心神喪失者等医療観察法制度における専門的医療の向上に関する研究

文献情報

文献番号
200833061A
報告書区分
総括
研究課題名
心神喪失者等医療観察法制度における専門的医療の向上に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 和男(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 幸之(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
  • 菊池 安希子(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
  • 福井 裕輝(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究所)
  • 安藤 久美子(国立精神・神経センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部)
  • 平林 直次(国立精神・神経センター病院)
  • 八木 深(東尾張病院)
  • 松原 三郎(松原病院)
  • 山口 しげ子(国立精神・神経センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、心神喪失等医療観察法による制度の運用状況を適正にモニタリングするとともに、開発した対象者に対する治療プログラムの効果を科学的に検証し、その技術を関係機関に教育・普及させることによって、専門的医療の向上を図ることを目的とする。
研究方法
指定医療機関からの情報を開発したデータベース・システムを用いて統合的に収集管理・分析し、外部評価の意見を踏まえた上で、医療観察法制度を円滑に運用する上で有用な客観的な情報を関係機関に提供する。
結果と考察
入院処遇では、平成17 年7 月15日から平成20年7月15 日の3年間に調査に協力の得られた6つの指定入院医療機関に入院し、登録された323事例について解析を行った。対象者の7割以上は統合失調症圏の患者で、しかも、傷害事件のケースが多く、殺人も既遂よりも未遂の方が多い。精神遅滞などを併発する処遇困難例は、通院処遇に至らず、不処遇となって、地域社会(特に、民間の精神科病院)に戻っている者も少なくないと思われ、このような患者達を適切にフォローできる研究体制の確立が必要と思われた。通院処遇に至った事例の平均在院日数は441.8日であり、想定している1年半よりも短い入院日数で病床が回転していることが分かった。通院処遇では、同法制度の施行から3年が経過し、指定通院医療機関35施設の協力を得て、調査対象者数は119名であった。収集したデータによって明らかになった静態情報等の集計結果の一部から、Ⅰ.Prolonged stay(長期的入院)型、Ⅱ.Soft landing(軟着陸)型、Ⅲ.Emergency/Temporary (緊急/一時)型に加え、Ⅳ.Relapse (再発)型の入院の傾向があることがわかった。
結論
入院医療機関においては、疾病教育や認知行動療法などのプログラムの充実から治療的試みに対する遵守性は改善されているが、衝動性やストレスに対処するためのプログラムを今後充実させる必要性が示唆された。このような意味で、触法精神障害者の再他害行為防止プログラムの一刻も早い導入が待たれる。また、脳機能画像を用いた種々の研究成果より、重大な他害行為を行う対象者には、前頭葉機能に著しい障害があることが示唆され、今後、この領域の生物学的研究を一層推し進めることで、病態解明や治療薬の開発に貢献できる可能性も示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-