国民の健康づくり運動の推進に向けたNCD対策における諸外国の公衆衛生政策の状況とその成果の分析のための研究

文献情報

文献番号
202109035A
報告書区分
総括
研究課題名
国民の健康づくり運動の推進に向けたNCD対策における諸外国の公衆衛生政策の状況とその成果の分析のための研究
課題番号
20FA1022
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
中村 良太(国立大学法人一橋大学 社会科学高等研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 小塩 隆士(一橋大学 経済研究所)
  • 井伊 雅子(一橋大学 大学院経済学研究科)
  • Yao Ying(ヤオ イン)(一橋大学 社会科学高等研究院)
  • Thomas Rouyard(トーマス ルーヤード)(一橋大学 社会科学高等研究院)
  • 森山 美知子(広島大学 大学院医系科学研究科)
  • 近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科)
  • 五十嵐 中(横浜市立大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究全体の目的は、非感染性疾患の予防のための政策介入の効果及び費用対効果に係る基礎資料を作成し、日本への導入可能性の課題整理・検証を含めた政策提言を行うことである。
研究方法
本研究では生活習慣病に対する政策介入について、日本における将来の政策策定を踏まえて、科学的エビデンスの統合・整理した。具体的には、諸外国における一次予防政策の実施状況やその効果を把握するため、代表的な健康行動である喫煙、飲酒、食生活、運動習慣に着目した既存政策の大規模なシステマティック・レビューを進めた。また、以下のサブテーマごとの個別研究を実施した。 (1)政治経済学(小塩)、(2)健康情報(井伊)、(3)課税・規制(Yao)、(4)行動インサイト(Rouyard)、 (5)公平性(近藤)、(6)費用対効果(五十嵐)、(7)政策策定(森山)。
結果と考察
1.諸外国における生活習慣病予防政策の実施状況とその効果について調査するため、本年度では特に一次予防に関して健康行動(喫煙、飲酒、食生活、運動習慣)に関する集団レベルでの公共政策としての介入に関するシステマティック・レビューを行った。特に集団レベルでの効果が期待できる結果となった介入は以下の通り。(1)たばこの定期的かつ大幅な増税と値上げ。(2)酒類・アルコール飲料の価格や物品税、関連する税金の引き上げ。(3)アルコール単位あたり最低価格規制:酒類の単位あたりの最低価格や下限価格の設定。(4)加糖調製品・飲料や高カロリー食品に対する税上げ。
2.費用対効果評価のレジストリにより非感染性疾患に対する予防・非予防介入の分析を行った。予防的介入と治療的介入の費用対効果を比較する分析を行い、以下の三つの結論を得た。(1)予防的介入は非予防的介入と比べて費用対効果に優れるわけではない。(2)企業が資金提供した介入は政府の出資による介入よりも費用対効果が良いと判断される割合が高い。(3)生産性損失の組み込みの有無が費用対効果の結果に与える影響は小さい。
3.スウェーデン、韓国、バングラデシュの非感染性疾患への取り組みや政策プロセスについてインタビュー調査を行い、以下の知見を得た。(1)政府から独立して政策のモニタリングと評価を行う機関がある。(2)政策決定には多様な専門家が参画する仕組みが整っている。(3)患者団体や産業等の利害関係者の意見を取り込む仕組みが整っている。
4.日本の消費者パネルデータを用いて、2014年の消費税増税によるたばこ価格の変更によってたばこ需要がどう変化したかを分析した。増税がなかった2013年の同時期と比べて、増税直前に購入量が一時的に増加した。増税後には購買量は下がった。しかし、その効果はおよそ数か月で元の水準に戻った。
5.人々の内部の意思決定様式を強化し望ましい行動変容を支援するブースト介入について理論的な分析を行った。ブーストでは健康改善に関心のある層がより介入を受けるという意味で、健康の不平等を広げる可能性や、集団全体の健康行動を改善するという目標を達成できない可能性が認識された。
6.「健康・医療情報の入手に関する調査」のデータを分析し、国民の健康情報への需要を分析した。健康や医療に関する情報源としてテレビとインターネットが最も多く、病院等の医療機関が少なかった。慢性疾患、急性疾患、予防接種に関して助言が受けられるサービスへの支払い用意額は、慢性疾患への助言サービスがもっとも高かった。
7.日本のたばこ税収が2兆円程度で推移していることに着目し、税収目標がたばこ税の決定要因であるか否かについて分析を行った。結果、増税実施と増税幅は、税収の落ち込みと符合していることが示された。日本のたばこ税率の調整を左右する要因は、公衆衛生をめぐる関心ではなく、税収の確保である。
8.非感染性疾患に関する政策介入における公平性評価について既存文献から知見の整理と分析を行った。喫煙、飲酒、食事、運動に対する介入における公平性の評価及び介入方法等を分析した。学歴、所得、ジェンダー等の公平性を評価した研究が多く見られたが、喫煙、飲酒、食事、運動のどれも所得階層に関する公平性を配慮したエビデンスが特に不足していた。
結論
国民の健康づくり運動にむけた政策取り組みの策定に向けて、諸外国や国内の生活習慣病対策に関する基礎研究や文献調査、インタビュー調査を行った。これまでの文献調査やデータ分析で得られた知見をもとに、日本の文脈においてどのような施策が効果的もしくは費用効果的になり得るのかについて今後検討を行う。

公開日・更新日

公開日
2023-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202109035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,500,000円
(2)補助金確定額
16,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 515,312円
人件費・謝金 10,849,043円
旅費 75,870円
その他 1,559,775円
間接経費 3,500,000円
合計 16,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-11-09
更新日
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