国民健康・栄養調査の質の確保・向上のための基盤研究

文献情報

文献番号
202109032A
報告書区分
総括
研究課題名
国民健康・栄養調査の質の確保・向上のための基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20FA1019
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 黒谷 佳代(昭和女子大学 食健康科学部健康デザイン学科)
  • 岡田 恵美子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民健康・栄養調査における標本代表性を確保するためには、協力率の維持が極めて重要となる。そこで、国民健康・栄養調査への協力率の向上に向け、協力率に影響する要因、協力率が結果に及ぼすバイアスの大きさの推定、非対面式での食事調査の導入の影響を明らかにすることを目的とし、1)職業別の国民健康・栄養調査の経年的な協力状況、2)地域ブロック別の国民健康・栄養調査への推定協力率(回答者人口比)の経年推移、3)国民生活基礎調査とのリンケージによるバイアスの検討、4)インターネットを利用した食事調査と対面で行われる食事調査における栄養素・食品群摂取量の妥当性レビュー、5)食物摂取頻度調査法を使用した食事調査への協力率、6)食物摂取頻度調査法に協力した者における他の食事調査への協力や食物摂取頻度調査法に対する認識、の6点について検討した。
研究方法
1)平成15年から令和元年までに実施された国民健康・栄養調査のデータを用いて、職業別の協力状況を集計した。
2)平成9年から令和元年までの国民健康・栄養調査のデータ、平成9年から令和元年までの国勢調査の情報を用いて、地域・年齢階級・性別に推定協力率(回答人数÷調査対象単位区人口)の経年推移を算出した。
3)令和元年の国民生活基礎調査と国民健康・栄養調査のデータを用いてリンケージし、多重代入法より未回答・未測定および非協力によるバイアスがどの程度生じているのかを推定した。
4)PubMed及びWeb of scienceを用いて、2020年10月2日までに公表されている文献を検索対象とし、インターネットを用いた食事調査と従来からの紙ベースの食事調査それぞれから算出された1日のエネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム・野菜・果物の摂取量の妥当性を評価している文献を抽出した。
5)令和3年兵庫県民栄養調査における20歳以上の成人2259名を対象とし、習慣的な栄養素摂取量を推定するための食物摂取頻度調査票への協力率を検討した。
6)令和3年兵庫県民栄養調査において、食物摂取頻度調査票に回答した929名を対象に、他の食事調査への協力の可能性や食物摂取頻度調査票に対する認識を尋ねた。
結果と考察
1) 協力者数が最も多い職業は「家事従事者」、「その他」の順であり、その2職種で約3~4割を占めていた。一方で、職業が不明の者の人数は経年的に増加していた。職業不明の者が増加している要因として、身体状況調査や栄養摂取状況調査に比べ、自記式の質問紙調査である生活習慣調査は参加への負担が少ないことが考えられる。今後は、職種ごとに調査に協力しやすい時間や調査媒体に関する検討が必要である。
2) 全ての地域で、推定協力率は、年々低下しており、20歳代、30歳代、40歳代の推定協力率の低下率が大きかった。この要因として、世帯構造の変化により、1世帯当たり人員数は減少していることが考えられる。今後、調査対象人数を検討する際に、世帯人数を考慮する必要があるかもしれない。
3)若い年齢層、健康上の問題で日常生活に影響のある者、健康意識がよくない者などで協力率が低かった。また、糖尿病関連の指標のみで過小評価されている可能性が示された。国民健康・栄養調査の結果では、若い年齢層の協力率が低いことによるバイアスは生じている可能性があり、全国の人口で調整するなど、結果の示し方には工夫が必要かもしれない。
4)抽出された文献の多くは、若年・中年集団を対象とした研究であり、インターネット調査法と従来法のエネルギー及び主要栄養素摂取量の差は±15%程度以内であった。また、両調査法による摂取量の相関係数は0.2以上であった。今後、インターネットを活用した調査を検討することは、国民健康・栄養調査における若年層の協力率向上のための1つの手段となる可能性が示唆される。
5)世帯別の協力率は42.9%、個人の協力率は55.3%であった。協力率は男女ともに20歳代で最も低く、男性では、50歳代、30歳代、80歳以上と続き、女性では80歳以上、30歳代、50歳代と続いた。個人別の協力率が世帯協力率より高かったことから、世帯単位の調査は協力人数を集める手段の1つとして有用であることが示唆された。
6)食事記録調査及び24時間思い出し法調査への依頼があった場合の協力については、参加の意思を示したものは1割程度であった。一方で食物摂取頻度調査法においても、約6割が非協力の意思であることが示された。
結論
性・年齢・職業は、調査協力率に大きく影響する可能性が示唆された。今後、性・年齢・職業等も考慮したうえで、協力しやすい調査方法を検討していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202109032B
報告書区分
総合
研究課題名
国民健康・栄養調査の質の確保・向上のための基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20FA1019
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 黒谷 佳代(昭和女子大学 食健康科学部健康デザイン学科)
  • 岡田 恵美子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民健康・栄養調査は、国民の身体の状況、栄養素等摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的としている。そこで本事業では、国民健康・栄養調査の標本代表性を確保するために、協力率に影響する要因、協力率が結果に及ぼすバイアスの大きさの推定、非対面式での食事調査の導入の影響を明らかにすることを目的に、①国民健康・栄養調査及び国民生活基礎調査データの二次利用による、国民健康・栄養調査協力者の現状と課題に関する分析、②諸外国の健康栄養調査等における非対面式調査方法の分析、③調査担当者である自治体の行政栄養士からのヒヤリング実施、④非対面式調査である食物摂取頻度調査法を用いた食事調査の実施、⑤世帯構造別にみた協力率の変化の経年推移の分析、の5点を大きな柱として、検討を実施した。
研究方法
1)国民健康・栄養調査のデータを用いて、性・年齢別の身体状況調査ならびに栄養摂取状況調査の協力状況ならびに職業別の協力状況を集計した。また、国民生活基礎調査と国民健康・栄養調査のデータを用いて、多重代入法より未回答・未測定および非協力によるバイアスがどの程度生じているのかを推定した。
2)PubMed及びWeb of scienceを用いて、2020年10月2日までに公表されている文献を検索対象とし、インターネットを用いた食事調査と従来からの紙ベースの食事調査それぞれから算出された1日のエネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム・野菜・果物の摂取量の妥当性を評価している文献を抽出した。
3)自治体における国民健康・栄養調査の担当職員21名を対象に、国民健康・栄養調査の協力率に影響していると思われる問題点、協力率を改善するためにコントロール可能な対策についてグループワークを行い、抽出された結果内容を分析した。
4)令和3年兵庫県民栄養調査における20歳以上の成人2259名を対象とし、習慣的な栄養素摂取量を推定するための食物摂取頻度調査票への協力率を検討した。また、食物摂取頻度調査票の協力した929名を対象に、他の食事調査への協力意思や食物摂取頻度調査票に対する認識を尋ねた。
5)国民健康・栄養調査のデータ及び国勢調査の情報を用いて、地域・年齢階級・性別に推定協力率(回答人数÷調査対象単位区人口)の経年推移を算出した。
結果と考察
1) 70歳未満の者の協力者数は減少した一方で、70歳以上の者における協力者数は増加していた。協力者数が最も多い職業は、家事従事者、その他の者が多く、その2職種で約3~4割を占めていた。一方で、職業不明の者の人数は経年的に増加していた。また、若い年齢層での協力率が低いことによるバイアスが生じている可能性が示唆された。さらに、糖尿病関連の指標のみで過小評価されている可能性が示された。
2) 抽出された文献の多くは、若年・中年集団を対象とした研究であり、インターネット調査法と従来法のエネルギー及び主要栄養素摂取量の差は±15%程度以内であった。また、両調査法による摂取量の相関係数は0.2以上であった。今後、インターネットを活用した調査を検討することは、国民健康・栄養調査における若年層の協力率向上のための1つの手段となる可能性が示唆される。
3)「調査協力率の向上のためのコントロール可能な対策」として、調査の標準化や実施時間、調査員の技術の確保、対象世帯への調査の依頼方法など12カテゴリが挙げられた。
4)世帯別の協力率は42.9%、個人の協力率は55.3%であり、世帯単位の調査は協力人数を集める手段の1つとして有用であることが示唆された。一方で、食事記録調査及び24時間思い出し法調査への依頼があった場合の協力については、参加の意思を示したものは1割程度であった。一方で食物摂取頻度調査法においても、約6割が非協力の意思であることが示され、調査方法には年齢等の考慮が必要である可能性が示唆された。
5)国民健康・栄養調査への推定協力率はすべての地域で低下しており、低下している要因として、世帯構造が変化し、1世帯当たり人員数は減少していることが考えられた。今後、国調の調査対象人数を検討する際は、1世帯当たり人員数の低下についても考慮する必要があるかもしれない。
結論
本事業では、性・年齢・職業等が協力率に影響する要因であることを明らかにした。また、これらの要因は食事調査方法により異なった形で影響してくる可能性も示唆された。今後は、標本代表性を確保するために、性・年齢・職業等を考慮したうえで、協力が得られやすい調査方法を検討していく必要がある。なお、本事業で得られた成果は、国民健康・栄養調査の結果を用いて施策のための議論を行う際、調査協力率の経年的変化や欠損値の影響を考慮することに役立つと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-11-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-11-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202109032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国民健康・栄養調査(以下、国調。)の協力状況について、次の結果を得た。1)性、年齢、職業は協力率に影響し、その影響には地域差がある。2)健康上の問題で生活に影響のある者、健康意識がよくない者、食事・運動・生活習慣に気をつけていない者の協力率が低い。3)web調査や食物摂取頻度法による食事調査の協力率にも、対象者の性・年齢が影響し得る。4)世帯構造の変化は、国調の協力率が低下している要因の一つと考えられる。これらは、国調の精度向上を通じ、栄養施策の立案に資すると考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究の分担研究の結果から、健康上の問題で日常生活に影響のある者と、健康意識が低い者など、自身の健康に不安を持っている者、喫煙・飲酒習慣があり、睡眠が不十分で、食事や運動などの生活習慣に気をつけていない者で協力率が低いことが示された。また、糖尿病関連の指標で非協力バイアスによる過小評価の可能性が示された。この結果は、生活習慣や糖尿病関連の施策進捗状況確認の際に考慮が必要なバイアスの存在を示しており、今後の調査設計にあたり重要な情報が得られた。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
本研究の分担研究の結果は、令和3年国民健康・栄養調査の調査必携の改訂や厚生労働省が主催する令和3年国民健康・栄養調査担当者会議の資料作成に利用された。また、令和4年においても、国民健康・栄養調査必携改訂並びに国民健康・栄養調査担当者会議、国民健康・栄養調査検討会資料にも活用される予定である。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Murai U, Tajima R, Matsumoto M, et al.
Validation of Dietary Intake Estimated by Web-Based Dietary Assessment Methods and Usability Using Dietary Records or 24-h Dietary Recalls: A Scoping Review
Nutrients  (2023)
10.3390/nu15081816

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
2024-06-07

収支報告書

文献番号
202109032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,100,000円
(2)補助金確定額
5,563,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,537,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,275,748円
人件費・謝金 765,740円
旅費 0円
その他 653,291円
間接経費 1,869,000円
合計 5,563,779円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-11-15
更新日
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