司法精神医療の適正な実施と普及のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200833004A
報告書区分
総括
研究課題名
司法精神医療の適正な実施と普及のあり方に関する研究
課題番号
H18-こころ・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小山 司(北海道大学 大学院医学研究科精神医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院精神医学)
  • 角野 文彦(滋賀県健康福祉部健康推進課)
  • 岩波 明(昭和大学 医学部精神医学教室)
  • 松原 三郎(医療法人松原愛育会松原病院)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構東尾張病院)
  • 山本 輝之(明治学院大学 法学部法学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は司法精神医療の適正な執行と普及にある。医療観察法が施行され、司法精神医療がわが国で本格的に展開され始めた現在、その適正な運用のための方策と全国的な普及のあり方を基礎的及び実践的観点から継続的に研究し、その土台となる基盤整備を、わが国実情に照らして早急かつ精密に行う。
研究方法
今年度は過去2年間の研究により抽出された課題の具体的な解決策を提示・提言することに主眼をおき、各自以下に示す分担研究を行った。(1)インターネット回線による全国規模でのカンファレンスを試行(伊豫ら)(2)アンケート調査により保健所の役割・課題を検討し、実務マニュアルを作成(角野ら)(3)医療観察法の審判例の臨床的特徴と処遇に関して調査・検討(岩波ら)(4)通院処遇者に対する治療プログラムを作成・配布。通院事例の検討と通院医療の問題点に関する検討(松原ら)(5)精神保健判定等養成研修会の改善を提言し修正し効果を検討。判定医の実務上のガイドラインを作成(八木ら)(6)イギリスの精神保健法改正について法的・医学的観点から分析(山本ら)
結果と考察
(1)WEBカンファレンスは司法精神医療の地域間・施設間格差を解消する一助となる。
(2)地域におけるフォロー体制・社会資源は未だ十分ではなく、社会復帰調整官の人的不足、行政機関との連携不足が明らかである。実務上の指針としてのQ&Aマニュアルは保健所の役割を明確化し、地域処遇をスムースに進める上で有用である。
(3)審判例の精神医学的特徴から、精神医療を充実させることによって、対象行為に至るケースを減らすことは十分に可能であると考えられる。
(4)通院医療における治療プログラムの不足、人材不足は明らかであり、プログラムの開発や、普遍的な地域医療システムの導入と人員の増強を要する。
(5)精神保健判定等養成研修会のプログラム修正は、有効であった。また、「精神保健判定医ポケットメモ」は実務上の有用性が期待される。
(6)イギリス2007年精神保健法の地域治療命令は、医療観察法の通院処遇制度の機能拡充に関連してわが国でも参考にされるべきである。
結論
本課題から得られた様々な結論は、司法精神医療に限らず、地域処遇や治療技術をはじめとした一般精神医療の発展という課題に収斂し得る。司法精神医療の側では、指定入院医療機関の病床整備による地域格差と病床不足の解消、通院医療の強化による地域医療システムの導入と人員の増強、各関係者・機関に対する研修システムを強化するシステム作り等が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200833004B
報告書区分
総合
研究課題名
司法精神医療の適正な実施と普及のあり方に関する研究
課題番号
H18-こころ・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小山 司(北海道大学 大学院医学研究科精神医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学 大学院医学研究院精神医学)
  • 角野 文彦(滋賀県健康福祉部健康推進課)
  • 岩波 明(昭和大学 医学部精神医学教室)
  • 松原 三郎(医療法人松原愛育会松原病院)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構東尾張病院)
  • 山本 輝之(明治学院大学 法学部法学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は司法精神医療の適正な執行と普及にある。医療観察法が施行され、司法精神医療がわが国で本格的に展開され始めた現在、その適正な運用のための方策と全国的な普及のあり方を基礎的及び実践的観点から継続的に研究し、その土台となる基盤整備を、わが国実情に照らして早急かつ精密に行う。
研究方法
当研究班では、(1)医療観察法制度の施行状況の把握に関する研究(伊豫)(2)司法精神医療における行政機関の役割に関する研究(角野)(3)司法精神医療に携わる人員の相互交流に関する研究(岩波)(4)強制通院制度と地域医療のあり方に関する研究(松原)(5)精神保健判定医に必要な知識及び技術の習得方法に関する研究(八木)(6)司法精神医療制度の法学的考察(山本)の分担研究を組織し、アンケート調査、文献調査等に加え、研究会やシンポジウムの開催を通じて実態把握と課題の抽出に務めた。その上で、今後の具体的解決策についていくつかの提示・提言を行った。
結果と考察
1)処遇実態の地域間・施設間格差が大きく、これらを是正する一助としてインターネット回線による全国規模のカンファレンスを試行した。2)司法精神医療に携わる人材の育成が大きな課題であり、一貫した教育・研修プログラムにより一般の精神科医がより司法医療に携わりやすいようにしていく配慮が必要である。3)行政機関の関わりの機能は十分ではなく、保健所の実務上の指針と役割明確化のためのQ&Aマニュアルを作成した。4)司法精神医療の一般国民への理解と普及には、報道ガイドライン作りに加え、審判例の臨床的特徴や処遇に関する精神医学的検討も必要。5)通院治療の機能不足から、通院処遇者の治療プログラムを開発・配布し、指定通院医療機関からみた運営実施上の問題点を指摘した。6)精神保健判定等養成研修会の改善を提言し、平成20年度よりプログラムを修正。7)不処遇事例の検討を行い、判定医の実務上のガイドラインを作成配布。8)スイス、ドイツ、イギリスの法制度やリスク評価法について法的・医学的観点から分析し、今後の法改正に向けた基礎資料を作成した。
結論
今後、司法精神医療の質を高め、より有機的な連携が行えるようにすることは、司法精神医療に限らず地域処遇や治療技術をはじめとした一般精神医療の発展に直結する。司法精神医療の側では、指定入院医療機関の病床整備による地域格差と病床不足の解消、通院医療の強化による地域医療システムの導入と人員の増強、各関係者・機関に対する研修システムを強化するシステム作り等が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200833004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療観察法施行直後の制度の運用状況を把握・分析した。多くの関係機関や職種のあり方およびそれぞれの役割、研修方法等について検証し、現状での課題を抽出するとともに、今後の具体的解決策を考察・提示した。医療観察法はわが国独自のシステムであり、その基盤整備について課題整理を行ったことは、わが国の本格的な司法精神医療の確立および発展に寄与する意味で極めて意義深く、その成果は医療内容だけでなく関係諸機関の連携のあり方や司法精神医療に関する今後の政策決定等にも寄与するものと考えられる。
臨床的観点からの成果
医療観察法制度下における初めての実態把握を行い、各機関・職種のあり方や連携の具体的方法、地域医療のあり方についての課題整理を行った。わが国独自のシステムを諸外国のシステムと学際的に比較した点でも貴重である。また、より有効な研修方法の改善や、具体的な通院治療プログラムの開発を行った点でも学術的意義は高い。本法を取り巻く環境整備はわが国の精神医療全体の底上げに繋がると考えられる。
ガイドライン等の開発
処遇実態の地域間・施設間格差を是正するためインターネット回線を用いた全国規模でのカンファレンスを施行した。また、保健所における制度運用や地域処遇に関するマニュアルの作成、不足する通院治療プログラムを補うための「通院治療プログラム集」の作成、精神保健判定医の処遇決定に関わるガイドライン(精神保健判定ポケットメモ)の作成、精神保健判定医等養成研修会のプログラム改善提言(司法精神医療等人材養成研修企画委員会)と修正などを行った。
その他行政的観点からの成果
本研究から今後の課題として①卒後教育の改善・充実により、一般精神科医の関心意識を高めること②各行政機関の役割を明確にして適切な連携を構築すること、③ジャーナリズムの指針等に提言し、一般国民への理解が浸透する働きかけ、④通院医療の問題点を明らかにし、プログラム開発等により質を高めること、⑤研修方法の改善(H21年度実現)によって、精神保健判定医の質向上を図ること、⑥学際的な法学研究により今後の必要な法整備につなげること、等があげられ、これらは後の法改正が必要とされる場合の重要な基礎資料となり得る。
その他のインパクト
今後、司法精神医療の質を高め有機的な連携が行えるよう、関係者に対する研修システムを強化し、啓発啓蒙、より有効な地域処遇を目指したシステムの整備や見直しを行う必要が考えられる。そのためには単に社会資源や制度の充実だけでなく、地域を構成する一般市民や行政機関の意識変革や役割の明確化も必要である。本研究の様々な成果はこうした医療観察法の適切な運用と、それを取り巻く環境整備に繋がり、間接的にわが国の精神医療全体の底上げに大いに資すると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
23件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
5件
その他成果(普及・啓発活動)
12件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-