特発性大腿骨頭壊死症の予防と治療の標準化を目的とした総合研究

文献情報

文献番号
200834009A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の予防と治療の標準化を目的とした総合研究
課題番号
H19-難治・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
久保 俊一(京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高岡 邦夫(大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学)
  • 進藤 裕幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科発生分化機能再建学講座 構造病態整形外科学)
  • 長澤 浩平(佐賀大学医学部 膠原病リウマチ内科)
  • 松野 丈夫(旭川医科大学 整形外科)
  • 松本 俊夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部プロテオミクス医科学部門 生体制御医学講座 生体情報内科学)
  • 松本 忠美(金沢医科大学 運動機能病態学(整形外科学))
  • 渥美  敬(昭和大学藤が丘病院 整形外科)
  • 岩本 幸英(九州大学大学院医学研究院 整形外科)
  • 吉村 了勇(京都府立医科大学大学院医学研究科 移植・再生制御外科学)
  • 佛淵 孝夫(佐賀大学医学部 整形外科)
  • 遠藤 直人(新潟大学教育研究院医歯学系(整形外科学分野))
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野)
  • 田中  良哉(産業医科大学 第一内科学)
  • 安永 裕司(広島大学 医歯薬学総合研究科 人工関節・生体材料学講座)
  • 大園 健二(関西労災病院 整形外科)
  • 長谷川幸治(名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻運動・形態外科学 整形外科学)
  • 神宮司誠也(独立行政法人 労働者健康福祉機構 九州労災病院 整形外科)
  • 小林 千益(諏訪赤十字病院 整形外科)
  • 菅野 伸彦(大阪大学大学院医学系研究科 運動器医工学治療学寄附講座)
  • 田中  栄(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 感覚・運動機能医学講座 整形外科学)
  • 山路  健(順天堂大学医学部 膠原病内科)
  • 藤岡 幹浩(京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症は股関節の機能が障害される難治性疾患であり、ステロイド投与に関係した側面があることは大きな問題である。本研究では病態の解明を目指すことに加えて、信頼性の高い予防法を開発することと、確実な診断法および機能回復・再生を目指した合理的な治療法を確立することを目的とする。
研究方法
疫学特性を把握するために疫学調査を行った。病態の解明のためにステロイドの微小循環に対する作用に関する基礎的研究を行い、動物モデルを確立した。予防ではステロイド剤投与の個別化を目的としたステロイド感受性の遺伝子レベルでの検索と血液凝固能や脂質代謝異常の抑制による予防法の開発を進めた。治療の標準化では診断基準の適正化を図り、コンピュータ手術シミュレーションによる適切な手術法の決定や、手術を安全で正確に行うためのコンピューター手術支援システムの開発、再生医療を用いた低侵襲治療法の開発を研究の重点領域とした。
結果と考察
定点モニタリングシステムの10年間1754症例の解析で、ステロイド関連が55%を占めることが判明した。酸化ストレス亢進による血管内皮機能障害をアスピリン、スタチンが改善することを証明した。抗酸化剤であるグルタチオンで動物モデルの壊死発生率を抑制でき、これらの薬剤が臨床的予防薬として使用できる可能性が判明した。多施設共同前向き臨床研究でスタチンには有意な壊死予防効果が認められなかった。大腿骨頭回転骨切り術と弯曲内反骨切り術の有効性を確認した。人工物置換症例の登録を進め、これまでに合計で1939関節を登録して成績と予後に影響を与える危険因子を解明した。変形性股関節症で人工関節置換術を行う症例に比べて本疾患患者は若く活動性が高いため、本邦における人工物置換術の実態を把握し、問題点をいち早く同定するために本登録システムは有用である。
結論
疫学調査、病態解析、予防法の開発、診断基準の妥当性の検証、コンピュータ手術支援システムの開発、治療の標準化などの各項目で本年度の目標は達成できた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200834009B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の予防と治療の標準化を目的とした総合研究
課題番号
H19-難治・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
久保 俊一(京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高岡 邦夫(大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学)
  • 進藤 裕幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科  発生分化機能再建学講座 構造病態整形外科学)
  • 長澤 浩平(佐賀大学医学部 膠原病リウマチ内科)
  • 松野 丈夫(旭川医科大学 整形外科)
  • 松本 俊夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 プロテオミクス医科学部門 生体制御医学講座 生体情報内科学)
  • 松本 忠美(金沢医科大学 運動機能病態学(整形外科学))
  • 渥美  敬(昭和大学藤が丘病院 整形外科)
  • 岩本 幸英(九州大学大学院医学研究院 整形外科)
  • 吉村 了勇(京都府立医科大学大学院医学研究科 移植・再生制御外科学)
  • 佛淵 孝夫(佐賀大学医学部 整形外科)
  • 遠藤 直人(新潟大学教育研究院医歯学系(整形外科学分野))
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野)
  • 田中  良哉(産業医科大学 第一内科学)
  • 安永 裕司(広島大学 医歯薬学総合研究科 人工関節・生体材料学講座)
  • 大園 健二(関西労災病院 整形外科)
  • 長谷川幸治(名古屋大学大学院医学系研究科 機能構築医学専攻運動・形態外科学 整形外科学)
  • 神宮司誠也(独立行政法人 労働者健康福祉機構 九州労災病院 整形外科)
  • 小林 千益(諏訪赤十字病院 整形外科)
  • 菅野 伸彦(大阪大学大学院医学系研究科 運動器医工学治療学寄附講座)
  • 田中  栄(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 感覚・運動機能医学講座 整形外科学)
  • 山路  健(順天堂大学医学部 膠原病内科)
  • 藤岡 幹浩(京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症は重大な後遺症を残す可能性が高く、治療は長期間・多数回に及び、医療経済学的に問題が大きい。また、好発年齢が青・壮年期であることと、荷重関節の破壊による労働能力の低下が高度であることから労働経済学的にも大きな損失を生じる。本研究は特発性大腿骨頭壊死症に対し、安全で信頼性の高い予防法を開発して臨床応用すること、そして確実な診断基準と機能回復・再生を目指した医療経済学的に合理的な治療法を開発して患者のQOL向上に直結する治療様式を確立することを目指すものである。
研究方法
疫学特性を把握するために疫学調査を行った。病態の解明のためにステロイドの微小循環に対する作用に関して基礎的研究を行い、動物モデルを確立した。予防ではステロイド剤投与の個別化を目的としたステロイド感受性の遺伝子レベルでの検索と脂質代謝異常の抑制による予防法の開発を進めた。治療の標準化では診断基準の適正化を図り、コンピュータ手術シミュレーションによる適切な手術法の決定や、手術を安全で正確に行うためのコンピューター手術支援システムの開発、再生医療を用いた低侵襲治療法の開発を研究の重点領域とした。
結果と考察
多施設共同症例・対照研究で症例73例、対照250例の多変量解析の結果、ステロイド全身投与歴を有する者のORは31.2と有意な上昇を認めた。また、肝障害の既往でOR 4.03と有意なリスク上昇を認めた。NO bioavailability低下で生じる酸化ストレス亢進による血管内皮機能障害をスタチンが改善する機序に関してeNOS発現増加、eNOS mRNAの不安定化改善が関与していることが判明した。スタチンを用いた多施設共同前向き研究では有意な予防効果が確認されなかった。人工物置換症例1939関節を登録して成績と予後に影響を与える危険因子を解析した。後側方進入は脱臼のリスクを上げ、大径骨頭は下げることが判明した。
結論
疫学調査、病態解析、予防法の開発、診断基準の妥当性の検証、コンピュータ手術支援システムの開発、治療の標準化などの各項目で研究の目標は達成できた。今後も疫学的経年変化を把握するために長期的な調査が必要である。抗酸化作用と脂質代謝改善作用をもつ薬剤が予防薬として有望であることのエビデンスが蓄積されている。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200834009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
定点モニタリングシステムは本邦の新規発生数の40%以上を捉えることができ、世界最大の新患症例データベースとなっている。本システムで得られる患者の記述疫学特性は、専門医療施設の患者を代表した情報であり、海外の報告との比較性に優れている。核内受容体の機能解析や骨代謝への関与に関する研究成果は世界のトップレベルのものであり,Nature Medicine、J Biol Chem などに掲載されており、この分野の研究の発展に広く寄与している。
臨床的観点からの成果
本疾患の予防法は国際的にも全く確立されておらず、薬剤による予防の可能性は学術的・国際的に極めて意義が大きい。本疾患は青・壮年期の発生が多く、予防対策の社会的意義も多大である。診断基準、病期、病型分類は日常診療において適正な診断や予後判定、さらに治療法の選択に貢献しており高い社会的意義を有する。若く活動性が高い本疾患患者での人工物置換術登録監視システムは有用であり、働き盛りの患者が多いだけに社会的意義も大きい。
ガイドライン等の開発
当研究班ではすでに2004年度に「特発性大腿骨頭壊死症の診断・治療に関するガイドライン」を作成し、全国の医療機関に配布活動を行って情報を公開した。今後も新しい知見を加えてガイドラインを全面改訂して、実際の臨床の場での診断、治療の指針とする予定である。研究成果を広く普及させることは医療従事者、行政および国民のすべてが最適な医療を選択できるための情報提供の推進となる。
その他行政的観点からの成果
定点モニタリングシステムは記述疫学特性の経年変化をよく確認できており、行政的な取り組みの効果を客観的に把握できている。
その他のインパクト
大腿骨頭壊死症に関する患者用パンフレットを作成し、日本整形外科学会の一般向けホームページに「よくある病気」として、また会員向けホームページでは医療システム検討委員会のページに掲載している。医師が臨床の場で患者に対してわかりやすく説明する際に活用されている。

発表件数

原著論文(和文)
81件
原著論文(英文等)
151件
その他論文(和文)
101件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
34件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shibatani M, Fujioka M, Arai Y, et al.
Degree of corticosteroid treatment within the first 2 months of renal transplantation has a strong influence on the incidence of osteonecrosis of the femoral head.
Acta Orthop , 79 , 631-636  (2008)
原著論文2
Ishida M, Fujioka M, Takahashi KA, et al.
Electromagnetic fields: a novel prophylaxis for steroid-induced osteonecrosis.
Clin Orthop Relat Res , 466 , 1068-1073  (2008)
原著論文3
Kuribayashi M, Fujioka M, Takahashi KA, et al.
Combination analysis of three polymorphisms for predicting the risk for steroid-induced osteonecrosis of the femoral head.
J Orthop Sci , 13 , 297-303  (2008)
原著論文4
Hirata T, Fujioka M, Takahashi KA, et al.
ApoB C7623T polymorphism predicts risk for steroid-induced osteonecrosis of the femoral head after renal transplantation.
J Orthop Sci , 12 (3) , 199-206  (2007)
原著論文5
Hirata T, Fujioka M, Takahashi KA, et al.
Low molecular weight phenotype of Apo(a) is a risk factor of corticosteroid-induced osteonecrosis of the femoral head after renal transplant.
J Rheumatol , 34 (3) , 516-522  (2007)
原著論文6
Tamura K, Nakajima S, Hirota Y, et al.
Genetic association of a polymorphism of the cAMP-responsive element binding protein-binding protein with steroid-induced osteonecrosis after kidney transplantation.
J Bone Miner Metab , 25 (5) , 320-325  (2007)
原著論文7
Motomura G, Yamamoto T, Irisa T,et al.
Dose effects of corticosteroids on the development of osteonecrosis in rabbits.
J Rheumatol , 35 , 2395-2399  (2008)
原著論文8
Hirai F, Nakayamada S, Okada Y,et al.
Small GTPase Rho signaling is involved in β1 integrin-mediated up-regulation of intercellular adhesion molecule 1 and receptor activator of nuclear factor κB ligand on osteoblasts and osteoclast maturation.
Biochem Biophy Res Commun , 356 , 279-285  (2007)
原著論文9
Nakano K, Okada Y, Saito K, et al.
Rheumatoid synovial endothelial cells produce macrophage-colony stimulating factor leading to osteoclastogenesis in rheumatoid arthritis.
Rheumatology , 46 , 597-603  (2007)
原著論文10
Tsujimura S, Saito K, Nawata M,et al.
Overcoming drug resistance induced by P-glycoprotein on lymphocytes in patients with refractory rheumatoid arthritis.
Ann Rheum Dis , 67 , 380-388  (2008)
原著論文11
Tanikawa R, Okada Y, Nakano K,et al.
Interaction of galectin-9 with lipid rafts induces osteoblast proliferation through the c-Src/ERK signaling pathway.
J Bone Miner Res , 23 , 278-286  (2008)
原著論文12
Tsujimura S, Saito K, Nakayamada S,et al.
Bolus infusion of human urinary trypsin inhibitor improves intractable interstitial pneumonia in patients with connective tissue diseases.
Rheumatology , 47 , 907-913  (2008)
原著論文13
Yamasaki T, Yasunaga Y, Terayama H,et al.
Transplantation of bone marrow mononuclear cells enables simultaneous treatment with osteotomy for osteonecrosis of the bilateral femoral head.
Med Sci Monit , 14 (4) , 23-30  (2008)
原著論文14
Masakazu.Murata, Kenji.Kumagai,et al.
Osteonecrosis in Stroke Prone Spontaneously Hypertensive Rats:- Effect of Glucocorticoid.
J Orthop Sci , 12 (3) , 289-295  (2007)
原著論文15
Suzuki M, Kumagai K, Osaki M,et al.
Osteonecrosis of femoral head in the stroke-prone spontaneously hypertensive rats, especially old rats.
Clin Exp Hypertens , 30 (7) , 689-697  (2008)
原著論文16
Aihara K, Azuma H, Akaike M,et al.
Strain-dependent embryonic lethality and exaggerated vadcular remodeling in heparin cofactor II-deficient mice.
J Clin Invest , 117 (6) , 1514-1526  (2007)
原著論文17
Yagi S, Aihara KI, Ikeda Y,et al.
Pitavastatin, an HMG-CoA Reductase Inhibitor, Exerts eNOS-Independent Protective Actions Against Angiotensin II Induced Cardiovascular Remodeling and Renal Insufficiency.
Circ Res , 102 (1) , 68-76  (2007)
原著論文18
Ikeda Y, Aihara KI, Yoshida S,et al.
Receptor System Protects against Angiotensin II-Induced Vascular Remodeling.
Endcrinology  (2009)
原著論文19
Aihara K, Azuma H, Akaike M,et al.
Heparin Cofactor II is an Independent Protective Factor against Peripheral Arterial Disease in Elderly Subjects with Cardiovascular Risk Factors.
J Atheroscler Thromb  (2009)
原著論文20
Aihara K, Azuma H, Akaike M,et al.
Heparin cofactor II as a novel vascular protective factor against atherosclerosis.
J Atheroscler Thromb  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-