのアカデミア・民間の利活用指針、同意取得の在り方、過去の登録データの取扱に関する指針の検討
・登録データベースシステムの設計開発及びデータ精度向上に関する検討
・対象疾病に係るICD-10等のコード附番に関する検討
・指定難病データベース等の他のデータベースと小児慢性特定疾病登録データベースの連携に関する検討
結果と考察
小児慢性特定疾病児童等の生活機能と、疾病を抱える子どもたちの生きづらさについて国際生活機能分類(ICF)コードを用いて状況を把握し、アウトカム向上につながる支援のあり方を明らかにする試みを行った。小児医療の社会経済的な価値評価の手法の開発とその検証を目的として、小児特有の疾患の一つである川崎病に対する薬物療法の費用対効果の評価手法の検討や実証、およびその成果の判断基準にもなる小児期に対する社会資源の投下(医療費)に関わる国民の支払意思額調査を行った。日本小児科学会等の関連学会と協同で、医療意見書、疾患概要、診断の手引きを作成しポータルウェブサイトにて公開した。また新規追加疾病を含め、令和3年度版の対象疾病に対し、ICD-10コード等のコード附番のアップデートを行った。小児慢性特定疾病には、遺伝学的検査が診断に重要な役割を担っている疾患が多いなか、遺伝学的検査が保険収載されていない。疾患の概要および診断の手引きから、小慢疾病の遺伝学的検査に関する課題をまとめた。慢性疾患への医療費等支援施策として対比されることの多い小児慢性特定疾病対策と指定難病の対象疾病の対応性について検討した。
成人移行期支援の体制構築に関する検討では、移行期医療支援センター設置におけるポイントや好事例、課題や問題点の抽出を試みた。疾病や地域による特性や、連携病院との連携パターンが多様であり、状況にあった支援策を行うための情報収集や調査が不可欠と考えられた。小児慢性特定疾病に罹患した児童等は、状態によっては他の医療費助成制度や障害福祉制度を利用できる可能性がある。様々な制度名が一様に提示される機会は少なく、制度横断的に情報を集めるのは難しい。このため、情報通信技術(ICT)を利用し、スマートデバイス等でアンケート形式の検索ページにアクセスし、患者の置かれた状況を選択することにより、利用できる可能性のある制度を判定し一覧表示するツールを作成した。小児慢性特定疾病児童等データベースの二次利用申請に対応するための抽出作業に係る課題を抽出し対応した。次期登録システムにおいて現行登録システムの登録データからの二次利用データの抽出が難しくなることから、登録システムの世代を超えて登録データを保持・運用するための方法を検討した。
結論
本研究により、難病政策に資する成果を出すことができた。今後も関係学会等と協力しつつ、事業の公正かつ公平な運用のために必要となる課題について、引き続き取り組んでいきたい。

公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202111007C

収支報告書

文献番号
202111007Z