神経・筋変性疾患における細胞移植システムの構築と自己細胞移植治療法の開発

文献情報

文献番号
200833040A
報告書区分
総括
研究課題名
神経・筋変性疾患における細胞移植システムの構築と自己細胞移植治療法の開発
課題番号
H19-こころ・一般-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林 拓也(国立循環器病センター研究所 先進医工学センター放射線医学部)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所 生体組織工学研究部門)
  • 今村 道博(国立精神・神経センター神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では患者本人の細胞を用いる自己細胞移植治療を目指し、これら誘導細胞の安全性を評価する。また生体内での細胞の生着、分化促進、機能発揮、組織の機能修復を図るために、誘導細胞と同時に生体材料、液性因子、血管前駆細胞などの要素を盛り込んだ移植システムの築を検討し、神経・筋変性疾患への実用性の高い自己細胞移植方法の確立を目指す。
研究方法
1.細胞移植治療実現のための生体材料の検討として、骨髄間質細胞への導入技術について検討する。分化遺伝子の導入効率を上げ、なおかつ細胞障害性を低くするため非ウイルス性キャリアをデザインし、遺伝子導入高率とそれに伴う神経細胞への分化を調べる。2.骨髄間質細胞から誘導する神経細胞の分化度とホスト脳における生着・機能回復に関する検討を脳梗塞モデルで行う。3.移植細胞の足場となるマトリックス、血管新生促進の検討を脊髄損傷モデル、脳梗塞モデルで行う。4.パーキンソンモデルへの移植応用をめざし、霊長類動物において再現性の高いパーキンソン病モデルサルを作成しドーパミン補充療法の有効性判定のためのエンドポイントを策定する。5.骨髄間質細胞から誘導する骨格筋細胞の安全性をヒトとイヌに関して検討を行う。
結果と考察
スペルミン化学導入したカチオン化プルランを遺伝子導入キャリアとして用いることによって、細胞毒性を抑えた骨髄間質細胞での有効な分化誘導の実現が可能となった。細胞の生着にとって必須の足場に関しては、血管新生の促進を促すことで知られているFGF を含むgelatin徐放剤に効果のあることが脊髄損傷モデルで分かった。さらに移植細胞の分化度に関する実験から、少なくとも神経細胞においてはpost-mitoticなものよりむしろ前駆細胞の性質を有する分化度の低いものの方が効果的であることが示唆された。
安全性はヒトへの応用において重要な要点であるが、誘導細胞の核型検査やヌードマウスでの腫瘍化試験の結果、際立った危険性は無いと推察される。さらに犬での有効性・安全性の確認はヒトへの応用に向けて非常に大きな意義があると考えられ、今後推進すべき課題として認識している。
結論
実用性の高い骨髄間質細胞から、神経・骨格筋を効率よく誘導する方法を見出した。かかる方法を有効な細胞移植治療系に発展させるために、細胞毒性の少ない誘導方法、血管新生を促進し移植細胞の足場を与えるマトリックスなどが有効であることが示唆された。次年度は得られた知見を元にさらに研究を推進していく。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-